元女神様と現世でreSweetライフ!!
肉まん
第1話新しい生活と日々の始まり
目を覚ますとまだ朝の五時だった、まだ暗いが目が覚めてしまってはしょうがない。何時もより熱めのコーヒーを飲む、あっつ! そうだ人間に一時的に戻されたんだった。あれ記憶が残ってる? まっいいかあの後どうなったんだっけ? そこだけは思い出せないスマホで地域ニュースを見ると今日は二月十四日か日曜日だよ……五泉市のニュースを見ると、どうやら市長は無事逮捕されたらしい。死んでなかったんだあのクソ市長、続きを読むと息子さんが自ら知っている事を自白し議員を辞めたらしい。茉希ちゃんは無事だろうか……あれ!? 逮捕の決め手となった証拠品を見つけた人が鷲尾さん! すげぇな歴史の修正力こりゃ大女神様が暫く山に引き籠もる程疲れる訳だ。塚田さんはいつも通り健康福祉課だろうか……スマホのカレンダーを見るとスケジュールが入っている明日から仕事!? 何処だよ! 俺知らないぞ? 良くスケジュールを確認するとN市にあるコールセンタースタッフだった、オイオイ経験はあるけどさ……酷くない? もういいや寝よう。
ドアを叩く音がうるさい、どうせ回覧板だろう布団から出たくないので無視する。が煩い! 分かったよ出ますよ。
「どちら様ですか〜?」
「私よヤエ、ヒエもいる開けてくれる? 寒いのよ」
「何だお前らかよ勝手に入れよ」
「出来ないからこうしてやって来たのよ!」
「はぁ? 今開けるよ」
ドアを開けると
「健!」
ヤエが抱きついてきたヒエにアパートの中に押し込まれる。
「お前らどうして……あっまさか……」
「そうよ大女神様に望みを叶えてもらえたの人間として健の側にいるって」
「まっ私はヤエを愛してるし〜ついでにアンタの人生の行く末を見てやろうかってね〜」
「ちょっとまって今五泉市の神様は?」
「さぁ?」
「おイィ! 適当過ぎんだろう!?」
「あっそろそろ届く頃ね!」
「何だよ、あっ! それだけは駄目! 他に行ってここは駄目!」
「残念ね……健と私は離れられないのよ」
「何で!?」
「さっきヤエが行ったでしょうがアンタの側にいるって、強制力は絶対よ折角大女神様が叶えたものですもの」
そうこうしていると荷物が届く。
「奥の部屋空いてるわよね、これなら私達三人でいられるね」
白ネコ宅急便が家財道具やら何やら運び込んでいくと、奥の六畳間はあっという間に占拠された。
「お前ら人間なのか? 飯食って風呂入って寒がったり暑がったりすんの?」
「しょうがないじゃない人間ですもの」
目眩がしてきた、もしかしていきなり仕事が決まってるのって。
「一応聞くがお金って知ってるか?」
「大丈夫よ人間界の事は調べてあるから問題無いわよ、私も働くから」
「ヤエが!? ヒエは?」
「あ〜留守番してるわ〜」
「ふっざけんなぁ!」
「嘘ようそ、ちゃんと働くから」
「戸籍どうすんだ!? 住民票とか!」
「安心して強制力と京子のタッグは絶対よ」
「私達はヤハタ姓を名乗るわ」
「つまり八幡ヒエと八幡ヤエって事かよ」
「宜しくね、じゃあ私は耳を塞ぐわ」
「何だそれ?」
ヤエが袖を掴むと真っ直ぐ俺を見て
「健聞いて、私ね貴方の事を愛してるの……きっと……ずっと前から……この気持ちが分からなくて……」
「俺はさ……」
「知ってる! だから何も言わなくていい私とヒエをここに置いて……傍に居たいの……」
「他に行く所は?」
「あるわけ無いでしょう……健の側がいい……」
「分かったよ、ヒエも! 三人で会議だ良いな!」
またドアをノックされる、何なんだよ今日は!
「お前ら関係か?」
二人共首を振る
「じゃあ俺が出るよ」
「どちら様ですか〜」
玄関に向かうと
「隣の部屋に引っ越してきましたのでご挨拶に参りました」
「今開けますね」
ドアを開けた瞬間
「しぃしょ〜う会いたかったよう!」
腕にしがみついて離してくれない……渡辺茉希ちゃんまで……
「もう大人だよ良いよね?」
「良いわけないでしょう! ふざけてるんじゃあないわよ!」
ヤエ様がご立腹だ
「おいヤエ……いきなり強制力はどうした?」
「邪魔は入るんじゃない〜」
ヒエが気だるそうに行ってきた、あれ? お前そんなキャラだったか?
「誰が邪魔よ! ねぇ師匠じゃなくて健さんて呼んでもいいかなぁ?」
「好きなように呼べばいいよ、もう修行とかした訳じゃないし……」
床にダンッ! と足を叩きつけるヤエ様怖いよ……
「小娘! 今私と健は大事な話をしているのよ邪魔しないでとっとと消えなさい!」
「やだよ〜折角師匠の……あっ! 健さんの為にこの姿になったんだよ!」
重い……この二人の想いが重い、するとヒエが
「はいはい! そこまでよ二人はいがみ合ってなさい。健はアタシが貰うわよ?」
「これ以上ややこしくすんな! もう……茉希ちゃんもヤエも良いな。怒るよいい加減にしないと……」
「フンッ! 健は茉希の味方するの?」
「どっちの味方でもないよ……だってさ俺の気持ち置いてけぼりだもん」
「「あっ!!」」
「そういう訳だから皆部屋に入ろうか! いい加減寒いんだよ!」
全員を六畳間の部屋へと放り込むと
「茉希ちゃんは引っ越してきたんだね?」
「うん! 一人暮らしだよ!」
「ヤエとヒエは行く宛がないんだな?」
「そうよ」
「じゃあ、出てけ! 女同士三人で暮らしたほうが良いだろう?」
「ぜっっつたいにいやよ!」
「じゃあ喧嘩すんな! 良いな?」
「わかったわよ……バカ」
「じゃあ今日は帰るよ師匠!」
「いやせっかくだ皆で今日は鍋でもしようか?」
三人の目が輝くと
「それにヤエとヒエの日用品も必要だろ? お前らはもう人間何だよな?」
「健が死ぬまでね……それまでは私達は人間よ」
「じゃあ買い出しに行くか! ヤエ達はお金あるの?」
ヒエがとんでもない事を言い出す
「大丈夫よ賽銭箱から持ち出したから!」
「今すぐ返してこい!」
「だってこれ本来私達への捧げ物よ? 細かい事は気にしないの!」
本当にコイツらは……気を取り直して買い物へと向かう、幸い歩いてすぐにショッピングセンターがある、雑貨屋もあるのでヒエの持ち出したお金で一通り買っていく。その間も二人は小物に夢中だった。あれが可愛いとかこれも良いとか。本当に人間になったんだな……
「あのさ師匠言いにくいんだけど……二人の事で、普通の女何だよね?」
「だね」
「じゃあアノ日もあるんじゃ……」
「ごめん茉希ちゃん! その辺説明して来てあげて! その間に食材買っておくから」
脱兎のごとくその場を離れた、流石にそこまでは何ともしようがない。適当に食材を集める鍋だから適当にブチ込めばそれなりになるだろう……四人前ってどれ位だ? 随分と一人暮らしだったから分量がわからない。悩んでいると紙袋を持った三人と合流した。
「人間って不便なのね……」
「もう人間になったんだから諦めてよ二人共」
茉希ちゃんが諭す、買い物を済ませて四人でアパートまで帰る道中ヤエが荷物を持とうかと聞いてきたが断った。結構重いからなぁ四人分だし、自分の荷物だけ持つ様に伝えた。玄関を茉希ちゃんに開けてもらうと
「結構買ったな……鍋は俺が作るから皆休んでていいよ」
「手伝うわよ」
「ヤエは料理出来るのか? ついでにヒエも?」
「ヤエは練習してたからねぇ〜」
「ちょっとヒエ!」
「って事はヒエお前まさか……」
「私は天才だから、なんでもござれよ」
「じゃあヤエ手伝ってくれるか?」
「師匠、アタシは?」
「茉希ちゃんはお客様だからゆっくりしてて良いよ」
「ヒエは風呂掃除して沸かしとけ」
「扱い酷くない!?」
「うちに住むってんなら手伝え!」
「わかったわよ……ピッカピカにしてあげるわよ」
ヤエは不器用ながら上手く調理の手伝いをしてくれた。独りじゃないってのも良いのかな……でも……
「健どうかした?」
「考え事をちょっとな……よっし出来た!」
皆を集めて鍋を囲んで食べ始めるとヒエが春菊をハネている、好き嫌いあるのかよ元神様……何故か酒がある……酒ッ!?
「誰だ酒買ったの?」
「ヒエが御神酒以外飲んでみたいって言うから」
「茉希ちゃん止めてよ……ヤエ、お前ら年齢は何歳になってるんだ」
「一応二十歳って事にしたわ」
「だから問題ないでしょうがぁ〜」
コイツいきなり酔ってしなだれかかって絡んできやがった。
「私達へは何をしても合法なんらぁよ」
「ヤエ何とかしてくれ! この酔っぱらい」
「無理よヒエは昔からお酒が好きでね、祭事の度に飲んでたから……ほっとけば?」
ヤエの声が冷たい、お前ら愛し合っていたんじゃないのか? 結局ヒエは騒ぐだけ騒いで寝てしまった。コイツはもう禁酒だな……
「師匠アタシも帰るよ、明日バイトでさ早いんだ! ヤエ……抜け駆けしたらコロスからね」
そう言い残して部屋へと戻って行った、片付けるか……ちなみに鍋は空っぽになっていた、コイツラの食欲を侮っていた……片付けを終えるとヤエがヒエを布団に寝かせていた。後片付けをしながら。
「ヤエ風呂入っちゃいなよ」
「へっ! うっうんそうよね!」
ヤエが風呂へと向かう、何慌ててんだ? さてテレビでも見ながら明日からの仕事を確認すると朝九時までに駅ビルに来るようにか……ちゃんとした仕事だろうな……コールセンタースタッフか随分と久しぶりの職だなやれるかなぁ。
「健、お風呂いいわよ」
「ありがとう入って来るよ、先に寝てても良いぞ。もうこのアパートがヤエ達の家だと思って生活しなよ」
「そのつもりよ」
そう言うと風呂へと向かう。湯船に浸かりながら過去を振り返る苦い思い出ばかりだ……そんな俺にやっていけるのか……ヤエ達の期待に答えられるのか。答えが出ないまま風呂を上がると。ヤエが俺の布団の上で正座していた。
「何してんの?」
「だっ男女が愛を告げたら、どっ同衾するんでしょ!」
「馬鹿なの? 俺は愛なんか告げてないし、どこでそんな知識をって言うか無理すんな」
「無理なんかしてない! 私じゃ駄目なの?」
「ヤエいいか? 一度しか言わないぞ……俺も正直戸惑っているんだよ」
「今はまだ分からないんだ、ヤエに対する気持ちが愛なのかそれとも……」
ヤエを抱き寄せる。
「この温もりが欲しいだけなのか……」
ヤエを離して目を見て告げる
「でも一緒にいたい……ヤエと……今の答えじゃ駄目か?」
「前みたいに心が読めないのよ……狡いわよ、でもその気にさせて見せる」
「ヤエ……俺の過去は知ってるんだよな? それでも側にいるのか?」
「関係ない、私が知っているのは今の八神健よ。過去を精算するって言うなら付き合うわよ」
「ありがとう、俺のそばにいてくれヤエ」
「そのつもりよ、でもちゃんとした愛の告白も待ってるわよ」
「明日は俺仕事だから、帰ってきたら今後のこと話そうな!」
「わかった、おやすみなさい健」
ヤエは自分の布団に入って行った。ちっくしょう! ドキドキが止まらないこんな感情とっくに死んだと思っていたのに! 何なのあの好感度? いつも引っ叩くか蹴飛ばされていたのに……ヤエもヒエもどうしたんだ一体、その日はなかなか眠れなかった。
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