第118話118「決勝トーナメント決勝(1)」



「いよいよ⋯⋯だな」

「ああ、これで⋯⋯最後か」

「ヤマト皇国の王太子か、それとも、かつての英雄の血を引く無名の少年か⋯⋯この試合で決まる!」


 ザワザワザワザワザワ⋯⋯。


——試合開始前、会場の誰ともなく、どこかしこでそんな会話が聞こえてくる。


 会場は異様な緊張感に包まれていた。


 そして⋯⋯、


「これより、一回生クラス編成トーナメント決勝戦を開始します。リュウメイ・ヤマト選手、カイト・シュタイナー選手、前へ!」

「「「「「ウォォォォォォォーーーーーー!!!!!!!!」」」」」


 静寂に包まれていた会場が、司会のフェリシア・ジャスミンによるアナウンス、そして、それを聞いて舞台へと入ってきた二人の生徒を見て、大声援を送ると会場は一気にヒートアップした。


「改めまして⋯⋯初めまして、カイト・シュタイナー。僕はヤマト皇国王太子リュウメイ・ヤマトだ。よろしく」

「カイト・シュタイナーです。どうぞ、よろしくお願いします」


 二人はお互いに向けて、一度頭を下げた。


「長きに渡ったトーナメントも、これで最後⋯⋯。これにて『一回生の最強』が決まります」

「長かったね」

「ああ、長かったな」


 リュウメイとカイトを皮切りに、


「いや、本当に長かった」

「そうですね。本当に長かったです」

「これでもかっ!⋯⋯てなくらいに長かったな」

「長すぎだろっ!!!!」


 会場の至る所で皆が同じようなセリフを吐いていた(強め)。


——————————————————


【メタ主(作○)】

((すんませんっ! いや、ホント、すんませんっ!!!!!!))


——————————————————



********************



「それでは、決勝戦⋯⋯⋯⋯始めぇぇぇぇぇーーーー!!!!!!」


 ゴーーーン!


 試合開始の銅羅が鳴った。


 しかし、二人は依然、開始位置に立ったままだった。


「カイト・シュタイナー⋯⋯僕が君に負けたら・・・・一つだけお願いがあるんだ」

「んん?!」


 今、何つった?


「えーと⋯⋯リュウメイ様が⋯⋯」

猫かぶり・・・・・はいいですよ? これくらいの声量なら聞こえませんから」


 そうか。リュウメイこいつは俺の『猫かぶり』をすでに見破っていたっけ⋯⋯。


「そうか、では遠慮なく。俺とお前で試合して負けたら・・・・⋯⋯って言ったか?」

「あ! そっちの素のほうが僕は好きかな? それと⋯⋯⋯⋯うん、言った! そう、言ったよ!」


 何のこっちゃ!


『自分が負けたら、願いを一つきいてほしい』


 わからん! まったく意図がわからんのだがっ!


 あと! リュウメイの「そっちの素のほうが好きかな?」発言⋯⋯⋯⋯まさか!『第二のBL勢』の刺客かっ!?


 たしかに一見すると、ショートカットな髪型、小柄な体型(身長は160前半くらいかな?)と『ボーイッシュな女性』に見えなくもない。⋯⋯いや、下手なボーイッシュな女性よりも魅力的な見た目だ。そもそも、髪色が『銀髪』というのがまったくもってけしからん。


 これは、気を引き締めなければ⋯⋯⋯⋯俺の『牙城性癖』を揺るがしかねん!


「ま、まぁ、別に構わねーよ? じゃあ、もし、お前が負けたら⋯⋯⋯⋯俺のできることなら何でも・・・きいてやるよ」

「ん? 今、何でも・・・って⋯⋯」

「え?⋯⋯⋯⋯あぁっ!?」


 しまった! 油断したっ!


 いかん! いかんぞ、その流れ・・はっ!!!!


「あ、いや、その、べ、別に、何でも・・・とは⋯⋯」

「今、何でも・・・って言ったよね?」

「うっ!?」

「⋯⋯言質、いただきました」


 気のせいか⋯⋯⋯⋯リュウメイの瞳の奥が鈍く光った。



********************



「ていうか、お前⋯⋯」

「ん?」

「もしかして、これから俺に負けようと思っているのか?」

「え? ううん⋯⋯全力で勝ちに行くよ?」

「は?」


 何? 何なの、この子!? 怖い!


「つまり〜⋯⋯⋯⋯『僕が全力で挑んでもなお、勝てない相手だったら⋯⋯』という意味を込めてのお願いさ!」


 ん? それって⋯⋯、


「つまり、俺がリュウメイの全力でも勝てない相手であることで⋯⋯⋯⋯何かが証明される・・・・・・・・ってことなのか?」

「えっ!?」


 これまで飄々としていたリュウメイが、今の俺の発言を聞いて驚愕した顔を見せる。


「う、うんっ! そ、そうだけど⋯⋯。よく、これだけのやり取りでそこまで推論できたね。⋯⋯すごい」

「え? 普通だろ? そのくらい⋯⋯?」

「普通じゃないよっ!?」


 そうか? 普通だと思うけどな〜。


 ていうか、何が・・証明されるってんだ?


「やっぱ、良いね、カイト・シュタイナー! ううん⋯⋯⋯⋯カイトっ!」

「お、おう⋯⋯」


 おっと。こいつ、隙をついて『名前呼び』しやがった。


 うむ、なんだろう⋯⋯⋯⋯『BLの深い波動』を感じる⋯⋯。


「行っきまーーーーすっ!!!!!!」


 ドン!


 リュウメイが一気に俺との距離を詰めてきた。⋯⋯速いっ!


 ガガガガガガガガガガ⋯⋯!!!!!


 リュウメイが連撃を繰り出してきた。俺はそのすべてを防御する。


 ただ、本当は『初撃潰し』をやるつもりでいたのだが、リュウメイの攻撃が速すぎて・・・・それどころではなかった。ていうか、


「こ、この時点で、イグナスの全力に近い速度⋯⋯かよっ!?」

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