おっさんは異世界で焼肉屋するー焼肉ゴッドー

ちょせ

第1話その肉は何の肉だ!

この世界には、牛や豚はいない


だが、ミノタウロスやオークはいる


奴らはどんな味がするのか、興味は尽きなかった


他にも、ドラゴンやハーピーなど、様々なモンスターはいる


俺の目には、奴らはみんな同じ


「肉」


に見えたんだ








巨大都市ウルグイン


人口は数百万とされるがその実数は把握されていない巨大都市である


治安は良好、街の中心部には地下バベルと呼ばれるダンジョンがある


そのダンジョンでは様々なモンスターが出現するし、鉱石や薬草なども取れる。

故に地母神信仰の街でもあった


その街の一画に、とある食堂がある


俺の店だ。


店名は、「焼肉ゴッド」


その名の通りの焼肉の店だ

10席程しかない小さな店だが、俺の城である


日本ならば、なんら珍しい事はないただの焼肉屋

しかしこの街では珍しい、というか、


珍しいなんてものじゃない、俺の店一店舗しかない

なぜかわからないが焼肉屋なんてないのだ


そして日本の焼肉屋と大きく違うところがあるとすればそれはー


肉は100%モンスターと言うところだ。



既に日は暮れて周りの店もぼちぼち営業を始めたようだ

うちも開けるとするか



店の表にでると俺は立て掛けてあったのれんを入口に立て掛ける

こののれんを掛けると俺の中で一日が始まる気がするんだよな


うん、今日も頑張るか

気合がすっと入る


「カンザキ、今日も仕事終わったら店の娘連れてくから、よろしくねー」


声を掛けられた方を向けばそこに居たのは隣の店の女将、キャサリンだ。

金髪童顔で巨乳

俺のどストライクだ


「ああ、毎度ありー待ってるよ」



隣の店はいわゆる女の子が酌をしてくれる酒場だ

ダンジョンで疲れきった冒険者達を癒してくれる



「お、カンザキ今からか。後で酒持っていくわ」



このポケットに手を突っ込んで歩いている男は

酒屋のガルバ

重い酒樽を配達をしているせいか筋肉質である

ちなみにうちの酒は全部コイツんとこから仕入れてる


理由はうまくて安いからだ


そして店内に入り、昼間のうちに仕込んでいた料理を用意する

料理と言ってもうちは焼肉屋しかもオープンしたてだから

メニュー品目は少ないが



そうこうしていると四人組の冒険者が入ってきた


「よ、やってるかい?」


「いらっしゃい。好きな席に座ってくれ。」


店のど真ん中のテーブルにどかどかと座る4人組


テーブルには鉄板を仕込んである

記憶を頼りに作らせた焼肉用の鉄板だ


この世界はガスなんてものはないから、火は100%炭火だ


「何にします?」


注文を聞くとリーダー格らしき男が言った


「ああ、酒と肉盛り合わせ8人前な」


「先に酒だぞー」


「はいよ。」


厨房に戻り、ガルバから仕入れた安酒を先に持っていく

コイツらは酒が大好きだ。酒が届いたとたんに乾杯を始めるあたりが其れを物語っている


俺はその間に厨房に入って肉を切り始める

今日はミノタウロスの肉だ



「カイン、ひさしぶりの焼肉だなぁ」

「バジ、1週間くれえか、今回ダンジョンにもぐってたの」

「ああ、ここの焼肉が恋しくて恋しくてなぁ」


「ただ肉を焼いて、タレに付けて食う。それだけなんだが、最高に旨いんだよなあ」


「ああたまらんな!親父!肉早く持ってきてくれ!」


きり終えた肉を皿に盛りつけた俺は彼らのテーブルに肉の盛り合わせを持っていく



「はいよ、おまち」


肉盛り合わせ。定番メニューである


肉の内容、部位はその時その時で違うが、不味い物はだしちゃいない

俺がうまいと認めた肉だけを使用しているのである


ジュウジュウと肉を焼く冒険者たち、

彼らは肉を良く焼くと、タレにつけて食う

タレは醤油ベースの俺のオリジナルだ

この世界に醤油があって助かったとおもう


その他の材料は全てダンジョンで調達した

現代日本で手に入る調味料は大体手に入るのもダンジョンの不思議なところだ

タレの完成までは2年かかったが、満足がいくできばえだ。


「かぁ、うめぇなぁ。」


「何泣いてんだおめぇは」


「いやよ、今回は死に掛けただろ、だからよ。またここで飯が食えると思うとよぉ」


「もう酔ってやがるのかよ。だが、ようやく10階層までは行けたんだ。今日は祝おうぜ。」



そうか、10階層か

おめでとう。初心者卒業だな。

こいつらが8階層あたりでくすぶってた時からうちに来てたので感慨深い


俺は祝いに、特別な肉を振舞ってやった


「ほら、祝いだ。コレはおごりだから遠慮するな」


「おお、親父すまねぇな!早速頂くよ」


焼くと素晴らしく鼻腔をくすぐる良い臭いが充満する

ゴクリ、と四人は喉を鳴らす

そして、一口ぱくりと食べて・・・ゴクリ


「おい・・・・」

「ああ・・・・」

「こりゃ・・・」

「親父、何の肉だこれは」


四人が驚いた顔をする。


「さて、何の肉だろうな」


ちょっといじわるをしてやったりする


「まさかなぁ、でもこれは・・・」


まあ冒険者なら、噂で聞いたことがあるか


「ド、ドラゴンの肉じゃぁ・・・・・」


「お?正解だ。」


うおおおおおと、四人は立ち上がって


「うめぇ、うめぇよ!すげぇ、すげぇ!」

泣きながら焼肉を食べる四人

かなり不思議な光景だ


「さっきからお前うまいとすげぇしか言ってねえぞ!」


「ああ、だけど、だけどさ!」


「お前も泣いてるじゃねぇか!」



ドラゴンの肉は最高に美味とされる

そしてその肉は超高級品というだけでなく、限りなく入手が難しい

当然だ、なにせドラゴンだからな

討伐難易度にしたらSSSの超難敵である

それ以上に、見かける事なんてほとんどないが


四人はしこたま食べて、飲んで

そしてお会計


「やっぱ、うめぇもん食って、生きてるって噛み締める。それが幸せだよなぁ」


リーダー格のカインが言った


「ありがとうございます。また来てくれよ」


そう言って一礼をする。


「ああ。また、ドラゴンの肉が食えるようがんばってくるさ」


「おう、その意気だ。頑張れよ!」


四人は隣のキャサリンの店に入っていった。

今日は飲み明かすが良いさ


俺はまだ若いそいつらが好きだ


頑張って、生きて、前に進んでいる。

こっちまで、元気をもらっちまうような気がする


さて、今日の営業はまだまだこれからだ。


鉄板を片付けて、新しいものに取り替えて、


次の客を待つとするか。






その店の名前は焼肉ゴッド


巨大都市ウルグイン唯一の焼肉屋だ。

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