第104話104「決勝トーナメント一回戦(14)」
「おい、お前ら⋯⋯さっきから俺が横にいること気づいていないのか?」
「「あ! ガス・ジャガー(君)っ!!!!」」
そう。最初、レイアはガスと喋っていたのだが、舞台上での『カイトの異常事態』に、レコと意気投合してしまったレイアはすっかりガスのことを忘れていた。
「なるほどな。姫様もレコ先生もカイトにゾッコン、てか」
「「な、ななななななななな⋯⋯!!!!!!!!!」」
「あー、別にそういうのいいから。それよりも⋯⋯」
二人が必死にガスに対して「カイトが好きなんて⋯⋯そんなこと言って⋯⋯」といった『言い訳のくだり』を『そういうのいいから』とあっさりバッサリ切ると、ガスは話を続ける。
「あのリリアナ・ハルカラニって奴は何者なんだ? それに、ハルカラニ家ってのは『水・氷属性特化』のはず。なのに、今のあの魔法はどうみても精神干渉系の『闇属性魔法』みたいじゃねーか?」
「なんだ、ガス? お前、ハルカラニ家の相伝魔法を知らないのか? 有名だぞ?」
「フン! 女性当主の家なんて興味ねーからな!」
「私に負けといてよくそんなことが言えるな。もう少し、勉強したほうがいいぞ?」
「な、何をぉぉーー!!!!」
「はいはい、やめなさい、二人とも。とりあえず、私がハルカラニ家のこと説明しますから⋯⋯」
そう言って、レコがガスにハルカラニ家の説明を始めた。
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【ハルカラニ家】
・水と氷属性に特化した魔法を得意とする名家
・当主はすべて『女性』。夫は当主である妻を支えるという他とは異なる家訓を持つ
・というのも、ハルカラニ家には『初代の女性当主』が生み出した相伝魔法『
・『
・故に、本来の属性魔法ではないため、魔力量の消耗が属性魔法の二倍となるため、そう何度も使えず、また、属性魔法ではないため、効果も術者のやり方や個人差などで大きく変わる
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「『遺伝』?『遺伝』は属性魔法とは関係ないってことなのか、レコ先生?」
「はい。ただまあ、この辺はまだよくわかっていない部分でもありますが⋯⋯。ただ、現状、実際にハルカラニ家の人たちは闇属性魔法特有の精神干渉系の相伝魔法が使えているわけですから『遺伝』と『属性魔法』は関係ないのかもしれません」
「とはいえ、属性魔法ではないためか、魔法発動には通常の属性魔法の倍ほどの魔力量が必要なようだがな⋯⋯。そういう意味では多少は『遺伝』と『属性魔法』には関係性があるのでは?」
「確かに⋯⋯そうですね。さすがです、レイア姫様」
「それよりもレコ先生、カイトだ! カイトは大丈夫なのか! リリアナの『
「はっ!? そうでした! ガス・ジャガー君、お話は後で伺います! 先生、今それどころじゃないので!」
そう言って、二人は再びガスを
「こいつら⋯⋯遂に、はぐらかさずに本音、吐きやがった」
ガスは「さっき言い訳をした二人はどこへやら⋯⋯」と思いながら、一度「はぁ〜」と大きなため息を吐く。
「⋯⋯クラリオン王国第二王女に、最年少上級魔法士がカイトにゾッコン⋯⋯。そんなカイトが、舞台でハルカラニ家のリリアナのことを『好き』ってか。こりゃー⋯⋯血の雨が降るな」
そう言って、ガスは身震いしながら二人の元を去った。
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「それでは早速、皆さまの期待に応えましょう! カイト、よろしくお願いしますね?」
「⋯⋯はい」
リリアナはそう言って、虚なままのカイトに質問を始めた。
「⋯⋯ではカイト。まずは、あなたのことを教えてください。そうですね、まずはあなたの家族のことを教えてくれますか?」
リリアナがカイトの耳元でフッと質問を投げかける。それを見ているレイアとレコが半狂乱していることは言うまでもない。
カイトの口が開いた。
「⋯⋯カイト・シュタイナー、十歳。シュタイナー領領主である下級貴族ベクター・シュタイナーと、ジェーン・シュタイナーの息子。下に妹が一人⋯⋯妹の名はアシュリー・シュタイナー、七歳⋯⋯です」
「シュタイナー領? たしか、最南端に位置する小領地で海に面している領地⋯⋯。ん? ベクター・シュタイナー? ジェーン・シュタイナー? はて、どこかで聞いたことあるような⋯⋯カイト、あなたのご両親はどういった人物なのですか?」
「⋯⋯はい。父ベクター・シュタイナーはシュタイナー領にて領地運営をしており、母は専業主婦です。あと、父は元クラリオン王国騎士団団長で母ジェーンは副団長⋯⋯でした」
「「「「「は⋯⋯???????」」」」」
カイトの発言に、リリアナだけでなく、生徒、教師、観客全員が⋯⋯⋯⋯固まった。
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