第3話 ヨーチューバーになんてなるんじゃなかった
ヨーチューバーになんてなるんじゃなかった。
かつて小説や漫画に代わって人類の最もメジャーな室内娯楽となったインターネット動画だが、人類の室内娯楽の大半は今やバーチャルリアリティーに置き換わってしまった。
小説や漫画を読まずともその世界観を再現した世界に没入することが容易になり、神経系へのアクセスにより1日分の体験を現実世界の10分で味わうことすら可能になった。
VRの刺激に慣れた人々にとってはインターネット動画など旧時代の遺物に過ぎず、俺は世間から今時ヨーチューバーをやっている変わり者だと思われている。
VRサービスはクリエイター単独ではとても制作できないから、細々と小説や漫画を創作していた人々は現在ではVR制作会社のスタッフとなり、プログラマーたちと協力して日夜新たなVRサービスの開発に励んでいる。
素人以上プロ未満のクオリティが売りであり関の山でもあったヨーチューバーたちはVR制作会社からは見向きもされず、この前も友人だったヨーチューバーが引退を表明した。
兼業漫画家だった親父の勧めで調理師という本業を持っていたからよかったが、そうでなければ俺は今頃独身のフリーターだっただろう。
俺は人生で芸術家として大成できなかったが、もし息子が動画制作者になりたいなどと言い始めたら、その時はヨーチューバーになんてなるなと言ってやろう。
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