第32話032「考えるな! 感じろ」



——二十分前


「俺はちょっと買い物に行ってくるからその間に済ませとけよ。二十分くらいで戻ってくる! じゃあな、カイト・シュタイナー」


 そういうと、ザックは外に出ていった。それと同時にチンピラが俺に近づいてくる。


「へっへっへ⋯⋯お前もついてねえな。入学初日で目ぇつけられるなんてよぉ」

「⋯⋯」

「なんだ? ビビって声も出ないってか? おいおい、大丈夫だって。俺たちもそこまで非道いことはしないからよ」

「⋯⋯」

「まー、三日くらいは殴られた痛みで熱出すくらいはあるけどよ⋯⋯それでも骨折るとか、切り刻むなんてことはしないから安心しな」

「⋯⋯」


 うわー! 絶体絶命だー!(棒)


「さて⋯⋯と、それじゃあ、お前には悪いが少し痛い目にあってもらうぜ?」


 そう言って、チンピラが近づいてきたので一言、返事をした。


「やれるものならやってみろ、クズども」

「「「「「⋯⋯え?」」」」」


 俺の言葉に全員が固まった。


「お、おおおお、お前⋯⋯!!!! いいい、今、何つったコラぁぁぁ!!!!」

「なんだ? 聞こえなかったのか?⋯⋯⋯⋯やれるものならやってみろ、ウジ虫ども」

「さ、さっきと言っているセリフが違うじゃねーかぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


 なんだ、聞こえてるじゃないか?


 怒声を発しながらチンピラ三人が一気に俺に詰め寄ってきた。


身体強化ビルド⋯⋯」


 キーン。


 身体強化ビルドを展開した俺は、後ろで拘束している二人を力づくで強引に引き剥がし、前方へ移動させた。そして、


「よっ⋯⋯と!」

「え! ちょ、ちょ⋯⋯わぁぁぁ!?」

「うわ⋯⋯うわぁぁぁぁ!!!!!!」


 ガン⋯⋯っ!!!!!!


 俺は前から突っ込んできた三人に、この二人を盾のように前で固めた後、グイっと押して衝突させた。


 盾のように扱った二人はその衝撃で気絶。突っ込んできた三人は図体も俺を拘束していた二人よりガッシリしているからか、そこまでダメージはないようだ。しかし、


「お、おおお、おい? お前、今⋯⋯魔法⋯⋯身体強化ビルドを使ったのか?」

「ん? ああ。それがどうした?」

「え⋯⋯?」

「ウソ⋯⋯?」


 三人は俺が身体強化ビルドを使ったことにかなりビビっていた。


「お、お前⋯⋯下級貴族だよな? な、なのに何で⋯⋯入学初日から魔法⋯⋯使えるんだよ?」

「ウ、ウソだろ? 魔法使えるなんて聞いてねえぞっ!!!!」

「ふ、普通、入学したばかりだと魔法使える奴なんて⋯⋯王族か上級貴族くらいじゃないのかよ!!!!」


 どうやら三人は俺が魔法を使えないものだと思っていたようだ。ていうか、入学初日から魔法使える下級貴族は珍しいというのが常識⋯⋯ということか。


 俺はとりあえず、こいつらをどうしようかと考えていた。別に今のところは痛い思いはしていないし、こいつらは利用されているだけのようだから、まあ、逃がしてあげても⋯⋯、


「あ、兄貴! でも、三人ならいけるんじゃないっすか?」

「そうっすよ、兄貴! いくら身体強化ビルドしていたって、俺たち三人なら力づくでやっつけられますよ!」

「そ、そうだな! 身体強化ビルドはせいぜいいつもの力の二倍程度しか強化はされないらしいからな。よ、よし! へっへっへ⋯⋯身体強化ビルドしたからって調子に乗ってんじゃねーぞ、ガキぃぃぃぃ!!!!」


 リーダー格の男がそう吐き捨てると、再度、三人が一斉に突っ込んできた。


 ということで、処刑決定。


「おらぁぁぁぁ!!!!⋯⋯⋯⋯え?」


 ガシ!


 俺は殴りかかってきた一人目の男の腕を左手で掴むと、同時に右手でそいつの頭を掴み、


「ほい」


 グシャ⋯⋯!


 すぐ横にある壁に力任せに押し潰した。男は鼻を骨折したのか、鼻血をいっぱい出しながらズルズルと崩れ落ちる。


「え⋯⋯? い、今、何を⋯⋯したんだっ?!」

「み、見えなかった⋯⋯」


 どうやら、二人は俺が壁に叩きつけた一連の流れを目で追いきれなかったようだ。


 ん〜? そんなに素早い動きしたつもりはないんだけど?


 どうやら、俺の感覚とこいつらの感覚は少し・・ズレてるらしい。


「へい、カモン⋯⋯」


 俺は『ブルー○・リー』よろしく、右腕を前に伸ばし、手のひらを上にして指でクイクイ⋯⋯と二人を煽った。


「う、うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」


 兄貴と言われた男が、顔面蒼白な状態で突っ込んできた。どうやら恐怖のあまり我を失っているようだ。あと、もう一人の男は完全にビビった状態だけどとりあえず突っ込んでみた、という感じだな。


「ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ! ホァタァァァーーーーッ!!!!!!!!」


 バキ! ドカ! グシャ! ドゴ! ボコォォォォン!!!!!!!


 俺はジークンドーマスターのように華麗なる連続掌打で二人を沈黙させた。


「ドント、シンクっ! フィーーーール(考えるな! 感じろ)」

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