第49話

ビンゴ大会はいつもより増してかなりの盛り上がりをみせていた。 そりゃそうだろう。今回の目玉賞品に刹那のライブチケットが入っているからな。


次々とビンゴになる職員達。 皆意気込んで壇上へ。


" 日本酒5本 "


" J○B ギフト券 10000円分 "


" ダ○ソンの掃除機 " 


等々の景品が当たる。 


そして次の職員の時に


「っ! おめでとうございます~!!」


司会者の大きな声が会場に響き渡る。 お? もしかして刹那のライブチケットが当たったのか?


景品は何なのか。発表されるのを固唾を飲んで待つ職員。


「40インチテレビが当たりました! おめでとうございます~!!」


テレビが当たった事を知った職員はあからさまにガッカリした様子を見せる。 普通なら大喜びの筈なんだけどな。


テレビが当たった職員は肩を落としたまま壇上を降りていった。 ……背中に哀愁を感じる。


「……さ、さて気を取り直して。次行きま~す!」


司会者が大きな声で次のルーレットを回す。


続々と豪華賞品がビンゴで当たっていく。


" オーブンレンジ "


" 高級お菓子詰め合わせ 10000円分 "


" 一流ブランドの香水 "


等々。


そして次は総務部長がビンゴになった。 総務部長は


「チケットが当たったら、孫にプレゼントするんだ♪」


と爺馬鹿ぶり全開で、笑顔で壇上へ上がって行った。


司会者がクジの入った箱を総務部長に差し出して


「さぁ部長、張り切ってどうぞ!」


総務部長は箱の中に手を入れ、ゴソゴソとクジをかき回し1枚引いた。


「8番ですね! おめでとうございます~!! カーナビゲーションGETです!」


総務部長は自分が思っていたのと違うのか、苦笑いをしていた。 それもその筈、総務部長は車を持っていない。 通勤は電車通勤で車を運転する必要がないから買わなかったとの事らしい。免許は所持しているみたいだが。


くそ~! 俺がナビ欲しかったなぁ。親父にプレゼントするつもりだったのに。(今のうちに親父にゴマをすっておかないと。結婚資金が……)


まぁ失くなってしまったものは仕方がない。 次に期待しようか。


手元のビンゴカードを見ると、おや? 俺のカードが後1つ開けばビンゴじゃないか。 もしかしたら次くらいにはいけるかも?


司会者がビンゴマシーンを回し、次に出た数字は " 35 " だった。


" 35 " ? お、当たったぞ! 


俺はビンゴカードの最後の1つを開けて


「ビンゴです!」


と宣言しその場に立ち上がった。


「圭介さんおめでとうございます♥️ 景品は何ですかね~♪ 楽しみです♥️」


隣で刹那が俺を見ながら喜んで手を叩いていた。


俺は刹那に見送られながら壇上へ。


「さぁクジを引いて下さい♪」


司会者に促され、俺はクジの入った箱に手を入れる。


ゴソゴソ……。 何か良い物当たります様に……!


…これだ!


俺は沢山あるクジの中から一枚のクジを掴み、勢いよく箱から引き出した。


クジに書いてあった数字は " 2 " だった。


これは期待出来そうな数字だな! だって一桁代だよ?


司会者は数字を確認し


「おめでとうございます~! 高級腕時計が当たりました~!」


司会者は紙袋(Tiffanyと書いてある)を俺に差し出してきた。 俺はありがたく紙袋を受け取り自分の席に戻った。


俺は紙袋の中から時計を取り出した。 あれ? これレディースだな? スマホを取り出し検索をした。


俺が貰った時計は158000円の時計だった。 ……大丈夫かうちの会社? こんな大盤振る舞いしても……。


まぁ社長がOK出しているんだから大丈夫なのだろう。


思ったのだが、この時計って刹那のライブチケットより高額だろ。確実に。


とにかくこの時計は刹那にあげよう。 レディースだから俺は使えないし。


すると刹那が俺の手元を覗き込み


「うわぁ、可愛い時計ですね♥️ この時計が当たったんですか?」


「そうだよ。刹那、この時計は刹那にあげるよ。使って」


俺は刹那の右手を取り、刹那の手首に腕時計を付けた。


「えっ!? 良いんですか!?」


「全然良いよ。……やっぱり刹那に良く似合うな」


俺は刹那に笑顔でそう言った。


刹那は嬉しそうに自分の右手首にある時計を眺めた後


「圭介さんありがとうございます♥️ ウチ大切にしますね♥️ 何だか最近圭介さんに宝物を貰ってばかりの様な気がします♥️」


「俺が好きで刹那にプレゼントしているだけだから」


「ふふっ。ウチこんなに幸せで良いんでしょうか?」


そう思ってくれるだけで俺は満足だよ。


そんな俺達のやり取りを他の3人は生暖かい目で見ていた。


さてビンゴ大会も佳境に入り、景品は残り後わずかとなった。 残っているのは、目玉商品のホテルのスィートルームの宿泊券と刹那のライブチケット、あと家電が数点だ。


司会者がビンゴのルーレットを回す。 出た数字は


" 1 "


すると刹那が


「当たりました! 私ビンゴです!」


とはしゃぎながらその場に立ち上がった。


「お、刹那ビンゴか。おめでとう!」


「ありがとうございます♪ じゃあウチ行ってきますね♪」


刹那は嬉しそうに壇上に向かう。


「おめでとうございます~! 後景品はわずかですよ! 残りわずかの中の2つはスペシャルな景品です! 貴女は運が良いですね」


「ありがとうございます!」


「では運命のクジ引き どうぞ!」


テンション高めの司会者が刹那に箱を差し出してくる。 刹那は " えいっ! " と気合いと共に箱に手を入れてクジを引き出した。


クジに書いてあった数字は


" 1 "


「っ! おめでとうございます~!! 由井刹那 ドームライブチケットが当たりました~!!」


司会者が高らかに宣言した後、会場は拍手の嵐に包まれた。


しかし刹那は苦笑いを浮かべ困っていた。 そりゃそうだろう。 だって景品は自分のライブチケットなのだから。

















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