第77話077「予選トーナメント三回戦(1)」



「いよいよ、三回戦か」


 俺は舞台横の一回生用の観覧席にいる。いよいよ、ガスたちAクラスの生徒とぶつかる予選トーナメント三回戦が始まる。


「カイト」

「レコ」

「先生と呼びなさいよ!」

「まあまあ、いいじゃないか、レコさんや」

「じじいか!」


 レコが観覧席のほうへやってきた。


「カイト。さっきの二回戦までのイグナス・カスティーノとザック・カーマインだが、あれはお前の仕業か?」

「はて? 何のことでしょう?」

「しらばっくれんじゃない!」


 そう言って、レコが素早い動きでチョークスリーパーをかけてくる。


「し、締まってる! 締まってる!」

「さあ、話せ、カイトー!」


 グググググ⋯⋯!


 あ、当たってる。レコの双丘・・が当たってる。ありがとうございます。


 俺はレコの立派に成長したお胸の感触(お椀型)を味わいつつ、話を始める。


「え、えーと、二人には僕の魔力コントロールを教えただけだよ」

「カイトの⋯⋯魔力コントロール? あ⋯⋯」


 カイトにそう言われて、レコは何かに気づいた。


「もしかして、お前が前に言っていた『体の中で魔力を循環させる』てやつか?」

「う、うん」

「⋯⋯」


 すると、レコがチョークスリーパーを外して俺の横に座り直し、何かを考え始める。


 あー⋯⋯双丘よ、さらば。


「二人のあの魔法威力、魔力量⋯⋯ザック・カーマインに至っては異常なまでの身体強化ビルドの効果⋯⋯あの二人の爆発的な成長はやっぱりカイトの仕業だったのね」

「テヘペロ」

「だあらっしゃー!」

「へぶっ!」


 肘鉄いただきました。


「正直、二人のあの試合は一回生の生徒はもちろん、教師陣、観客席も驚いていたわ。だって、あり得ないもの。入学してまだ一ヶ月程度であれだけ魔力量が成長しているなんて。そして、その成長の要因がカイトの魔力コントロール⋯⋯あんた、どうしてそんなに目立ってしまうようなことばかりするのよ!」

「えー、そ、そんなこと言われても⋯⋯」

「自重しなさいって言ったでしょ! とは言うものの⋯⋯」

「?」


 レコが頭に手をやり、大きなため息を吐く。


「どうやら、学園長はあんたの行動を制限するどころか『もっとやれ!』てな感じで楽しんでいるのよね。最初はアルフレッド団長も私も『目立つのは良くない』というスタンスだったけど、最近はちょっと変わってきててね。もう『なるようになれ』て感じ? もはや、学園長の思惑にそのまま乗っかっているって感じよ」


 レコもアルフレッド団長も『俺の力を隠す』ことは、どうやら諦めたらしい。


「それにしても、まさかカイト以外の生徒で常識外れのことが起きてしまうなんて⋯⋯。あんた、一体どうしたいのよ?」

「い、いや、どうしたいって言われても⋯⋯特には⋯⋯」

「あんた、ジャガー財閥の子たちとも最近つるんでいるようだけど、もしかして⋯⋯あの子たちもイグナス・カスティーノやザック・カーマインと同じ・・なの?」

「え? あ、いや、その⋯⋯⋯⋯はい」

「⋯⋯なるほど。まあ、もういいわ。とりあえず、もう私も団長もあんたの力を隠すことは諦めたから。まーとことんやってよ。私は横で楽しませてもらうわ」

「レコ⋯⋯」

「あ! 噂をすれば⋯⋯ガス・ジャガー君の登場ね」


 レコが指差す舞台に目を向けると、ガスと対戦相手が向かい合わせに立ち、試合がまさに始まろうとしていた。



********************



「それでは、予選トーナメント三回戦を始めます。ここからは二回戦シードとなっていた入学時Aクラス配属の生徒たちが登場します」

「「「「「おおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」

「では早速、第一試合を開始します。三回戦第一試合はガス・ジャガー、ジュリオ・エスターク選手⋯⋯お互いの開始位置に立ってください」


 二人が登場し、お互いの開始位置に立つ。


「ガス・ジャガー様はじめまして。わたくし、エスターク家嫡男のジュリオ・エスタークと申します」

「ああ、ガスだ。ところで、お前、防御結界魔法は使えるか?」

「え? 光属性の防御結界魔法ですか? い、いえ⋯⋯」

「そうか。じゃあ、身体強化ビルドを思いっきり展開して防御しろよ?」

「⋯⋯え?」

「それでは、三回戦第一試合⋯⋯はじめーーーーっ!!!!」


 ゴーーーーーン!


「火属性中級⋯⋯⋯⋯え? な、なんだ、あれは?」

「はぁぁぁぁぁ〜〜〜⋯⋯」


 試合開始直後——ガスが体内の魔力循環をフル回転させる。すると、何やらガスの体の周囲がユラユラと蜃気楼のように揺れている。


「おーーーと! 何でしょうか! ガス選手の体の周囲がユラユラと揺れている」

「むん!」


 ゴッ! ゴッ!


 すると、今度はガスの右手にボワ〜と『炎の塊』が浮かび、左手には『小さな竜巻の塊』が浮かんでいる。そして、その両手を真ん中に持っていき、二人の塊を混ぜる。


「合体魔法!『死の輪舞デス・ロンド』っ!!!!」


 ゴォォォォォォ!!!!!!


 ガス必殺の合体魔法『死の輪舞デス・ロンド』がジュリオ・エスタークを襲う。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


 ジュリオはまともに喰らい、十メートル後方にある壁に激突。火傷と殺傷でボロボロになった体で気絶。すぐにレフリーが試合を止め、先生たちがすぐに治癒魔法を展開する。


「レフリーストップ! 強い! やはり強い! ガス・ジャガー選手! Bクラス最強の一角と言われるジュリオ選手を一撃で葬ったーーーーっ!!!!!」

「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」


「すごーい。ガスのあの魔法、以前と比べ物にならないくらい威力上がってるー」

「『すごーい』じゃないわよ! 何よいまの! ガス・ジャガー君の合体魔法の威力は知っているけど、合同魔法授業であんたに打った時と全然威力違うじゃない! あの威力は上級魔法に匹敵するわよ!」


 レコが横でガスの魔法の威力に興奮。あまりの興奮に俺はまたチョークスリーパーをかけられていた。


 当たってる。当たってる。当たって⋯⋯ありがとうございまぁすっ!!!!

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