第6話 ニードルガン


 ジューネスティーンが、ニードルガンを開発するにあたっては、ジェスティエンという、ギルド本部お抱えの冒険者に出会った事が、キッカケとなる。


 ジューネスティーンの転移前現れた、ジェスティエンは、火薬の開発を完成させたことで、銃を作った。


 銃は、強力で、遠距離から魔物を仕留める事ができる。


 ジューネスティーンも話に聞いていたのだが、雲の上の存在の人の話程度に思っていた。




 そんな、ジューネスティーンが、ライフル銃と出会ったのは、ジェスティエンに助けられた時になる。


 ジューネスティーンが王国で駆け出し冒険者だった時に、ギルドお抱えのジェスティエンが、使っている銃を見て、ニードルガンの原型を作ったのである。


 ただ、ニードルガンを作るに至るまでには、大きな障害が有った。


 ジェスティエンが、開発した火薬は、ギルドが管理しているので、他の冒険者に、銃の弾丸も火薬も渡る事は無かったのだ。




 ジェスティエンは、一般冒険者と異なり、剣を使うのでは無く背中に背負ったライフルと腰につけた拳銃で魔物を倒していた。


 左の腰には、一本サーベルを下げているが、実際の戦闘には使う事は殆ど無い。


 ジェスティエンは、開発した火薬の生産を、ギルドが引き受ける代わりに、お抱えの冒険者となって、銃弾の製造をギルド本部が行なっている。


 その銃弾の補充が有るので、ジェスティエンは、ギルド本部の有る、南の王国を中心に、冒険者の活動を行なっている。




 ジェスティエンとの出会いは、ジューネスティーンが駆け出し冒険者だった頃、王都のギルド高等学校に通うための費用を捻出するためと、シュレイノリアの付与魔法によって、強くなったと思って、少し無理をして強い魔物のエリアに赴くが、そのエリアの魔物を侮っていた為、倒しきれずにピンチになってしまった。


 その際、たまたま、帰還途中のジェスティエンのパーティーが、魔物に苦戦しているジューネスティーン達を見つけてくれて助けられた。


 そして、ジェスティエンの使用していた銃を初めて見て、その威力に驚き、銃に興味を持ったのだ。




 助けてもらった後に合同で休憩をした時に、ジェスティエンに銃の事を教えてもらい、試し撃ちをさせてもらったので、銃の威力や有効射程などのデータを得ることができた。




 その際に、弾丸についての説明を受けたが、火薬の製造法については教えてもらえなかった。


 ただ、弾丸は、ギルド本部に作ってもらっている事を知る。


 ジェスティエンとすれば、子供に、化学的な話や、機械的な話には、ついてこれないだろうと思ったのか、かなり、ジューネスティーンの質問に細かく説明してくれたのだ。


 その際に、専門用語が混じっていたので、そういった専門用語を入れて話せば話についてこれないだろうと、ジェスティエンは、思ったのだろう。


 有識者が、一般人に説明する際に、自分の方が知識をもっていると思わせる方法を取ったのだろうが、ジューネスティーンは、わからない単語は、単語として話の内容を暗記する様に聞いていた。


 分からない内容でも、その内容を覚えていれば、何かのタイミングでその単語の意味がわかる時がくる。


 そうやって、分からない部分は丸暗記する様に聞いていたのだ。




 ジューネスティーンは、話を聞き薬莢の構造が分かれば、後は火薬を手に入れれて、弾丸を作る事ができると思ったのだが、ジェスティエンは薬莢を持ち帰ってしまったので、薬莢の構造を確認することはできなかった。




 ジューネスティーンは、ジェスティエンと別れた後に、銃に付いて色々と考察をしている。


 戦闘時に関して剣では、近接戦闘となってしまう為、魔物から攻撃を受ける事もあるのだが、銃ならば、離れた的に致命傷を与えられるので、魔物の攻撃範囲外から有効な攻撃ができると考えた。


 また、ライフル銃なら、条件にもよるが、魔物に気づかれる前に、攻撃することも可能になるので、遠距離で仕留め損ねたとしても、こちらに向かってくる間に、数回の攻撃が可能となることから、遠くの魔物を撃ち損じたとしても、近寄られる前に、再度の攻撃で仕留めらると考えている。


 魔法や弓での攻撃でも遠距離攻撃は可能だが、銃は撃ち出した弾丸が目にも止まらぬ速さで突き進むので、目視して避ける様な事はできないなら、アドバンテージは高いと考えたのだ。




 しかし、ジェスティエンと別れた後、銃の開発の為に、火薬か銃弾を調達しようと、始まりの村のギルドで相談してみたが、ギルド本部管轄の為なのか、始まりの村のギルドまで、情報は入ってこないらしく、そんなものは知らないと断られた。




 火薬を調達する事が不可能な事から、ジューネスティーンは、一旦、銃の開発を諦めるが、シュレイノリアが魔法に優れていた事が幸いして、魔法によって、火薬の代わりをさせる事を提案される。


 火薬の爆発で弾丸を撃ち出すなら、火薬の代わりに、魔法で爆発を作り、弾丸を撃ち出すと、提案されて、その為の方法を検討する。




 弾丸内部に魔法紋を作成して、魔法紋を発動させる事によって、弾丸内部で爆発させる。


 魔法紋によって、薬莢の先端の弾を撃ち出す方法を、シュレイノリアが提案してきた。


 ただ、その魔法紋を、最初は小さく描く方法が難しかった事で、弾丸の最小サイズが決まってしまった。


 その結果、直径2.5cmと大きな弾丸になってしまった。


 ジェスティエンに、見せてもらった銃弾の2倍以上、下手をすると3倍以上の直径になってしまったのだ。




 ただ、魔法紋を発動させるだけなので、撃鉄・引金などの複雑な構造は不要を分かると、弾丸を撃った後に次の弾丸を装填する部分だけを考えれば良い事に気がつく。


 撃ち出した時の、反動を利用してその力で。撃ち出された後の薬莢を排出し、次弾を装填する。


 そこまでは考えられたが、その部分の構造を考える必要があったので、連発は保留にしている。




 初めて作った銃は、爆発させる魔法紋のサイズで、弾丸のサイズが決まってしまったので、そのサイズに合わせて銃身を作った。


 その結果、口径が大きくなってしまい、銃の反動とライフリングマークの重要性に気が付かなかったため、射線が真直ぐにならなかった。


(思ったところに命中出来ない。)


 何度も試してみたが、その都度違う方向に流れて狙った的に当たらないため、当たらない弾を打ち出す銃では実用化は無理と考えた。


 その理由が分からないまま、前に進む事ができないでいた。


 銃について行き詰まってしまった時、たまたま、シュレイノリアが部屋で自分のローブに刺繍をしているところを見ていると、針が何度も何度も布の表と裏を行ったり来たりして徐々に模様になっていくのを見て、一度に何本の針を同時に縫い込んでいけば早く終わると、ジューネスティーンは思ったのだ。


 その瞬間に、銃の弾丸を束ねて撃ち出す事を思いつく。




 数個の弾を同時に発射すれば、一つ一つが違う方向に進んでも、その中の何発かが的に的中すれば良い。


 一度に打ち出す弾丸が一つではなく、複数個なら、その内のどれかが標的に当たれば良いと考えた。




 ジェスティエンの弾丸は、直径1cmかもう少し小さかったが、その程度の大きさで効果が有るなら、自分達の作った銃弾は、その倍以上ある。


 弾が小さくなったとしても撃ち出す速度が速ければ、運動エネルギーは高くなる。


 束ねる数が少なければ、場合によっては、同じ方向に進む可能性が出るのでは無いかと思い、もっと細く、シュレイノリアの刺繍針の様な細さにして沢山の数にする。


 撃ち出す数が多ければ多いほど射線が曲がってしまってもその中の数本でも当たれば良い。


 そこから針を束ねて撃ち出す事を閃く。




 一度に撃ち出す弾を多する。


(撃つ度に全く違う方向に進むなら、打ち出す弾の数を増やせば、その中のどれかが当たる。 数十個の弾丸を一度に撃てば、どれかは当る)


 複数の弾丸なら、その中の数本が真っ直ぐ進まなくても、その内の何本かが、標的に当たれば良いと考える。


 そして弾は可能な限り細くする事で、空気抵抗も減って当たれば目標物を突き抜ける。


  


 その考えから、ジューネスティーンは、ニードルガンを製作したのだ。


 実際に製造したニードルガンは、近距離であれば、細い針が高速で撃ち出されたため、貫通力が高く、広がった針が的を貫通して、粉々にしてしまった。


 破壊力は、近距離限定で高いものとなった。

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