第164話164「ミモザの過去」

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【第7回カクヨムWeb小説コンテスト】

最終選考突破ならずでした。次、がんばります。


【新作はじめました】

「異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜」

https://kakuyomu.jp/works/16816927861126765264



********************



「ハンニバル様。反応はこの辺からのようです」

「ほ? あれじゃな⋯⋯」


 カイトのオリジナル魔法『大規模精査グラン・サーチ』により、ミモザ・ジャガーの割り出しにすぐに成功した学園長率いる『魔法使役者検挙班』はすぐにその場へと向かう。すると、ミモザ・ジャガーを発見する。


「えっ!? あ、あれって⋯⋯⋯⋯ミモザ・ジャガー先生じゃ⋯⋯」

「ほ、本当だ! ミモザちゃんじゃないかっ!?」

「な、何で⋯⋯? ミモザちゃんが⋯⋯ここに⋯⋯?」


 学園長や騎士団の面々以外には、今回の主犯である一回生Bクラス担任である『ミモザ・ジャガー』の名は伏せていた。


「これまで、このクラリオン王国で長い間、カイト・シュタイナーの両親であり、あの『五大国大戦』で特に活躍した英雄ベクター・シュタイナーーとその妻ジェーン・シュタイナーの記憶を大規模な洗脳魔法により蓋をし『無かったもの』にしていた、その洗脳魔法の使役者が⋯⋯⋯⋯ミモザ・ジャガーじゃ」

「「「「「えええええええええええっ!!!!!!!!!」」」」」

「ま、まさか、嘘だろ?」

「改めて、聞かされても正直⋯⋯信じられません」

「そ、そんな、あの⋯⋯あの⋯⋯いつも辿々しくて生徒たちから慕われていた⋯⋯あのミモザ先生が⋯⋯その洗脳魔法を使役していた人だったなんて⋯⋯信じられない」


 カートが、ディーノが、リリアナが、そして、その他のみんなも『ミモザ・ジャガー』が『洗脳魔法使役者』ということに信じられないでいた。しかし、


「⋯⋯個人的に『ミモザ・ジャガー』が犯人と知って、俺はに落ちたがな」

「ガス様っ!?」

「ガス・ジャガーっ!?」


 ガスはみんなとは意見が異なり、今回の主犯が『ミモザ・ジャガー』と聞いて納得している様子を見せる。


「どういう⋯⋯ことだ、ガス?」


 リュウメイがガスに問いかける。


「俺はミモザ・ジャガーとは⋯⋯⋯⋯まあ、苗字からもわかる通り『遠い親戚』にあたる。まあ、あくまで『遠い親戚』だが彼女の『黒い噂』は聞いたことがあったんだ」

「黒い噂?」

「まず、彼女が物心ついた頃の話ではあるが、その頃から彼女はやたらと『弱いモノいじめ』が酷かったらしい。しかも、その『弱いモノ』というモノ・・とは人間ではなく、子犬や子猫、子ウサギといった動物の中でもさらに脆弱な存在だった」

「⋯⋯え? 子犬? 子猫? え?⋯⋯え?⋯⋯」


 すると、サラ・ウィンバードがビクッと反応する。獣人族の彼女なら今の話はとてもまともな話に聞こえなかっただろう。ガスの話にまるで現実逃避をするかのように放心していた。


「しかし、そんなミモザの性格に異様さ・不気味さを感じた両親は恐怖を感じ、彼女を家から追放することを計画した。しかも、それを俺たち『ジャガー家本家』には隠してな⋯⋯」

「ど、どうして隠したんだ?」

「俺たち『本家』にそんな子供がいたと知ったら、いろいろと外聞が悪かったからだよ」

「ミモザ先生の話も酷いが、その親も同じくらい酷いな!?」

「⋯⋯おい、ウキョウ」

「あ!⋯⋯⋯⋯す、すまん、ガス。お前の親戚にそんなこと言って⋯⋯」

「フン、気にするな。どうせ、俺の家はは本家も分家も性格が似たり寄ったりの奴ばっかりだ。嫌気が差すほどにな」

「お前は⋯⋯ガスは自分の家が嫌なのか?」

「嫌だね。でも、大切に育てられた恩はもちろんある。ま、俺は奇しくも魔法の才能があったから嫌な思いをすることはほとんどなかったがな。⋯⋯ただまあ成長していっていろいろなことを知った今は⋯⋯⋯⋯家を離れたいと思っている」

「ガス⋯⋯」

「おっと、話が逸れちまったな。とにかく、ミモザは両親に『不気味な子供』という理由で六歳の頃、家から追放することが決定した。そして、両親はすぐに殺し屋を雇ってミモザを街から遠く離れた魔獣が出没する森で殺すよう、そいつらに依頼する⋯⋯」

「⋯⋯酷いな」

「しかし⋯⋯⋯⋯ミモザが殺されることはなかった」

「「「「「⋯⋯えっ?」」」」」

「森で殺されそうになったとき、そこに突然現れた『魔獣』が殺し屋を襲ったようで、その隙に逃げ出したとミモザは証言してたし、実際、殺し屋たちが魔獣に食い殺された形跡もあったからミモザの証言でこの事件は幕を閉じたが⋯⋯⋯⋯俺は真相は違うと思っている」

「!⋯⋯ま、まさか」

「おそらく、殺し屋たちをやったのはミモザ・ジャガーだと俺は思う」

「「「「「ええっ?! ミ、ミモザ先生が⋯⋯!!」」」」」

「⋯⋯根拠はない。だが、一度だけ、ミモザが十歳で、俺が五歳の頃に会ったことがある。ちょうど本家であるウチにミモザが挨拶に来たんだ⋯⋯⋯⋯自分を殺そうとした両親・・・・・・・・・・・と一緒にな」

「「「「「はぁぁぁぁっ?!」」」」」

「その場にいた家の奴らで、俺以外に気づいたかどうか知らないが、俺はその両親がミモザに怯えているように見えた」

「怯える?」

「ミモザの魔法の力なのか何なのかはわからないがな。だが、それよりも俺が恐怖したのは、あの『不気味な子供』と言われたミモザが⋯⋯今、お前たちや学園の人たちが印象としてある『可愛いミモザ先生』だ」

「そ、そんな⋯⋯まさか⋯⋯」

「⋯⋯し、信じられない」

「で、でも、元々の身内であるガスが言っているんだ。間違いないのだろう⋯⋯だが、しかし⋯⋯」


 皆、ガスの話を聞いて動揺を隠せないでいた。しかし、


「ほれ、お前ら。そんな昔話・・は終わりじゃぞ。⋯⋯敵さんの登場じゃ」

「「「「「っ!!!!!!!!!」」」」」


 学園長がガスの話を聞いていたリュウメイやリリアナたちを注意すると、みんながその学園長の言う『敵さん』に目を向けると、


「ひゃはははははーーーっ!! よ・う・こ・そ・! 私の可愛い生徒たちぃぃぃぃーーーっ!!!!」


 そこには、ガスが話していた⋯⋯⋯⋯かつて『不気味な子供』と言われていた『ミモザ・ジャガー』の姿があった。


「あれが、俺が元々知っている⋯⋯⋯⋯ミモザ・ジャガーだ」

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