第9話 魔法の力は勇気の力

 何かが2人の間を通り抜け、校舎の柱に突き刺さる。

 2人は柱に突き刺さった物を見るとそれは。

「……あれって」

「う……鱗?」

 すると、何者かが2人に声をかける。

「貴様ら……まだ私の配下では無いな?」

 2人は振り向くと、そこには、全身が鱗で覆われた怪人が現れていた。


「お前は誰だ?」

 蓮の言葉に鱗の怪人は答える。

「私の名はウィアクシアス……この学園を支配する者だ」

「………びわ食います?」

 蓮は混乱した声で言った。

「そうそう、ちょうど今の時期が旬でな……優しい甘さがたまらない………って違うわァ!!私の名前はウィアクシアスだ!」

 意外にもノリツッコミができるらしい、ほぼ100点とも言えるツッコミが現れた。

 誰か彼を吉本へ連れて行けと蓮は思った。

「貴様、私をバカにする気か!」

「知らねぇし……そもそも名前が言いづらい」

「こやつめ……支配してくれるわ!」

「うるせえ、竜装」

 蓮は竜装し、剣の切っ先をウィアクシアスに向ける。

「この鱗野郎、さっさと倒してやる」

「そうか、なら。こいつらを倒せるかな?」

 ウィアクシアスがそう言い、指を鳴らすと、ぞろぞろと兵隊の様に女子生徒が現れた。

 彼女たちの額には鱗が付いており、目から光は失われている。

「人質にしちゃ多過ぎるな、お前のガールフレンドか?」

「ガールフレンドなどと言うものでは無い……我が部下だ」

「そういう奴は好かれないと思うぞ?」

 蓮はウィアクシアスに向かって剣を振りかぶる。

 しかし、洗脳されている女子生徒が邪魔で切りかかれない。

 そのまま蓮は、女子生徒に囲まれ、両腕を拘束されてしまった。

「これで貴様も、我が部下だ……」

 その時、何者かがウィアクシアスを蹴り飛ばす。

 ウィアクシアスを蹴り飛ばしたそいつは。

「竜……騎士?!」

 その鎧は純白で、華麗だが獰猛さもある様なイメージを持たせた。

「き、貴様!!なぜここにいる!まだ間田はざまだ様から出動するなと言われていたのでは!」

 ウィアクシアスは明らかに動揺していた。

「うるせえデータ野郎。外出くらい好きにさせろ。何日もあんな所にいると牢屋にいる気分になんだよ」

「貴様……」

 蓮は白い竜騎士に問いかけた。

「お前は誰だ!!なんで怪人とつるんでんだよ!」

「俺は自分の名前をあんまり気に入ってなくてな。竜世界なら、俺はこう呼ばれている」

 白い騎士は蓮を囲む女子生徒達から1人を片手で引っ張り出し、女子生徒の頸動脈を手に持った白い刃のダガーナイフで切り裂いた。

 女子生徒の首から血が噴水の様に飛び出し、刃が血に染まると、白い竜騎士は女子生徒をゴミのようにほおり投げた。

 そして校舎の壁にその血である名前を書いた。

 そこには『KILLER』と書かれていた。

「竜騎士殺しのキラーだ」

「キラー……だと」

 首から血を吹き出した女子生徒の息は、無かった。

 キラーは蓮を見ると、ある事に気づく。

「ほーん、お前がもう1人の王なのか」

「は?」

「おいおい、そんな姿してる癖に何とぼけてんだよ」

 蓮はケラトの言っていた言葉を思い返す。

「んな事言ってたなあいつ……完全に忘れてた…」

 キラーは蓮を洗脳された女子生徒達から引き離し、壁に投げつけた。

 蓮は鎧で衝撃を軽減したものの、背中に強い痛みが残る。

「お前を捕獲すりゃ、あいつから褒められるだろうが……」

 キラーはダガーナイフを構え、蓮に切っ先を向ける。

「勢いで殺ったって言っても。バレねぇかもな……」

 キラーは微笑し、蓮にダガーナイフを振るう。

 蓮はダガーナイフの刃を剣で防ぐ。

「お前っ……危ねぇよ……色んな意味で」

「どうも、よく言われる」

 キラーは更に力を強め、そのまま蓮は膝を付く。

「ちょっ、悠里ちゃん!!逃げて!」

 洗脳された女子生徒達が悠里に迫っている。

 しかし悠里はその場で腰を抜かしていた。

「み、みんな……」

「早く!逃げて!」

 すると、洗脳された女子生徒達の目の前に何かが飛んで来た。

 すると、竜装した二野目が洗脳された女子生徒達の前に立ち塞がる。

「なんかすげぇ騒ぎしてるから来てみたらこれかよ蓮!!」

「早く、悠里ちゃんを避難させて!」

 二野目は親指をグッと立て、悠里を見ると、一瞬固まった。

「………」

「どうした二野目」

「……ああいや何でもない!早く!ゆーちゃん逃げて!」

 悠里は恐怖のあまり立てずに居た。

 二野目は小包を取り出し、赤い玉を取り出す。

「あんまり使いたく無かったけどな……しゃーねぇ!竜忍法!眠り玉」

 二野目は赤い玉を洗脳された女子生徒達に投げつける。

 赤い玉は破裂し、赤い粉が飛び散る。

 洗脳された女子生徒達はバタバタと倒れ、眠りについた。

「貴様……よくも……」

 ウィアクシアスが二野目に鱗を発射する。

 二野目はそれを鎖鎌で弾き、ウィアクシアスに鎖の先の分銅をぶつける。

「ゆーちゃん早く!」

 悠里は蓮の肩を取り、ゆっくりと立ち上がった。

「あの………にのくん」

「どうしたゆーちゃん?!早く逃げろって!」

「………いくよ」

「え?」




 突然だけど私、佐々木悠里は、竜人と人間のハーフだ。

 お母さんが竜人で、お父さんが人間。

 母方の家系の竜装鎧パウパウは、力が無くその分竜力を極めた種族で、人間界で言う。魔法を使う。

 私もその力を継ぎ、魔法使いになると決めていた。

 と言うか、私はお母さんに憧れてた。

 そして、何年か修行を積んで私は竜装鎧パウパウの後継者になった。

 にのくんとは、幼なじみで、よく竜装して遊んでいた。

 今思えばかなり物騒だよね……(笑)

 そんな時に起きた。

 私は、魔法を失敗し、二野目を傷つけてしまった。

 にのくんはその時の事を忘れてるみたいだけど、今まで魔法を失敗したこと無かった私からすれば、それは大きすぎる心の傷になった。

 もう竜装したくない、とまで思ってしまった。

 だから、あの時は驚いたよ。

 にのくんがいきなり知らない年上の男の人連れてくるから。

 でも、なんか分かった気がする。

 あの人は、私の為に勇気を振り絞って戦ってる。

 だから、私も、ここで留まらないで。



「勇気を出して前へ進まないと」って。





 悠里は、腰に蜜柑色の水晶が埋め込まれたバックルを出現させる。

 そして、ゆっくりと息を吸い。

「竜装」

 そう言うと、悠里は光に包まれる。

 そして、光が消えると、そこには膝ほどまであるブーツ、ミニスカートで腰にコルセットを着け、胸にアーマーを着け、頭に被った兜は、口元を出し、バイザーの様な所から薄らと目が見えていた。

 そうそれは、騎士と魔法少女が合わさった姿であった。

 右手に持った杖をウィアクシアスに向けて悠里はこう唱える。

「パウパウル・パール・パルル」

 するとウィアクシアスは吹き飛ばされ、壁に激突した。

「貴様……何だこの力は……」

「魔法の…力……勇気の力!」

 ウィアクシアスは両手の甲から鱗を伸ばし、爪のように振り回す。

「パウパウル・パルジュンコ・パワルルン」

 悠里は振り回される爪を避け、ウィアクシアスの腹に触ると、ウィアクシアスは動きを止めた。

(な、なぜだ!?……体が)

 そして、悠里は深呼吸し、こう唱える。

「パウパウル・マルパー・パルル」

 悠里は両手で丸を作る。

 すると、両手で作った丸から蜜柑色のエネルギー弾が作られる。

(ま、まさか………貴様ぁ……)

「パウパウ砲、発射!!」

 極太のビームが、ウィアクシアスの体を包み込む。

 ウィアクシアスは塵となった。

 極太のビームは校舎に大きめの穴を開けたが、別に崩れることは無かった。

「ゆーちゃんそんなの打てたっけ?!」

「なんか……降ってきた」

 その頃蓮とキラーは、駐車場で激戦を繰り広げていた。

 キラーはダガーナイフで蓮を攻め続け、蓮はキラーの猛攻を防ぐので精一杯だった。

「どうして、お前は、竜騎士を、殺すんだ?!」

「うるせえ、お前に関係あるか?」

 キラーは蓮の腹を蹴り飛ばし、車に衝突させる。

 車のボンネットは凹み、蓮も背中に大きなダメージを喰らう。

「お前は竜世界じゃ、偉大な人だぜ?なんてったってかつて青の王と戦った赤の王の子孫なんだからな」

「そんな見ず知らずの親戚の話されても知らねぇんだよ!」

 蓮が剣を大きく振り下ろすと、キラーはそれを右腕で止め、蓮の腹にダガーナイフを突き刺す。

「ぐっ……」

「流石、王の鎧。硬いな」

 蓮は腹に強い痛みを感じた。

 腹に刺さってい無いとはいえ、その衝撃は彼の腹に入る。

 蓮はそのまま倒れた。

「じゃあな、久しぶりに楽しめそうだ……」

 キラーはそのまま去った。


 その夜。

 その後、女子生徒達の洗脳は解け、殺された1人の女子生徒を発見されたことにより、警察が出動。かなりの大騒動になった。

 皆洗脳された時の記憶は無く、悠里や二野目も事情聴取されたが、鎧を着た男が頸動脈を切ったと証言したものの、顔がわからないため、捜査は未だに難航している。

 蓮はあの後鎧が解けた姿で2人に見つけられ、悠里に肩を担がれている。

 もう既に空は暗くなっていた。

 その道中二野目は言った。

「結局出来たじゃんゆーちゃん。なんで出来ないって言ってたん?」

 悠里は二野目から顔を逸らして言った。

「それは……その、あっ思い出したんだよ!!あれを……」

「あれ?、まぁいいか」

 すると、蓮が目を覚ました。

「……あいつは?」

「あの鱗か?もう倒したぜ。ゆーちゃんが」

「え?悠里ちゃんが?!」

「う、うん」

「ってか、なんで担がれてんの俺?」

「お前が倒れてたのが悪いんだろうが」

 二野目が嫌味混じりに言う。

 まだ腹は痛いが、担がれる程では無く、蓮は腕を悠里から離した。

「ありがとな、悠里ちゃん」

「い、いえ……」

 3人は悠里の部屋に入ると、そこには、漫画が2冊置いてあった。しかも紙面を開いたまま、伏せる形で。

 そして、あの開けては行けないクローゼットが開いていた。

「あっ」

「おい」

 タイトルは「前立腺部」と「抱きたい男に恐喝されています」

 だった。

「にのくん……開けたの?」

「い、いやその」

 悠里はすぐに机からカッターナイフを取り出し、震えながら二野目に向ける。

「口封じするしか……無いよね……」

「うわっちょっ待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!!!落ち着け!!!!!!!!!つい出来心なんだ!!まさかゆーちゃんが男同士が……な事するような漫画が好きとは思わなくて!!!!!!!!!」

「そ、そうだ悠里ちゃん!!!!!!!!!今やったら取り返しがつかなくなるぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 悠里が落ち着くまで5分程かかった。



 その頃ケラトは、自宅で動画サイトに投稿されている蓮沼の音楽を聴いていた。

 どれも数千、または数百程度の再生だが、ケラトは気に入っていた。

 「ケラトくん?なにみてんの?」

 小夜が横から見る。

 「蓮沼さんの歌、僕結構好きなんですよ」

 「へ〜さっきの人じゃん」

 「先程お会いしまして」

 小夜は洗濯物を畳みながら呟く。

 「ったくくそ兄はどこをほっつき歩いてんのよ……」

 To Be Continued

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