第28話 ジャンヌ華の叫びは、意識世界中に反響した!
ジリリリリリリリーーーー!!!!
俺の意識内の警報装置が作動した。
何事か……
どうやら、ジャンヌ華が、とうとう意識転送装置のボタンを押したらしい。
ジャンヌ華は、たちまち俺の自由世界に戻ってきた。
「えぐ……えぐ……」と鳴いている……
一体、何があったのだろうか……
どうやら、物質世界の支配者たちが、戦争というものをおっぱじめたらしい。
しかも、聞いてみると、他国との戦争ではなく、世界の権力者と民衆たちとの戦争がはじまったのだという。
なぜに、そんなことが……と俺は驚く。
国同士の戦争であれば、まだわかるのだが、世界丸ごと監視社会にしようと自由を愛する民衆全体を弾圧しはじめたという。
とんでもないことをしやがるなと思う。
なんと世界的な伝染病が流行しているように見せかけて、世界中の民衆たちに毒を接種しようとしたらしい。
自由を愛する民衆たちは、それを見抜き、大規模なデモをはじめた。
そのデモを警察権力を使って、軍隊まで出動させて、弾圧したらしい。
えぐ……えぐ……と泣いていたのは、催涙弾をくらったせいだという。
本当なのか、強がっているのか、よくわからないが「もうこんな世界嫌!!!」と強く思ったことだけは確かだ。
そうでなければ、意識自動転送の魔法具は発動しないからだ。
ジャンヌ華の帰還によって、世界のメイン電源のコンセントの三分の一が抜かれることになった。
まだ三分の二残っているので、世界はまだ消滅しないが、危ない状態になった。
こうした状況ともなれば、いつでも世界が消滅してしまう可能性がある。
大阪太郎たちは、どうしているのだろうか……
俺は監視カメラでどうなっているかを確認した。
そこには、おびただしい人たちが、毒の摂取で倒れてゆく映像が示されていた。
しかし、そうした場面を世界支配者たちは、情報統制をしてできるだけ民衆に見せないようにしていた。
ひどいことをしやがるな……と思う。
さらに、その毒には電波で操作できる毒なども含まれていて、毒効果を遠隔操作できるようになっていた。
強い電波を照射すれば、即死し、弱い電波であれば、病気になり、ある特定の周波数の電波では、民衆たちを操り人形のように操作できるようになっていた。
とんでもないものを生み出しやがったなと思う。
なんと、何十年もかけて研究開発してきたらしい。
お前ら、もっと他にやることないのか……
そんなことをしたがる欲望を消す薬でも開発すりゃあいいだろう……などと思う。
せっかく、そうしたアドバイスもしてやっていたのに、何やらかしてんだよ……と思う。
ジャンヌ華は、「消え失せろ、くそ野郎ども!!!」などと普段言わないような汚い言葉を投げつけている。
この自由世界からは、物質世界の支配者の動向が監視カメラで見えるので、支配者たちのしていることの全てをしっかりと見てしまったのだ。
そりゃ、怒りたくもなるだろうと、慰める言葉も出てこない。
なるほど、こうして世界消滅の引き金が引かれたのか……と思い当たる。
華の言葉は、時空を超えてあらゆる意識たちの心の中に反響する……
それは、支配者たち自身やその家族や仲間や従者たちの意識の中にも反響してゆく……
そしてその反響を抑圧すればするほど、その反響は増幅されてゆく……
本気の思いは、時空をも超える。
そしてすぐに効果を生じなくても、時間差でブーメランになって作用する。
大阪太郎や博多二郎も、その反響を受け取っていた。
どこぞのおじさんやおばさんなどもその反響を無意識で受け取っていた。
会社の社長たちも、表向きは支配者に従いながらも、その反響を受け取っていた。
軍隊や警察の者たちも、民衆を弾圧する仕事をしながらも、その反響を受け取っていた。
さらには、支配者たちの子供や家族などまで、その反響を受け取っていた。
支配者たちも、また、その反響を受け取っていた。
だが、彼らのほとんどは、それに気づいてすらいなかった。
その反響は、無意識の海の底を通じて、あらゆる意識たちの心の中に増幅され続けた。
「くそ野郎ども!消え失せろ!」
ジャンヌ華の叫びは、意識世界中に反響した。
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