第115話115「決勝トーナメント準決勝(1)」



 ザワザワザワ⋯⋯。


「お、おい、学園長が準決勝進出の二人を舞台に呼んだぞ? 何が始まるんだ?」

「学園長が対戦カードがどうこう言ってたから、三人に何かその話をするんじゃないか?」

「いや、でも、トーナメント上だと次の対戦はイグナス・カスティーノとリュウメイ・ヤマトになるんじゃ⋯⋯」

「「「確かに!」」」

「いや、でもあの学園長だからな。また、何か考え・・があるんじゃないか?」

「「「確かに!」」」

「いや、みんな冷静になれよ! 準決勝の対戦カードも大事だけど、それ以前にさっきのリーガライドの話はどうなってんだよ! うやむやに、強引に、話終わってんじゃねーか!」

「「「「その話は終わったことになってんだよ! 空気読めっ!」」」」

「え、えぇえぇぇえぇぇぇ⋯⋯」


 観客席でも舞台に準決勝の三人が集まったことに「何が始まるのか」と興味津々だった。あと『リーガライドの話』が少し出たようだが、観客は『空気』を読んでくれているようだ。何よりである。


 これも学園長への信頼が厚いからなのかな? それとも、まさか⋯⋯⋯⋯ただの恐怖?


 いずれにしても学園長の影響力、ハンパないようである。



********************



「さて、少々バタついたが準決勝の対戦カードじゃが⋯⋯今回、準決勝は三人となっておる。トーナメント上ではイグナス君とリュウメイ君が対戦でカイト君がシードということになるのじゃが、実は少し前に提案があってのぅ⋯⋯」

「提案?」


 俺は学園長の言葉に思わず反応する。


「イグナス君本人から⋯⋯⋯⋯『カイト・シュタイナーとやらしてくれ』という申し出じゃ」

「えっ?!」


 俺は学園長の言葉に驚きつつ、イグナスのほうを見た。だが、イグナスは腕を組んだまま目を閉じて俯いていた。


「僕は構いませんよ」


 すると、そこでリュウメイが声を上げる。


「カイト君はどうじゃ?」

「え? いや、僕もそれで大丈夫ですけど、でも⋯⋯イグナス君はどうして僕を指名したの?」


 俺はイグナスに率直に質問をぶつけた。


「俺は⋯⋯」


 すると、イグナスがゆっくりと口を開いた。


「俺は今の全力でカイトとどこまでやれるかを試したい」

「⋯⋯イグナス⋯⋯君」

「リュウメイ王太子とやりたい気持ちもある。カイトと同じくらいにハンパない化け物だしな。でも、もし対戦相手を選べるなら⋯⋯⋯⋯俺はカイトとやりたい」


 イグナスは俺の目をまっすぐ見て語った。


「うん、わかったよ、イグナス君。やろう! 俺も今のイグナス君とはやってみたいと思っていた」


 俺はイグナスの要求をすぐに快諾した。


「そっかー。僕としてもイグナス君とは対戦してみたいと思っていたんだけどな〜。でも、二人の対戦も面白そうだね、楽しみだよ」


 リュウメイも俺とイグナスの対戦に快諾してくれた。


「うむ。では、決まりじゃな。諸君、これより準決勝を行う! 対戦は⋯⋯⋯⋯イグナス・カスティーノ君とカイト・シュタイナー君!」

「「「「「ワァァァァァァァ!!!!!!」」」」」


 学園長の言葉に観客も大きな歓声を上げる。


 こうして、準決勝は俺とイグナスの対決となった。



********************



——十分後


「皆さん、お待たせしましたー! これより準決勝を開始します! イグナス・カスティーノ選手、カイト・シュタイナー選手入場!」


 大きな歓声に包まれる中、俺とイグナスは舞台へと改めて登場した。


「それでは、準決勝を開始します! はじめぇぇぇーーー!!!!」


 ゴーーーン!


「カイト。とりあえず、礼を言っとく⋯⋯⋯⋯ありがとう。お前のおかげで今の俺がある。それは本当に感謝してもしきれない」

「⋯⋯イグナス」

「だから、これは恩返し・・・と思ってくれ」

「?? 恩返し?」


 そこで、イグナスがニチャァと顔を崩す。


「お前のおかげで強くなった俺が、脅威となる存在くらいに成長したってことを思い知らせてやる!」


 イグナスが最初の頃に出会ったような『尖ったキャラ』で俺に威圧を放つ。俺はそんなイグナスの姿を見て少し感慨深くなりつつも、イグナスのノリ・・に合わせた。


「おいおい、イグナス。お前、顔が昔に戻ってんぞ? 相変わらず悪人みたいな顔しやがって」

「フン! 俺は元々こういう顔なんだよ! それよりもカイト、お前の言葉遣い、猫かぶり・・・・になってないぞ? もう少し演技・・をがんばったらどうだ?」

「うっせ! このBL野郎! 感謝してるならもう少し俺を敬い給えってんだ!」

「はんっ! お前まだわからないのか? 俺はお前のことが今でも嫌いなんだよ!」

「おーおー、言うじゃねーか、BLツンデレ野郎! BLタグの責任取れや、コラ!」

「いちいち⋯⋯いちいち⋯⋯意味わかんねーこと、言ってんじゃねーっ!!!!」


 ドン⋯⋯っ!


 そう言うと、イグナスが俺に向かってきた⋯⋯⋯⋯いつの間にか、右手と左手に氷と風属性魔法の塊・・・・・・・・・を携えて⋯⋯。


「え? そ、それって、まさか⋯⋯」

「おらぁぁーーー!!!! 新・合体魔法『猛襲氷嵐ストーム・ブリザード』!!!!」

「開始早々、今まで隠してた『切り札』出してんじゃねぇぇぇーーー!!!!」


 イグナスのまさかの『初撃切り札』に俺は不意をつかれた。急いで魔力を身体強化ビルドと魔法防御へと全振りさせるが、


「ぐぁっ!?」


 ドゴン⋯⋯っ!!!!


 俺は舞台外の壁に激しく激突。かろうじて魔法のダメージは軽減させたものの、イグナスの放った新・合体魔法『猛襲氷嵐ストーム・ブリザード』の正体である『かまいたち』『暴風』『氷結』の効果を完全に殺すことは出来なかった。


 イグナスに完全に、してやられた。

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