第30話030「罠」
——正門
俺は一人、正門でザックを待っていると、
「おーい、カイトー!」
「ザック!」
ザックが友達二人を連れてやってきた。
「待ったか?」
「いや、大丈夫だよ」
「そっか。あ、紹介するよ。こっちは⋯⋯Bクラスの友達だ」
「ガンズだ」
「ロイだ」
「カイト・シュタイナーです。よろしく」
あれ? 家名とかないの? 平民?
「ああ、こいつらは平民だからな。家名とかはないんだ⋯⋯」
「へー、平民でBクラスなんてすごいね」
「ま、まあな。よし、じゃあ行こうぜ!」
「うん!」
「「⋯⋯」」
こうして、俺とザックとその友達二人の四人で街へと向かった。
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「す、すごい! や、やっぱ、平民エリアは広いね!」
俺たちは平民エリアに来ている。というのも、ザックが平民エリアに
「ああ。王都の平民エリアは広いし、いろんなお店もあるんだ。後でいろいろと紹介するけど、まずはついてきてくれ」
「わかった」
「「⋯⋯」」
そうして、ザックの案内の元、歩き続ける。賑やかな場所からさらに奥へと進む。すると、少し、寂れた建物が目立つ場所へとやってきた。
「ザック⋯⋯何だかこの辺はずいぶん寂れているね」
「⋯⋯ああ。ここは平民エリアから離れた貧民街だからな」
「貧民街?」
「ああ。両親のいない孤児や、ケガを負ってまともな仕事ができない奴とかが住んでいる区画だ」
なるほど。確かに、歩いている人たちの格好を見ると汚れた衣服を着けており、目が虚ろな奴やガラの悪そうな奴らが多い。
ザックは「面白いところがある」と言っていたが、こんなところに何があるのだろう?
「カイト⋯⋯」
「ん? なんだい?」
「人生ってさ、残酷だよな⋯⋯」
「え? どういう⋯⋯?」
「王族や上級・下級貴族エリアにはこんな貧民街は存在しないけど、平民エリアには賑やかなエリアと対照的な貧民街が確実に存在する」
「ザック?」
「⋯⋯生まれてきた子供は両親を選べない。俺は今の自分が本当にラッキーだったなって思うんだ。もし、平民の両親に⋯⋯いや貧民街の住人の両親に生まれていたとしたら今頃俺は⋯⋯そう考えるだけでゾッとする」
「⋯⋯ザック」
「そんな奴らに比べれば俺はラッキーだ! 恵まれた環境にいる! 将来は明るいんだっ!」
「⋯⋯」
ザックは、まるで自分に言い聞かせているような言葉に力を込める。
何だ? ザックは一体何を?
そんなことを考えていると、
「ここだ、カイト」
「!」
ザックが足を止め「ここだ」と言った場所は、何も手入れされておらず、所々、壁が剥がれている古びた屋敷だった。どう見ても人が住んでいるようには思えない。
「こ、ここは一体⋯⋯?」
「ここか? ここはな⋯⋯⋯⋯お前を
「え?」
その時、俺の後ろを歩いていたザックの友人という平民の二人が、
ガシッ!
「え⋯⋯?」
俺を拘束した。
「悪いな、カイト・シュタイナー。面白いところっていうのはな⋯⋯お前を監禁してちょいと痛い目に合わせるこの屋敷のことだ」
「え? え? ど、どういうこと⋯⋯?」
「まー、ここじゃ何なんだから中で話すよ」
そう言って、ザックを先頭に俺は拘束されながら屋敷に中に入っていった。
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「ようこそ、カイト・シュタイナー」
屋敷の中に入ると、窓が全部閉まっているからか昼間だというのに真っ暗だった。すると、誰かが中にいるようでそいつがランプに明かりを灯す。
ランプの明かりで中の状況がわかると、そこには俺より二、三こくらい年上のガラの悪いチンピラが三人ほどおり、俺を見ながらニヤニヤ笑っていた。
「こいつらは平民で俺の手下だ。ちなみにお前を拘束している二人も平民だが騎士学園の生徒じゃない。制服を用意して着させたただの平民でこいつらも俺の手下だ。今は俺の手伝い《・・・》をしてもらっている」
「⋯⋯なるほど」
「さて、カイト・シュタイナー。お前なんでこんなことになったかわかるか?」
「⋯⋯さあ?」
「入学初日に派手なデビューを飾っただろ? それを見た俺の
「⋯⋯」
なるほど。つまり
「俺は別にこういうことするのは好きじゃないし、そもそもお前のことは別に嫌いでも何でもない。だけど命令でよ⋯⋯仕方なくなんだ⋯⋯悪いな⋯⋯」
「⋯⋯」
「ちょっと痛い目にあってはもらうが、そこまで非道いことはしないから勘弁してくれよな? おい、お前ら! 骨折ったりナイフとかで傷つけるのはやるんじゃねーぞ!」
「「「「「へへ⋯⋯了解、了解」」」」」
周囲の奴らはナイフは持っていない⋯⋯持ってはいないが全員が全員「早く殴らせてくれ」とでも言いたげな顔でニヤニヤとこっちを見ている。
「俺はちょっと買い物に行ってくるからその間に済ませとけよ。二十分くらいで戻ってくる! じゃあな、カイト・シュタイナー」
「⋯⋯」
そういうと、ザックは外に出ていった。それと同時にチンピラが俺に近づいてくる。
「へっへっへ⋯⋯お前もついてねえな。入学初日で目ぇつけられるなんてよぉ」
「⋯⋯」
「なんだ? ビビって声も出ないってか? おいおい、大丈夫だって。俺たちもそこまで非道いことはしないからよ」
「⋯⋯」
「まー、三日くらいは殴られた痛みで熱出すくらいはあるけどよ⋯⋯それでも骨折るとか、切り刻むなんてことはしないから安心しな」
「⋯⋯」
うわー! 絶体絶命だー!(棒)
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