植物転生・前世で人類に滅ぼされたが今世では人として生きてみる
七扇ナギ
プロローグ
ただ浮かんでいる。地中に根を生やしている。それだけのことだった。
意識などほとんどなく、自覚していたことといえば、生き残る為に根を伸ばす。
本能的な衝動。それだけだった。
「植物に意識はあるのか」と議論されることがたまにあるが、答えなど見つかるはずもない。
何故なら生前植物だった俺自身、前世の記憶などほとんどないのだから。
くどいかもしれないが、前世の記憶、かろうじて思い出せる意識は本能のみ。
生きるために根を生やし、死なないために再生する。
それでも死んでしまった、というよりは人間によって根絶やしにされたといったところなのだが。
自己紹介がまだだったな、俺の名前はナガエツルノゲイトウ。
どこにでも存在していた水生植物、水草だ。
何故どこにでもいるのか、そして文章が過去形なのかだって?
それはだね、繁殖力と再生力、そして環境適応力が高すぎて大体の地形で生息することができるからさ!
おまけに水草や雑草の天敵である塩すら効かないので海辺にも生息できる。
そうして生息地を拡大して行った結果、人間の不況を買ってしまったようでね。完全に駆逐されてしまったってわけよ。
いや、参ったね。重機で周辺を根っこごと掘り起こされて、葉のかけらも残さない為に1000人以上の市民を動員して大規模お掃除するなんて。
おかげで陸地には根っこのカケラも残らなかったよ。
水辺に行けば普通に網で掬い上げられるし、ネットを水路に挟み込むことでまたもや葉っぱのカケラを見逃さずに駆除しに来るんだもん。
最後は孤独に海を漂っていたところを海上自衛隊に発見されてしまってね。
彼らの胃袋を満たして終わった植物生だよ。それにしてもまさか自分の茎と葉っぱが食べられるとは……
もし可能なら自分でも食べてみたいところだな。まぁもう絶滅したんだけどね。
で、そんなこんなで絶滅してからある異変に気付いてね。
目が覚めた、といって理解してもらえるのかな?
よく考えて欲しい。
いきなり植物が自分の絶滅の経緯を説明し出した。それどころか自己紹介し出す始末。
え?ラノベなんだからそれくらいあり得るだろって?ちょっと黙れ。
まぁつまり何が言いたいかと言うと、植物であるにもかかわらず、目が覚めたって感覚を覚えたのさ。眼球なんてないのにだぜ?
さらに驚いたことに思考まで可能。目の前の存在について疑問を抱いたのだ。
一体全体何が起こっているのか、この体は動かせたところで何ができるのか、何が何だかわからずにいたところに目の前の存在が話しかけたきた……
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