第07弾 屑の終わりは屑に-「屑消し・それ~損保」
♬闇ネット、闇ネット、闇のおぞまし屋本舗♬
さて、本日、お届けする商品はこれ。
役所や警察に相談してもどうにも進まない、待っている時間が怖い。
人間関係に犯罪の匂いが漂い始めて落ち着かない。
そんな悩みを解決したい。
そこで!
即、解決をモットーに「それ~損保」がお届けする「屑消し」
依頼を受ければ即調査。危険度が高い緊急性があれば即実行致します。
冤罪防止に逆恨みや思い込みでないかを調査します。
ある日突然、対象者がいなくなれば、はい、契約終了。
依頼者には、全く負担がありません。辛い事を忘れるだけ。
と言っても分かり醜いですよね。
そこで!
おっと今日、二回目のコールだ。詳細は語れないから再現ドラマを
用意いたしました。ご連絡はフリーダイヤル0120-8484@-428まで。
それでは、どうぞ。
③・②・①…
「やめて~まぁくん、やめて~まぁくん」
麻衣子は、ひとりで三歳の息子を育てていた。寂しさと将来への不安からSNSでいい人を探していたら、会社経営をしているという同い年に近い男性と出会う。何度かメールをやり取りし、会うことに。実際に会ってみると誠実そうないい男性だった。とんとん拍子に二人の仲は縮まっていった。付き合い始めた当初は、羽振りも良く、デート代も出すことなどなかった。不安だったのは、彼の仕事内容を具体的に知らされることがなかったことだった。不動産投資や株への投資と言われても麻衣子には、ああ、そうなんだぁ、程度で理解できなかった。
不安に感じ別れようと自分自身に言い聞かせた頃、彼が深夜にやってきた。
「仕事で不味い事に巻き込まれた。信用していた奴に裏切られたんだ。しばらく匿ってくれ」
と、土下座をするものだから、つい泊めてしまった。その夜はいつもに増して激しく求められた。彼は、翌日から、三歳の息子の面倒を見るからと、麻衣子を見送る日々が続いた。一ヶ月経っても彼は出て行こうともせず、居座っていた。麻衣子は意を決して、仕事に就くか、出ていくかを彼に迫った。彼は、呆気なく承諾し、仕事を探すと約束してくれた。その日から、息子の様子が可笑しくなってきた。麻衣子が帰宅すると側を離れないと思うと翌日からは近づきもしなくなった。
麻衣子が帰宅するとご近所の人に呼び止められた。そこで、初めて息子への虐待を知らされた。小さな痣は見受けられたが、虐待かの確信が持てなかった。しかし、ある日、息子の背中に手形を見つけた。それを問い詰めると彼は、しらばっくれるばかりだった。息子に聞いてもまとまな返事を得られないでいた。胸騒ぎが収まらず児童相談所を訪ねた。即座に対応してくれたが明らかな証拠がなく、監視対象となったと知らされた。その夜、息子の背中に水膨れを見つける。麻衣子は、相談所に連絡した後、「それ~損保」の「屑消し」に連絡を入れた。それから三日後、麻衣子が帰宅するのを玄関で相談員が待っていた。
室内に入ると息子が駆け寄ってきた。が、彼はいなかった。息子に聞くと誰かが訪ねてき、そのまま帰ってこないと言う。相談員は、何かあれば連絡するようにと告げ、立ち去って行った。それから、彼の姿を見なくなった。
虐待の事実を知らせてくれたご近所さんは、熱心に詳細を聞いてくれるのねぇと相談員を褒めていた。麻衣子は礼を言いに相談所に出向くと、ご近所さんが言う人物や尋ねられた日には行動していないことがわかり、不思議に思っていた。
男は、「立ち話では人目もあるから。どうです、私はちょうど勤務時間外になるので、一杯やりながら話すのは。奢りますよ」と相談員に巧みに口説かれ、車に乗った。すると、当て身を喰らわされ、気を失った。気づいた場所はトイレほどの広さの個室だった。鍵が掛かっていた。そこへ恰幅のいい男が三人やってきて、力づくで引き摺りだされ、椅子に座らされ手錠を掛けられた。
「何をするんだ!お前らは誰だ。こんなことをしてタダで済むと思うのか。俺には反社会の知り合いがいるんだぞ。覚えて置け」
その部屋に先ほどとは違う三人が入ってきた。男の左右と正面に座った。
「何?何をするつもりだ」
正面に座った男がガベルで机を叩いた。
「幼児虐待について裁判を行う」
「裁判?バカを言うな、何を裁くと言うのか、茶番はやめろ」
「被告人は静粛に。無許可で発言すれば罪が重くなりますので注意してください」
「罪って…、馬鹿を言うな!」
「法廷侮辱罪を加算します」
「何を言っているんだ」
「さらに騒音罪を加算します」
「…」
「では、検察官、どうぞ」
「被告人、板美正男を幼児虐待と殺人未遂で不定期刑を求刑します」
「弁護人」
「被告人の無罪を却下します」
「おい、お前何言っているんだ、弁護人だろ、弁護しろよ」
「さらに弁護人に対する暴言を侮辱罪として加算します」
「…」
「検察官」
「被告人は、60度の温度の熱湯を無抵抗な子供にあて、火傷を負わせたばかりか、私たちが被告人を拉致しなければ死に至らしめたことは明白です。よって本来は極刑を持って償わせるのが相当と考えます」
「し・死刑?さっきは不定期刑とか言っていたじゃないか」
「被告人は静粛に」
「弁護人」
「検察官に同意」
「では、判決を言い渡します。主文、被告人に死刑をいい渡します。但し、更生の兆しが見受けられれば、刑の減軽を考慮します。以上、閉廷」
「馬鹿言うな、これは裁判だな、じゃぁ、控訴だ控訴」
暫定死刑囚の板美正男は、元の独房に放り込まれた。そこへ弁護人がやってきた。
「何だあの裁判は。無茶苦茶だ。何とかしろ」
「威勢はいいですね。更生するつもりはありますか」
「更生するもしないも、俺は無罪だ」
「じゃ、死刑でいいですね。それでは手続きに入ります」
そう言った 弁護士は、背を向け立ち去っていくのを板美は格子戸の隙間に顔を押し当て見ていた。
「待て、待ってくれ、更生する、するからここから出してくれ」
弁護士は、歩みを止め、振り向かずに言った。
「では、直ちに厚生の手続きに入ります」
「なぁ、聞かせてくれ。更生を受け入れなかったら俺はどうなるんだ」
「目には目を歯には歯を、ですかねぇ」
「どういう意味だ」
「あなたが幼児に行ったようなことをあなたが反省するまで繰り返し行われます。具体的には、沸騰したお湯を10分間、ウオータージェットで吹き掛けられます。安心してください。10分間堪えられたら無罪放免ですから」
「そんな権利がお前らにあるのか」
「権利?言える立場じゃないと思いますよ。あっ、そうだ、ウオータージェットって凄いですよ。しかも、熱湯の。当たった場所から赤くただれて、皮や肉が削ぎ落されれ、耐え難い痛みを被る事に。殺してくれ~って大概は叫んでいるようですが、それは許されませんから、ショック死するか、大やけどを負って見ず知らずの土地に放り出されるだけです」
「ひぇ~。分かった素直に従うよ」
「それは良かった」
暫くして、恰幅のいい男が三人やってきて、板美は、注射を打たれた。
目が覚めるとまた注射を打たれ、気づいた時は、黒く汚れた男たちが覗き込んでいた。
「ここは、どこだ?」
そこへ、男がやってきて一枚の紙きれを渡された。そこには、GPSが組み込まれた貞操帯が装着されていること。ここがレアアースの採掘で有名なマウンテン・パス鉱山採掘場でも特別な者だけが働く場所であること。保険料の支払いが終わるまで働くこと。が記されていたがその期間は明記されていなかった。
「わぁ~」
労働を拒否した被告人は、角膜や臓器を摘出され、それを売られ保険料を支払うことになる。そのあとは、飢えた巨漢の大型豚の餌になる運命にあった。
彼が居なくなって一ヶ月程して麻衣子のもとに一通の手紙が届いた。差出人も消印もない黒い封筒の中には、契約完了のお知らせとあり、今後、生涯、彼に出会わないことを保証します、とだけあった。そして、読み終えれば、嫌な思い出と共に焼却するように記されてあった。
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