中国駐在:喜劇と悲劇の物語

風杜歌男(かざもりうたおのこ)

第一章 中国野生動物園

第一話 ペットも連れて行ける野生動物園

 中国には各地に野生動物園、いわゆるサファリパークが存在する。大概の野生動物園にはパンダがいるので、日本人観光客にとっては、パンダを見るだけで価値はあるのだが、、、。

 

 江蘇省常州市にある常州野生動物園。もちろんここにもパンダはいる。

 ある日、蘇州にいる友人が、同棲をしている中国人の彼女とペットのトイプードル”あいちゃん”を連れて常州野生動物園へ遊びに行くことになった。車で高速道路を使えば90分ほどだ。


 常州野生動物園は自家用車でサファリパークへ入ることが出来る。

 友人たちの車は猛獣ゾーンに入った。


「虎がいるよ! たくさんいる!」

「ライオンもいるよ!」

 友人と彼女は、猛獣の数に驚き、子供のようにはしゃいでいた。

 それを見ていたペットの”あいちゃん”も興奮し出したのか、ワンワンと吠え出した。

 あまりにも吠えるので、友人の彼女は窓を少し開け、”あいちゃん”の顔を出してあげようとした。


 窓が開いたのに気がついた”あいちゃん”は、彼女に抱っこから飛び上がり、少し開いた窓に顔を出した。


「あっ!」


 と彼女が発した瞬間、”あいちゃん”は、スルスルと彼女の手を離れ、開いた窓から外へ飛び出してしまった。


 飛び出した”あいちゃん”は、すごい勢いで走り出し、林の中へ消えて行ってしまった。彼女は”あいちゃん”を追いかけようと、ドアを開けようとしたが、少し向こうには虎がいる。とても怖くて開けることが出来ない。


「ワンワンワン! ワンワンワン!」


 まだ”あいちゃん”は吠えている。


 虎がそれに気付き、”あいちゃん”が入って行った林の中へ!


「ワンワンワン! ワンワンワン!」


「ワンワンワン! ワンワンワン!」


「キャンキャンキャン! キャンキャンキャン!」


「キャイ〜ン! キャイ〜ン! キャイ〜ン!」


「・・・・・」


「・・・・・」


”あいちゃん”が戻って来ることはなかった。

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