ラブ×リープ×ループ!
虚仮橋陣屋(こけばしじんや)
第1話 ――堕ちる at 2021/03/30 23:59:59 Countdown
気づいた頃にはもう手遅れ。
つまり、俺の人生と同じってこと。
「だあっ――――!?」
たかだか二〇段ぽっちの石段でも、バランスを崩してその一番上から下まで転げ落ちればただでは済まない。どころか、ヘタをしたら死ぬまである。
「きゃっ!?」
しかも、俺ひとりじゃない。つーか、耳元で叫ぶなって、キンキンする。
こいつを抱きかかえたままこんな態勢で落ちたら、ダメージは倍。質量が倍になれば、加速度も倍になる。要するにニュートンの運動方程式のアレだ。別に俺とこいつはただの幼馴染ってだけの間柄。かばうとか守るとか、そんなつもりはさらさらなかったんだけど。とっさに本能に従って行動した結果、なぜかこうなった。悲しいけれど、それが事実であり現実。
「お、落ちる! 落ちちゃうっ!」
そんなこと、わざわざ言わなくてもわかるだろ。ってお前、やっぱりかなり飲んでないか? 顔にかかる甘い息に、露骨なまでのアルコール臭が混じっていた。演技よ、とか言ってたけど、案外ホントに酒癖悪くって――。
ごんっ!
「ぐ………………っ!!」
激しい衝撃とともに、俺の背中に激痛が駆け抜けた。と同時に、抱きかかえたままのこいつの全体重が反対側からサンドウィッチ状態で襲いかかってきた。肺の中の空気が一気に押し出され、ロクに手をつけなかったパーティー料理まで胃のなかから逆流して吐きそうになる。
「だ、大丈夫!? ケンタ――」
大丈夫なわけないだろ。スタントマンってすげえな、って身をもって体験してるところだ。
しっかし、いつまでたっても昔からの呼び方で変わらないんだな。もうお互い四〇歳にもなるおじさんとおばさんだってのに。まあ、いまさら変えろったって無理か。『
ごんっ!!
二度目の衝撃。ああ、くそっ。
そもそもだ。こいつが妙なことを言い出さなければこうはならなかったんだ。俺とこいつと、あの
これから幸せな時間がずっと続くんだと思ってた。
これでやっと、俺の人生ははじまるんだ、そう思っていたのに。
ごんっ!!!
「が……はっ………………!!」
最後の衝撃で、俺の腕の中からあいつの身体がふっとんで転げていった。もう力が入らず、身体を起すことすらできない。全身に激しい痛みが広がっていく。徐々に意識が薄れていく。
ああ、結局俺、童貞のままで死ぬんだな。
しかも、神社の階段から転落死だってさ。くっそ笑える。
あの頃からやりなおせれば絶対にうまくやれるのに。
もう一度、あの頃から。
あの、中学時代からやりなおすことさえできたなら。
きっと――。
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