第53話ミナリ見参3 ウルグインのダンジョンにぶっこみます

ダンジョンの入口の周りには様々な屋台なども建ち並んでいる


その中にはひと際目立つテントがあり、興味を惹かれたミナリはそこに立ち寄る


テントにかけられた暖簾をヒョイっとかき分け中頭だけを中に居れて除く



「何があるのかなーっと」



何も見当たらない・・商品すらない?机が3つほど並んでいるだけだ


「お兄さんここなにがあるの?」


「いらっしゃい、どんなガイドをお探しで?」


ひょろりとした男がにこやかに答えた


「ここは何売っている所なの?」



「お?姉さん初めてかい?ここはギルド直営、ダンジョン出張所さ。初めてダンジョンに挑む冒険者、観光する奴、そんな人にガイドを貸し出すのさ」


「へー。冒険者と観光でガイドは違うの?」


「違うな、観光ならほら、そこの子供達が遊び場になってる五層までを案内するぜ。冒険者なら、S級の冒険者がサポートしてくれる。初回費用はギルドもちだから気にしないで借りてってくれよ」


「んじゃ、お願いします。冒険者で!」


うん、情報収集にはギルドって良さそうだしダンジョンにも興味あるし

ここは一ついっちゃおう


「はいよ!」


そう言って男はテントの奥に行き待機していたと思われる二人を連れてきた


「女同士の方がいいだろ?」


そういって連れてきたのは女性冒険者だ


「はじめましてテレサです。剣士やってます」


テレサと名乗った女性は大柄な筋肉質な女性で、重そうな鎧を身に着けている


「私はモコ。魔法使いよ」


モコと名乗った彼女はいかにもなフードをかぶっていて、綺麗な杖を装備している

二人とも私より年下みたい・・


「テレサはSS級、モコはSSS級の冒険者だ。今日はギルド活動の一環で手伝ってくれている。ラッキーだぞ?」

ひょろりとした男はそう言った


「何がラッキーなの?」

ミナリはそのラッキーの意味がわからなかったので率直に聞いた


「そりゃ姉ちゃん、SSS級の冒険者が手伝ってくれるなんて早々あることじゃねえよ。SSS級の冒険者自体、100人くらいしかいないんだからな。そんなSSS級の紅一点、モコさんだ!」


「へぇー」

そんなに凄そうに見えないんだけど・・とは言えないよね。

でもまぁガイドだし大丈夫でしょ


ミナリは手を差し出して

「今日はよろしくお願いします。ミナリです、ダンジョンはまだ入ったことがないから色々教えてくださいね」

そう言って笑顔を向ける


テレサとモコも、よろしくといって一人づつ握手を交わした


「それじゃあ行きましょうか」

そう言ってテレサとモコは、ミナリの前を歩いてダンジョンに進んでいった

おいて行かれないようミナリは小走りでついて行く


「がんばれよー」

背中からギルドの男がそう言ってくれたのだった

ミナリは振り向き、満面の笑みで手を振って礼を伝えたー




----------




ダンジョンの入り口は巨大な石垣の門ができている。

左右には詰所のようなものが見えた。あれは冒険者とは別で衛兵が務めているらしい。

テレサが色々と教えてくれる


中に入ると、一層と呼ばれる場所は入り組んだ巨大迷路のような場所だったが、下層へ続く階段までその壁はすべてぶち抜いてあると言うことだった


二層も同じようなものだった。

そこは明るい割にひんやりとした空気が流れているのがわかる


三層に降りると、あたり一面に明かりが灯してあった


話によれば、三層から五層までは鉱物資源が豊富で、ドワーフが採掘しているということらしい。

それにここで寝起きもしているらしく、そこかしらに家があった

天井も上の階とはうって変わってものすごく高い・・10メートルくらいはあるんじゃないかと思う


「うわぁーすごいね。こんな洞窟入ったことないよ」


ミナリは素直に関心する

この段階で広く、そして深い洞窟など入った経験はない。

それどころかほぼ全てに人の手が入っており、信じられない年月の積み重ねがそうさせたのだと感じられる


「これはもう世界遺産とかそう言うレベルだね」


ミナリがそう言うと


「この5層までは安全だ。だが次の6層からがお待ちかねの真のダンジョン。気を抜かないでくれよ?ーそういえばミナリは剣士でいいのか?」


そういってテレサはミナリの腰にある剣を見る


「なかなかの一品のようだが」


その剣の鞘は真っ黒で細長いそして鍔があり・・柄には糸のような物が巻いてあった


「これですか?日本刀です」


「ニホントウ?なんだそれは」


「あー、私の故郷の剣ですね。刀(かたな)と言います」


そういってミナリはチャキっと刀を握って見せる


「ふむ、変わっている、細いな。」


「そりゃテレサさんの剣と比べたらダメでしょ!?」


テレサの剣はおよそ幅50センチ、長さ2mはあろうかという大剣だ

それを背に軽く背負っている。どういった戦い方をするのか気になる


「さて、ここからがモンスターも出てきちゃう6層だ、準備は良いか?」


「はい!」


ミナリはそう言って気合を入れなおす

そして師匠の教えを思い出すのだ


踏み入れた6層は天井はやや低く、1層と似た巨大迷路のような雰囲気があった

だが道そのものの広さは広く、動き回るには十分な広さが見て取れる

ここでも左右の壁にはうっすらと明りが灯っており、人工的な雰囲気に溢れている


ひんやりとした空気があたりに漂う


「このあたりをウロウロしてる冒険者もかなり減ってますね」


テレサが言った


「そうだね、今滞ってる階層って30層くらいじゃないの?」


モコがフードをばさりと取って杖をぶんぶんと振り回す


二人の話に寄れば、このダンジョンに挑んでいる冒険者の数はそりゃあ数え切れないらしい

当然だれかとすれ違うこともあるのだが、


進めば進むほど階層は広くなっていき、やがてバラバラになってすれ違いも稀になるほど広くなるとか


テレサとモコが先頭に立ち進んでいく

すると足をとめてミナリを見て言った


「早速モンスターのお出ましだ。戦ってみるか?」


二人の背中には巨大な猪のような・・・ウサギがいた・・

しかもその背後にも数匹の目が赤く輝いている


「シャドウラビット・・この階層で出現するモンスターだ。まぁ、こいつしか出ないといっても過言じゃないくらい出会うモンスターだ」


そうテレサが話していると

ザッシュッ


ウサギが一瞬踏み込んだと見えたら跳ねた!


「おっと、来るぞ!」


テレサが構えてウサギをその背の大剣で

ぐんっ

ドシャぁ!

叩き・・つぶした


そしてモコの背中に魔方陣が1つ浮かび上がる


「ふぁいあーぼーる」


モコが唱えた

杖の先から炎の玉が生まれシャドウラビットに襲い掛かるー

モコの生み出した火球は避けたラビットに向かって誘導されて直撃する


「さすがモコさんですね、ただのファイアーボールが凄まじい威力です」


え?そうなの?


「おだてないで、テレサ。コレ位普通よ」


ぷすぷすとこんがり焼け、大穴を空けたシャドウラビットが威力を物語っている


「さてっと、あと一匹倒してみる?」


ミナリを初心者と知るテレサが言った

テレサも初めてダンジョンに潜ったときを思い出している

シャドウラビットを、周りの人の助けを借りながらぼろぼろになりながら何とか倒したのを覚えている

きっと彼女ーミナリもここがスタートになる


倒せる位の実力はあるのだろうか?そんなことを思いながらミナリに道を空けた

その先には仲間を倒されたシャドウラビットがやや後ずさりしながら待っている


「んじゃ、ちょっとやってみますね」


ミナリは歩を進める


コツコツと足跡が響きー

進む


その腰の刀に手を伸ばしてシャドウラビットの前に立つ・・


ザッ・・シャドウラビットがミナリに襲い掛かる

まるでそこらを散歩するようにゆっくりと歩く


「危ない!!」


テレサが叫んで飛び出す!!


「え?」


声にミナリが振り向くとシャドウラビットは真一文字に切り裂かれていた

ズン・・・


シャドウラビットが崩れ落ちる


「あ・・あれ?」


「いつの間に・・・」


二人にはミナリが何をしたのかも見えなかった。

強いて言えば、腰の刀に手を伸ばしたことくらいだ


「あなたすごいんじゃない?」


モコが言った


「そ・・そうですかね?」


「謙遜するな、普通はアイツに苦戦するもんなんだが・・・」


あははとミナリは笑う

ミナリがした事は居合いだ。

シャドウラビットが飛び掛った瞬間に居合いで切り裂いただけのこと

だが二人にはそれが見えなかった・・それだけのことだ


そして3人は階を進む


その後もモンスターにであうが、その先はテレサとミナリが二人で倒していった

順調に、さして問題もなく


それどころかミナリが今まで知られていない様な通路を見つけてしまい、わずか30分足らずで今回のゴールにたどり着いてしまった


第十層ー

そこはいくつかの巨大なホールで出来た洞窟のような場所

先ほどまでのシャドウラビットー

ブルードックやシルバーバッド・・そんなモンスターとは格別に強さが違う



「さ、さてここが一応は冒険者コース、ガイドの最終地点なんだが・・」


本来はここまで来ることもなく、大体は第7層あたりで終わりになるものだ。

新進気鋭の才能ある冒険者であれば、10層までたどり着く。だがそこにいるモンスターを倒すことができず引き返すのだ。


そしてパーティを組んで再度挑む

見事倒せれば初心者卒業ーといった流れである

今回のガイドは見たいものには自らが挑むその先を見せるーそれがガイドの役目だ

ガイドはその役目として才能ある若者をサポートし、そして10層のボスを見せて対応を考えさせるのだ。


超えられない壁を越える方法を。


「え?」


くるりと振り向くミナリの後ろで崩れ落ちる巨大なトカゲーのモンスター

およそその図体からは考えられないほど早い動きと、第一に周囲と同化し見えにくくなる、そんなボスモンスターだったのだが


ミナリは相変わらずの居合い一閃のみで倒してしまった

まるで切れぬものなど無いような切れ味だ

そしてミナリの動きは相変わらず見えない、しいて言えば今回は複数回切った跡がある程度にしかわからない。


「ミナリ、どういうこと?あんた強すぎるだろう?」


あきれるようにテレサはつぶやく

およそ8時間、これがガイドの時間だとミナリに伝える


だが今はまだ1時間も経過していない。

8時間というのはおよそ10層に、ゆっくりといってたどり着く時間だとはいえこれは早すぎる

それにミナリの強さはおそらくSSS級でも間違いが無いのではないかと思ったテレサは


「どうするミナリ、もう少し進んでみるか?」


そう言った


「そうだねー。この先はまた雰囲気が違いそうだし行ってみたいかな?それとおなか空いちゃったんだけど・・ウサギ食べていい?」



そう言ってこんがりやけたウサギを取り出した


「いつの間に回収してたんだ・・・」


テレサとモコはあきれてしまう


すでにミナリは小ぶりなナイフでもってウサギを切り分けてしまっている

そしてダンジョン初めてとは思えないその図太い神経・・



「こりゃかなりの大物だね・・」


モコはそういってミナリを見るのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る