第104話 現成公案その三 ありのままを知れ

 「仏道もとより豊倹ほうけんより跳出ちょうしゅつせるゆゑに、生滅しょうめつあり、迷悟あり、生仏しょうぶつあり。」

 仏道というのは今この瞬間瞬間を一生懸命に生きるということであり、その瞬間には豊かにあるとか少ししかないという有、無というようなものは超越している。そしてそのように瞬間瞬間を一生懸命生きている中では生もあるし死もある、迷いもあるし悟るということもある、一般の人々(衆生)もいるし真実・真理を実現・実証した仏という人々もいるのだ。

 仏教は、今この瞬間をどのように生きればよいか、大宇宙の真実・真理に従って生きるためにはどうすればよいかを教えるものだ。死んだら極楽に行けるとか、幸運が訪れるとか、不幸を避けられるとかそんな訳のわからない世迷言は仏教とは全く関係が無い。

 今この現実の中で、この瞬間を必死に生きている中では、生や死と向かい合わなければならないし、悩み苦しむこともあるし、ああそうかと気付くこともある、様々な人々が現実にいることと向き合うことになる。

 ごく当たり前のことだけれど、これは頭でいくら考えても、いくらたくさん本を読んでもわかることではない。坐禅した身心でない限り絶対にわからない。

 今の世の中、当たり前のことがわからなくなっているように見えて仕方ない。

 坐禅しましょう。

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