第385話 マイ・ファースト・パーティー(0) at 1995/12/23
「あのぅ……また大勢で押しかけてしまってすみません……ご迷惑じゃなかったですか?」
「いやだなぁ! 琴ちゃんのはじめての友だちなんだ! むしろ大歓迎だって!」
僕らが昼すぎにやってくるなり、ウェーブのかかった肩までの髪をポニーテールにまとめた姿のツッキーパパこと水無月
どことなく垢ぬけた小洒落た印象のアースカラーのリネン素材でコーディネートされた上下に、カフェの店員を思わせるショートエプロンを身に着けて、すでに準備万端の様子だ。隣のツッキーはというと、少し照れたようなうつむきがちな姿勢で頬を赤らめ、大きなフリルのついた白いエプロン姿である。まるで新人メイドさんみたいで、とても初々しいかわいさである。
「ご、ごめんなさい……! パ、パパも参加する、って聞かないんです……もう……っ!」
「でもさ、琴ちゃん? パパがいれば、パーティー料理だって作れちゃうかもよ? どう?」
なんという圧倒的スパダリ感。
ウインクもさまになっていて、もし僕が
「うっわ! マジですか!? ツッキーパパさん、有能すぎるんですけど!!」
「ま、まあ僕だって、料理くらい作れるし……ゴニョゴニョ……」
「あぁん!? なーに対抗心燃やしちゃってんのよ、馬鹿」
「渋田サブリーダーにサトチンさん! け、喧嘩しないでくださ……!」
慌てて止めに入るツッキーだったが。
「わっ! 私もお手伝いしますっ! いえいえっ! ぜ・ひ・! やらせてくださいっ!」
「ス、スミちゃん……? 今日くらいはお任せしてラクしてもいいんじゃあ……?」
「わわわ! こ、古ノ森リーダーとス、スミちゃんさんまで……ど、ど、どうしよう……!」
その時だ。
――コンコン。
「あー……えっとぉ。お、お邪魔しまーす……」
「………………ええっ!? ロ、ロコか!? ロコなのか!?」
「み……見たらわかるじゃん。それとも、ひ、ひさしぶりすぎて忘れたの、ケ、ケンタ?」
そこにいたのは。
たしかに、正真正銘、上ノ原広子――ロコだった。
照れ臭そうに、居心地悪そうに、それでいて、ちょっぴりうれしそうな顔つきをして、たちまち集められたみんなの視線から逃げるように天井を見上げたかと思うと、にやり、と笑う。
「あ――あたし、まだ『電算論理研究部』の部員だもんね。それに、ツッキーがはじめて友だちと過ごす『クリスマス・パーティー』だなんて聞いたら……来ないわけに行かないじゃんか」
「ロ、ロコちゃん! ロコちゃぁあああああん!!」
「うわっ!? ツ、ツッキー? く、苦しいってば……まったくもう……」
玄関口でうれしさのあまり飛びついてきた水無月さんをしっかり受け止めながら、ロコはお決まりの困ったような笑顔で、ふと、僕の隣の純美子を見た。純美子が、うん、とうなずく。
それから――二人の視線が僕を見つめ、もう一度、うん、とうなずいた。
僕は言う。
「よーし! じゃあ、ひさびさのフルメンバー勢そろいってことで、『電算研クリスマス・パーティー☆1995』の準備を手分けしてやっていくぞ。買い出しは……任せていいのかな?」
「うん!」
純美子はロコとツッキーとそれぞれ手をつなぎ、後ろにいる咲都子に合図をしてこたえる。
「あたしたち、女子チーム
「ぼ、僕もいきたかったなぁ……せり姉にもらったかわいいエプロン持ってきたんだけど……」
「あーねー? かえでちゃんはむさ苦しい男チームの方でよろしくー。襲われないようにねー」
「大丈夫、僕が守る! ね、か、かえでちゃん……うひ……。まったく、一体誰がそんなひどいことを……」
「どうみてもお前じゃろがい!」
放っておくと熟年喧嘩ップルがヒートアップするので、早めに元凶である渋田を取り押さえる僕ら男子たち。なんだかこんな光景、永らくなかった気がして、ついつい顔が自然とにやけてしまった。
「じゃあ、僕らは笙パパとチカラを合わせて飾り付けと模様替えだな。では、よろしくお願いします!」
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