第16話 記憶とは残酷だから

日常で、特に散歩している時などに彼を思い出している。

どんな表情だったとか

どんなことをしてきたかとか

付きあってた頃よりも

別れた後のほうが

その記憶は美しく

思い出すたびに心が温まる

しかしもう彼と別れだいぶ月日は経った。

記憶とはなぜこうも残酷なまでに

色んな思い出を消し去っていくのか

最近は記憶も曖昧なことが多い

彼の表情も僅かな記憶を頼りに

半ば自分の妄想かもしれない。

もう肌に触れることもないから

肌の感触も匂いも忘れかけている

それが時折、とても寂しく

でもどうにもならないから

涙を流す前に

また憎しみで感情をコントロールしている

私が愛している人は

私が憎しみを抱く人

優しい自分と

小悪な自分で

私は今日も道をひたすら真っすぐ進む。

思い出せない苛立ちと

もうこのまま忘れてしまいたい気持ちと

散歩なのに毎回複雑な感情の騒ぎに

私は毎回しんどくなる瞬間があるけど

歩くことによって

前に進むことによって

歩き終わりに近づくと

心が無になるようで

私は散歩がいつしか好きになった。

毎日毎日忘れゆく記憶と共に

歩いていこう

いつしか何も思い出せなくなるのかな。

自然な時の流れに任せてみよう。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る