公爵令嬢の婚約者
よしの
プロローグ
俺は光の勇者
そして今、俺の前に、女神クローリスが神々しい微笑と共に、再び現れた…。
「中田 真一さん、世界を救って頂き、ありがとうございました。
感謝の気持ちを込めて、貴方に三つの選択を与えます。
一つ、新しい世界に赴き、勇者として世界を救う。
二つ、救った世界でこのまま生活する。
三つ、記憶を持ったまま、別の世界に転生する。
以上です、ゆっくりお考えになって決めてください」
女神クローリスはそれだけ言うと、慈愛に満ちた微笑を浮かべながら、俺の答えを待ってくれていた。
なるほど、世界を救ったご褒美と言うやつだな。
よく考えて答えを出そう…。
一つ目は、また勇者として別の世界を救うのか…。
今まで光の勇者として楽しく過ごして行けたが、それ以外の事を楽しめなかった。
また同じ事を繰り返すと言うのも面白くないし、戦うのに疲れたって感じだ…。
一つ目は却下だ。
二つ目は、今救った世界で生活を続けるか…。
魔王も邪神も倒した今、俺がこの世界で最強なのは間違いない。
これだけの力を持っていて、戦う相手が居ないと言うのはつまらないよな…。
ここまで、戦いに明け暮れていたから、特に親しくしていた人達はいない。
一緒に冒険した仲間達はいるが、俺が勇者だと言う事もあって、一歩引いた付き合いだったんだよな…。
しかし、平和になった世界で、恋人でも見つけて、幸せに暮らすと言うのも悪くは無いか…。
一応保留だな。
三つ目は、別の世界に、記憶を持ったまま転生だったよな。
勇者として鍛えられた体では無くなるのは、惜しい気もする。
しかし、それはまた鍛え治せば良いだけの話だな。
前回は転移でこの世界に来たのだけれど、転生も悪くないような気もする。
転生、つまり若返る!この利点は大きいのでは無いだろうか?
問題は、転生先の世界がどの様になっているのかだよな。
魔法の楽しさを知った今となっては、元居た日本や、科学技術が進んでいる世界には興味がない。
転生先を選べるのか、聞いて見た方がよさそうだ。
「女神様、三つ目の、転生先の世界を選ぶことが可能でしょうか?」
「はい、中田 真一さんが、希望される世界にお送りいたします」
なるほど。
転生先を選べると言うのであれば、魅力的だな。
平和なこの世界で余生を過ごすか、未知の転生先に希望を抱くか…。
うーむ…。
俺はこの世界で勇者として、剣と魔法を駆使して戦って来た。
と言っても、剣が主だったため、魔法は補助的な感じでしか使っていない。
もっと魔法を使いたい、と言うのが今の気持ちだ。
となると、この世界より、新たな世界の方が楽しめるのでは無いだろうか?
それに、強敵と戦うスリリングは味わったから、今はゆっくりと過ごしたいと言うのが正直な気持ちだ。
そうだな!
三つ目を選ぶとしよう!
「女神様、三つ目に決めました!
俺は、もっと魔法を使って見たいと思いますので、魔法が使える世界に転生させてください!
お願いします!」
「はい、今から新しい世界にお送りしますので、目を瞑ってお待ちください」
女神クローリスの美しい顔を記憶に収めてから、ゆっくりと目を閉じた…。
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