第51話
壇上では刹那が笑顔で右手を高々と上げて
「じゃあ行きますね? 最初はグー! ジャンケン……」
刹那が出した右手は " チョキ "
会場内は喜びの声と悲痛な叫びが半々。
「この調子ならいけんじゃない? このままライブチケットをGETするよ!」
「何故!? 何故に俺はあの時パーを出してしまったんだ!?」
等の声があちらこちらから聞こえてくる。
「負けた人はお席に座って下さいね~! それでは次行きま~す! 最初はグー! ジャンケン……」
右手をリズミカルに振りながら刹那が次に出したのは " パー "
刹那の出した手を確認した人達はまた喜びの声と悲痛な声をあげた。
今の段階で全体の1/3の人しかその場に立っていない。後の2/3は自席で項垂れたり嘆いたりしている。
「あっと少し、あっと少し♪」
「もう少しでライブチケットGET♪ 頑張れ私の運!」
「……神は死んだ…」
「……昔からジャンケン弱いんだよな俺」
刹那は今の状況をざっと確認し
「今の状況を見ると、1/3の方々が残られています。 残られた皆様方頑張って下さいね♪ じゃあ次行きますね~! 最初はグー! ジャンケン……」
かなりノリノリでジャンケンをやってるな。まぁ刹那が楽しければそれで良いかな?
刹那が次に出したのは " パー "
刹那が出したパーの結果、その場に立っている人数は残り5名となった。
「残り後5名となりました! チケットは2枚ですので、3名様には残念ですが涙を飲んで戴く事になってしまいます」
刹那のその言葉を聞いた5名はやる気を滾らせ
「チケットをGETするのはこの私よ!」
「いいや、チケットは俺の物だ!」
「俺の為に皆負けてくれ! 頼むから!」
「私の娘の為に! お父さんは頑張るぞ!」
「……チケットは私の物……」
と相手を言葉で牽制している。
今の状況を見ていると改めて思うな。刹那の人気は半端ないって事を。
「じゃあ行きま~す! 最初はグー!」
リズミカルに右手を振り、次の手を出そうとしている刹那。
その手を見ながら闘志を漲らせる5名。
「ジャンケン……」
刹那が出したのは " グー "
「「!! やっ、やった~!」」
会場に2名の声が大きく響き渡る。 それと同時にその場に崩れ去る3名。
勝ち残ったのは、娘の為と言っていた中年の男性職員とボソボソ言っていた女性(多分職員の娘さん)だった。
「勝ち残った2名様おめでとうございます! こちらへ御越しください!」
刹那がマイクで2名に呼び掛ける。呼ばれた2名は嬉しそうに壇上へ向かう。
「おめでとうございます! ではライブチケットを進呈致します」
刹那は封筒からチケットを取り出して勝者2名に手渡しする。
チケットを貰ったお父さんはチケットを頭上に掲げ
「真希~! お父さんはやったぞ~!」
と叫んでいた。
もう1人の勝者である女性は、チケットを胸に抱えて
「やった! やった! これで刹那ちゃんに会いに行ける♪ ……ってあれ?」
刹那の顔を見た瞬間、女性は何かに気付いたみたいな表情を見せて
「も、ももも、もしかして……! 貴女」
すると刹那がその女性の口に人差し指を当てて、ニッコリと微笑みながら
「……内緒ですよ♪」
と囁いた。
刹那の言葉を聞いて女性は興奮していたが、何か事情があるのだろうと察したらしくすぐに口を告ぐんでくれた。
「これで私からの余興を終了したいと思います! 皆様ご参加誠にありがとうございました!」
刹那はそう言って会場内の全員に深々と頭を下げる。
会場内からは惜しみ無い拍手が刹那に贈られる。
刹那は満足した顔で壇上を降りて俺の元に帰ってきた。
「圭介さん! どうでしたか?」
嬉しそうに俺に意見を聞いてくる刹那。
「良かったと思うぞ。皆楽しめていたと思うし」
俺は刹那の頭を撫でながら感想を述べた。
「えへへ♥️ 圭介さんにそう言って貰えると頑張った甲斐がありました♥️」
へにゃっと顔を緩ませ笑う刹那。 やっぱり俺の彼女は世界一可愛いと思ってしまう。
すると篠宮さんが
「感謝しなさいよ刹那。いつも貴女のフォローをするのは大変なんだからね?」
「分かってますって。感謝してますよ篠宮さん♪」
そう言って2人は笑い合う。 なんだかんだ言って仲が良いよなこの2人。
「フォローが出来る雪菜さん……素敵だ」
と篠宮さんの隣で修治さんが顔をほんのり赤く染めて微笑んでいた。
こうして刹那主宰のジャンケン大会は無事に終了した。
……いや、一応無事(?)だったと言った方が良いのかも知れない。
あの後チケットをGETした女性が刹那の所にやって来て、こっそりとだが自分のハンカチとサインペンを刹那に渡して " 大ファンです! サインを下さい! " と小声でお願いしてきた。 そんなお願いにも刹那は笑顔で応じている。流石一流芸能人は違うなと感心してしまった。
それから和やかに宴会は進み、終わりを迎える頃には会場の皆はベロベロに酔っ払っていた。 俺もその中の1人だ。 俺は刹那に肩を借りながら会場を後にしようとしていた。
「も~っ圭介さんてば。またこんなになるまで飲んでしまって~。ベッドまで連れていくの大変なんですからね!」
「うにゃ……御迷惑おかけしましゅ……」
刹那は少し怒った感じの声を出していたが、顔は何故かニヤけていた様な気がした。
そんな中……。
「あ、あの! 雪菜さん! も、もし宜しければ連絡先の交換をして戴けませんか!」
「わ、私で良ければ是非! よ、宜しくお願いいたします!」
篠宮さんと修治さんがお互いの連絡先を真っ赤な顔をしながら交換していた。
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