デビュー配信に向けて

第31話 デビュー配信に向けて 1

デビュー配信。それは世の中のVtuberが3D配信や誕生日配信と同じく大事にしなければならない大切な配信。俺はめちゃくちゃ緊張していた。なぜならコメ欄が罵詈雑言で埋まっているからだ。


コメ欄

『男性VTuberはいらん』

『調子に乗りすぎ』

『Streamerにしとけ』

『お前も引退しろ』

『考えが子供』

『VTuber業界に来んな』


……いや、うん。マジで想像以上。光源氏やらかして俺にも来るだろうなぁ〜とは思ってたけど予想以上。てかね、第3部隊のメンバー+コスプレガールズ+女子プロがめちゃくちゃ俺を推しまくったのだ。例えばYumi『第3部隊隊長だけはキタイしてる』とか、Kagurq『第3部隊隊長は私の最推しです!!』とか、Reefer『第3部隊隊長の配信だけは見るかな……』とか、Rumi『私の子が一番!!』とか副隊長『隊長とは……その、一緒の家に……』とか、隊員『隊長マジでクソかっこいいから初配信軽く見るだけ見た方がいい!!この前もご飯奢ってもらった!!』と、マジで色々と言われ、我が友人たちにはRutio『え?第3部隊隊長?アイツ裏でヤりまくってるよ』とか、Jade『あれは遊び道具にしていいよ』とか、Ozu『俺と一緒に燃やすか!!』とか、お前ら何やってんねん!!俺の配信人生終わらせに来てんだろうが!!特にRutioやばすぎるだろ!!なに?裏で散々ヤッてる?確かに菜璃とはヤッてるかもだけど誤解生みまくるだろうが!!マジで俺行けるのか?これ流石にやばくないか?まぁ、ここまでの状況になる少し前、正確には1週間前に戻ろう。

あれは、山江和歌が家に突撃してきた日だった。

UNの世界大会があり、俺たち第3部隊の顔合わせ会議はデビュー配信ギリギリと言うことになり、まぁ、光源氏対策もあるんだろうが俺は菜璃と一緒に引っ越しの片付けをしていた。

「ふぅ、ようやく整理できたわ。菜璃は大丈夫?」

「うん。一応整理できた。それにしてもここも広いね」

菜璃が家を見渡しながら言う。Mickeyに用意してもらったこの一軒家はマンションの最上階や城よりは下かもしれないが思ってた以上に広く大きかった。

「まぁ、よくこんな家をMickeyは紹介してくれたな……」

「友情パワーだね!!」

「友情パワーでこんな家が貰えるなら俺は最高の友人を持ってるね……」

ピンポーン

インターホンがなる。

今話していた、どこぞのオーナーが何か祝いの品を持ってきたんだろうか?

「はい、こちら来島ですが……?」

ドアを開けるとそこには高校生くらいの女の子がいた。

「えっと……どちら様でしょうか?」

「あっ、こんにちは。山江和歌です。引っ越し祝いを持ってきました」

「あっ、ありがとうございます。えーと……」

「お久しぶりですね!!先輩!!」

この突撃女子は元気よく俺を先輩と呼んでくる。

先輩?俺の後輩にこんな可愛い子がいただろうか?

これでも記憶力は良い方だと思うんだが高校生に友人と呼べるような女性は居なかったはずだ。

「ええっと……」

「ん?空愛お客さん?えっと……なんで引っ越して早々知らない女が家に来るの?ねぇ、空愛?この子何?もしかして浮気?まだ1ヶ月半しか経ってないのに私に飽きたの?」

やばい。うちの彼女様がブチキレかけている。あっ、キレてるわこれ。目がマジだ。

「いや知らない。俺は菜璃以外抱いたことはない」

「じゃあ、この子は何?」

俺が必死に弁明しても彼女様の気は収まらないらしい。とにかくこの突撃女子が誰か思い出さなければ……。

「……えっと、山江和歌さんだっけ?前にどこかで会ったことあるかな?」

「え?もしかして覚えてないんですか?あんなに激しく父を説得して私に手取り足取り教えてくれたのに……」

???ちょっとまってくれませんかね?何故そこまで誤解を生む言い方をする?記憶に一切ないが?

「空愛?まだ私の親に会ったことないのに他の女の両親に挨拶してたの?」

「いや、マジで覚えがないんだが……」

ヤバイな、うちの彼女様の目付きがレベル上限突破して怖すぎる。今通っていった男の人ガチビビりしてたぞ。てか、こんな女見たことあるか?UNにこんな人居なかったはずだし。昔なにか、えー父親説得、父親説得……あっ。

「えっと、もしかしてだけど2年くらい前に勉強教えてた子?確かその子も山江和歌って名前だった気が……」

「あっ、ようやく思い出したんですね先輩。お久しぶりです。昔勉強教えてもらっていた山江和歌です。一応第3部隊の佐藤菜々を担当する事になってます。今日はMickeyさんから先輩の家聞いて来ちゃいました!!」

来ちゃいました!!じゃないんだが?てか、俺が昔、UNがスポンサーなしの時にどっかのお嬢様の家庭教師した事あったけどあの時のお嬢様はめちゃくちゃおとなしい大和撫子を具現化した様な子で今目の前にいる陽キャじゃなかったぞ?この2年くらいの間に何があったんだ……。ん?今ヤバいこと言わなかったか?第3部隊佐藤菜々を担当するとか……。

「えっと……今第3部隊佐藤菜々担当するって言った?」

「はい!!先輩、これからは上司としてお願いしますね!!」

「え?空愛この子がもう一人の大学生?めちゃくちゃ可愛い」

おっ、うちの菜璃様の機嫌が治った!?これが同僚効果か……いや、こっち見る視線は相変わらずキツイままやわ。

「えっと……綾間菜璃さんですよね?山江和歌です。よろしくおねがいします」

突撃女子は俺に対する態度とは打って変わってしっかりとした態度で菜璃と話す。

「あっ、こちらこそよろしくお願いします。気軽に菜璃って呼んで良いよ。同期になるんだし。いや、でも私の方が役職上になるのかな?」

「一応上司になるので菜璃さんって呼びますね!!それにしても先輩、良い彼女さん見つけましたね」

「ああ。最高の彼女様だ。てか、今日はどうして我が家に?」

菜璃が俺の彼女なの知ってるのね……だったら最初の誤解招く言い方やめとけや!!マジで菜璃の目つきやばかったぞ!!今もやばいけど!!

「いや、ただの引っ越し祝いです。あと副隊長いや、菜璃さんに会いたいなと思って。だって第3部隊で私以外の唯一の女性メンバーですし」

「はぁ……」

「よし、和歌ちゃん今から私とご飯食べに行こっか。空愛が何したのか聞きたいし」

「いや、俺は何もして……」

「分かりました!!でも、私そんなにお金……」

「良いよ、空愛が出してくれるって言ってるから。女子会に行こう!!」

「はい、分かりました」

「……」

マジで意味がわからない。俺は菜璃の出してきた手に財布から万札を数枚渡す。するとすぐに2人でどこに食べに行こっか!!と元気に喋りながら歩いて行った。菜璃さん行動力ありすぎじゃね?今の今まで引っ越しの整理してたが?それにしてもご飯って……もう1時やんけ。俺はどうやら引っ越しの整理に集中しすぎて時間を見ていなかったらしい。

……俺一人か。コンビニ弁当にするか。てか、あれがもう一人隊員か。俺VTuberやっていけるんかな?燃える気しかしないんだが。ワンちゃん光源氏よりも燃える説あるか?いや、大丈夫か。流石にJKに手を出すやつより燃えるわけ……あったんだなー。

いや、マジでびっくりよ。俺の方が燃えてるもん。それにやばいのが海外でも燃えてるってことね。日本飛び出して世界で燃えてますわ。いや、マジでどうすんねん。デビュー配信やれるのか?もはや低評価の嵐で泣きたいんだが?

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