第34話034「舎弟誕生」
とりあえず、ストックはここまでです。
もしかしたら、明日から毎日投稿難しくなるかもですが⋯⋯がむばりますっ!
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「ず⋯⋯ずびば⋯⋯ぜぇん⋯⋯でじぃだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
今、俺の目の前にザック⋯⋯そして、その後ろにザックの手下であるチンピラ共が正座し、頭を床に擦り付けながら土下座をしていた。ていうかさせた。当然だ。
「おい、ザック。そして、後ろのチンピラ共⋯⋯」
「は、はい!!!!」
「「「「「はいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」」」」」
「とりあえず、お前らにはいろいろ聞きたいことがある。ていうか早速、教えてほしいんだが⋯⋯」
「な、なん⋯⋯でしょう?」
ザックが代表して返事をする。
「あー⋯⋯ザックは別に敬語はいいよ。同い年だし。それに呼び名も『カイト』でいいから。いちいちフルネームなんてまどろっこしいし。それにお前とは話してて楽しいからそれくらいがちょうどいい」
「っ! あ、ああ⋯⋯わかった」
カイトは自分を騙してリンチしようとしたザックに対し、さも当たり前のように「話してて楽しい」と告げる。それを聞いたザックがそのカイトの言葉に思わず⋯⋯感動する。
一方、カイトはそんなザックの機微に特に気づくこともなく、さらに話を進める。
「⋯⋯で、だ。今回、俺をリンチしようとしたのは『主の命令』て言ってたけど、その主とザックはどういう関係なんだ? その前にその主って何者よ?」
「あ、主は、俺の家⋯⋯カーマイン家が仕事関係でお世話になっている上級貴族カスティーノ家の次男で、名前は⋯⋯⋯⋯イグナス・カスティーノ」
「⋯⋯イグナス・カスティーノ。上級貴族⋯⋯ね」
なるほど。つまり、ザックはこのイグナス・カスティーノの手下ってわけか。
「このイグナス・カスティーノが俺を恨む理由は『入学式で目立ったから』⋯⋯だけってこと?」
「あ、ああ。あいつは自分よりも目立つ奴を殊更嫌うからな⋯⋯」
「ザック⋯⋯⋯⋯お前、イグナスって奴、嫌いなのか?」
ザックは一瞬、言葉に詰まる⋯⋯が、すぐに口を開いた。
「お、俺だって本当は⋯⋯本当は⋯⋯お前にやったようなリンチなんてやりたかないっ! 俺は騎士になりたいんだっ! だから、イグナスに「こんなことはしたくない!」とも言った! だが、あいつは俺に『命令が聞けないならカーマイン家との関係はすべて反故にする』と言ってきた!」
「⋯⋯ザック」
ザックは、胸の内にあったものを一気に吐き出すかのように声を上げた。
「俺はこれからも一生あいつの命令に従う奴隷のような将来しかないのさ。イグナスの命令とはいえ、これまでいろいろ非道いことをしてきたんだ⋯⋯当然の
そう言って、ザックは「はは⋯⋯」と力無く笑った。
「⋯⋯坊ちゃん」
「坊ちゃん!」
チンピラ共が悲痛なザックの姿を見て、慰めるように声を掛ける。
「おい⋯⋯お前らもザックと同じ心境なのか?」
俺はチンピラ共に話を聞く。
「「「「「はい、もちろんです!」」」」」
「でも、お前ら俺をリンチするとき喜んでいたよな?」
「あ、あああ、あれは⋯⋯⋯⋯すみません。そうですね。確かに⋯⋯楽しんでました」
「⋯⋯すみません。こういうことを何度かやっていたら、つい自分が強くなった⋯⋯偉くなった⋯⋯そんな気がして⋯⋯」
そう言って、チンピラ共はザックと同様、これまでの自分たちの非道い行いに⋯⋯調子に乗っていたことに⋯⋯謝罪と後悔の言葉を吐く。
「ということは、今は反省しているんだな?」
「「「「「は、はい!!!! 本当はこういうことは、もうやりたくないですし、ザック坊ちゃんにはこれ以上こんなことはさせたくないですっ!!!!」」」」」
「お、お前ら⋯⋯」
ふむ。ザックは年上のチンピラ共からすげー信頼されているんだな。
「⋯⋯で、でも⋯⋯イグナス様がいる限り⋯⋯俺たちは⋯⋯この環境から逃れられないんです」
「たぶん⋯⋯今日、リンチが失敗したと分かれば⋯⋯イグナス様はまた同じ命令を出すか、別の手下どもに命令を出すか⋯⋯いずれにしても、今後もカイトさんにちょっかいを出してくると思います」
なるほど。中々、しつこい性格のようだな。面倒くさいタイプか。
「⋯⋯カイト。本当にすまなかった」
「ザック?」
「俺、もう一度、イグナスにカイトについて何とか諦めてもらうよう説得するよ」
「ザック、お前⋯⋯」
「お、俺⋯⋯けっこう頭も切れるし、口も達者だからさ! 大丈夫! うまいこと説得してみせるよ!」
「⋯⋯」
ザックは一際明るい口調でそう告げた。
いや、どう考えても玉砕覚悟じゃん。説得できずにリンチになるパターンじゃん。
「そ、それで! それですべてが片付いたら⋯⋯改めて、俺と
「「「「「坊ちゃんっ!!!!」」」」」
「今日初めて話したけど、俺もお前と話すとウマがあって楽しいからよ⋯⋯へへ」
「⋯⋯」
ザックは照れて鼻を擦りながらそう言った。
ザック、いいな。やっぱ、こいついい奴だな。これまで俺にやろうとしたことを他のやつにやってきたのであればそれは許されないことだ。でも、ザックや手下のチンピラ共はそんな悪いやつではない。
これまでの過ちは、今後『人のために役立てること』と『俺のために役立てること』で償ってもらおう、そうしよう。ということで、
「話は聞かせてもらった! では、ここからは俺がある
「「「「「提案?」」」」」
「お前ら今日から俺の
「しゃ、舎弟?」
「あ、舎弟⋯⋯て無いのかこの世界には。うーん、えーとだな⋯⋯⋯⋯」
「カ、カイト。もしかして、その
「うーん、まあ、近いんだが、もっとこう手下よりも仲間に近いというか⋯⋯うーん⋯⋯まあ、仲間の子分みたいなもんかな。うまく説明できないからそれでいいや」
「「「「「は、はあ⋯⋯」」」」」
「俺には野望がある! その為にお前たちにはキリキリ働いてもらう! そのかわり⋯⋯⋯⋯お前ら舎弟に何かあったらすべて俺が守ってやる!」
「「「「「⋯⋯え? そ、それって⋯⋯?」」」」」
「イグナス・カスティーノというクズとは縁を切ってお前ら俺につけっ!」
「「「「「え⋯⋯ええええええええええっ!!!!!!!!」」」」」
「カ、カイト! お前が強いのはわかった。だが、イグナス・カスティーノは上級貴族だ。お前よりももっと強い。それに上級貴族で性格も捻じ曲がっている! お前の気持ちは嬉しいが⋯⋯やはり、それではカイトを危険な目に⋯⋯」
「大丈夫だ、ザック。俺に考えがある」
「え? 考え?」
「ああ。何もイグナス・カスティーノに俺は戦いを挑もうとしているわけじゃない。むしろ⋯⋯利用するつもりだ」
「ええっ?! あ、あの、イグナス・カスティーノを利用する⋯⋯っ?!!!!」
ザックがカイトの思いがけない言葉に驚愕の顔を示す。
「まあ、そいつがどんな奴かは知らんが、いずれにしても俺の
「カ、カイト⋯⋯君?」
カイトの不穏な笑みにゾッとしたザックは「カイト・シュタイナー⋯⋯こいつ、もしかしてイグナス・カスティーノよりやばい奴かも⋯⋯」と感じ、さっきのダチ宣言を早くも後悔し始めていた。
時すでに遅し。
こうして俺は『異世界に転生したらやりたいことリスト』を今後実現していく上で必要となる『人材』をまんまと獲得した。
よし、よし、いいぞー。これからもこの調子でどんどん舎弟増やしていくぜーっ!
ふっふっふっ⋯⋯入学早々、ついているな、俺。
すべて⋯⋯⋯⋯計算通りっ!(クワッ)
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