第83話083「予選トーナメント三回戦(7)(レイア姫sideあり)」



【お知らせ】


 いつも『自重知らずの⋯⋯』を読んでいただき、誠にありがとうございます。


 えー⋯⋯大変、申し訳ないですが諸事情により、投稿の更新頻度を『火・木・土』の週3回とさせていただきます。更新時間はこれまでどおり『基本12:00〜14:00』です。


 とりあえず、今日の分を投稿したら、次回の更新は『11月30日(火)』です。


 以後『火・木・土』の週3回更新となりますので、何卒、よろしくお願いいたします。


 mitsuzoエンターテインメンツ


 ↓ では、本編をどうぞ。



********************



「さて、イグナスもザックも決勝トーナメント行きが決まったし、Aクラス入りとなったし、よかった、よかった」


 俺はイグナスとザックが決勝トーナメント行きが決定して、ホッとした。


「おめでとう、カイト。イグナス君もザック君も無事Aクラス入りが決定したな」

「え? あ、はい。ありがとうございます⋯⋯」

「ん? どうした?」

「あ、いや、僕のこと『カイト』て⋯⋯」

「っ!!!!! す、すまない! わ、わた、わた、私としたことぎゃ・・⋯⋯っ!?」


(あ、噛んだ)


「あ、いや、その! だ、大丈夫です! レイア姫様が『名前呼び』が嫌じゃなければ⋯⋯」

「嫌なわけないでしょうっ!!!! あ⋯⋯。い、嫌なわけないだろうっ!!!!」

「あ、そ、そうですか。それなら良かった⋯⋯です」

「い、良いのか? カイトと『名前呼び』して⋯⋯嫌ではないか?」

「はい。もちろんです。レイア姫様に『名前呼び』されるなんて光栄です!」

「⋯⋯光⋯⋯栄⋯⋯⋯⋯うっ!?」

「ええっ!? ど、どうしました?! 鼻血、出てますよ!」

「え⋯⋯っ!? あ、いや、その⋯⋯」

「いけません! 鼻血を止めなければ! 横になってください!」

「え? よ、横?」

「はい! それと⋯⋯すみません! 今、枕代わりになるものがないので、よければ僕のを使ってください!」

「え? 膝? そ、それって⋯⋯」

「ああ!? すみません! 僕はなんてことを! 大変失礼しました! あまりにも焦ってしまい大それたことを! すぐに人を呼んできま⋯⋯」

「いや。カイトので構わんぞ」

「え?」

「カ、カカカカ、カイトの膝で頼む⋯⋯んふぉっ!」

「っ!?」


 ポス!


 そう言って、レイア姫が横になると俺の膝に頭を置いた。そう⋯⋯いわゆる『ひざまくら状態』である。


「す、すみません!? ほ、本当に、大丈夫ですか? こ、これって、いわゆる⋯⋯ひざまく⋯⋯」

「ありがとう、カイト! おかげで座っていた時より気分が良いぞ! お前の機転のおかげだな!」

「え!? あ、あああ、ありがとうございます!?」


 気づいたら、俺はパニックのあまりレイア姫に『ひざまくら』を推奨してしまった⋯⋯が! にも関わらず、レイア姫は「気分が良くなった」と喜んでくれた。正直「どうしてこうなった」という感じだが、これはこれで、せっかくレイア姫と急接近になれたので、俺は『ラッキースケベ』と思うことにした。



********************



【レイア姫side】


 きゃああああああーーーーーーー!!!!!!


 どうした、私!


 どうした、カイト・シュタイナー!


 どうしてこうなった!


 私は今、カイト・シュタイナー⋯⋯いやさ、カイトの膝の上に頭を置いて横になっている。


 恋人同士がイチャイチャする上での『最初の通過儀礼ファースト・アタック』と言われている、かの有名な『ひざまくら』を、私はまだ恋人同士でもないのに・・・・・・・・・・・・、やってしまった。


 神様、ありがとうございます。


 もう、死んでもいいです。


 いや、やっぱ今死ぬのは嫌です。


 生きます。


 さて、どうしよう。私どうしよう。何だか、理解が現実に追いついていない・・・・・・・・・・・・・・おかげで逆に冷静になれている自分がいる。『緊張と羞恥心が一周した』と言うべきか、『仕事していない』と言うべきか。『悟りの境地』て、こういうことを言うのかしらね?


 さて、今のこの状況。私は『チャンス』だと思っている。『わたしのターン』だと思っている。


 なので、自分からこの『ひざまくら千載一遇』を手放すような愚かなことはしない所存である。


 そのまま、このままの状態で私は『何ともないフリ』をして試合観戦を続行するという『冷静な暴挙』に踏み切った。


「さて、残るはあと三試合だな、カイト」

「は、はは、はい! そ、そうですね!!!?」


 どうやら、カイト氏は少し緊張しているようだ。これはいけない。ここはひとつ、私の軽快なトークを展開してカイト氏に楽しんでもらわねば。


 舞台を見ると、Aクラス配属でガス・ジャガーやドレイク・ガリウスの次くらいの実力者である上級貴族が登場した。名前なんだっけ?


 そして、対戦相手を見ると、うーん、見たことのない男子生徒だ。司会のアナウンスを聞くにどうやらCクラスの生徒⋯⋯しかも『姓』がないので『平民』らしい。それにしても珍しい名前だな。


 それにしても、この平民の生徒、髪が黒色・・とは⋯⋯。これじゃあ、まるで『私の恋人カイト』と一緒じゃないか。応援してやろうじゃないか。


 私は無謀とも言うべき挑戦に近いCクラスの生徒に「せめて声援だけでも⋯⋯」という気持ちで一生懸命心の中で勝つよう応援した。Cクラスの平民の子が少しでも良いところを見せられるように。


「勝負あり! 決まりましたー! 勝者⋯⋯」


 勝負は一瞬で決まった。というか勝負にもならなかった。圧倒だった。勝ったのは、


「第七試合、勝者⋯⋯⋯⋯ウキョウ選手!」


 そう。勝ったのは『ウキョウ』というCクラスの平民の生徒⋯⋯⋯⋯え?


「へ、平民の生徒が勝っただとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」


 私は、自ら『ひざまくら千載一遇』を手放すような愚かな行為に及んでしまうほど、今の試合結果に飛び起きた。同時に我にも返った。


「下克上! 下克上です! しかも、平民の生徒が上級貴族を圧倒して破るという⋯⋯前代未聞の事態となりましたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! ちょ!? これ、マジどうすんのよぉぉーーー!!!!」

「「「「「⋯⋯⋯⋯」」」」」


 会場は、司会のフェリシアの『アイドル』ではないのフェリシア・ジャスミンの声が響くだけで、観覧席からは歓声もなく、ただ、静まり返っていた。

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