改めて

「おはようございます。姫様。お目覚めの時間ですよ」


 姫様に声をかけ、部屋でいちばん大きい窓のカーテンを開けて、日光を入れる。眩しさに驚いたのか、姫は少し唸ると顔を隠し、二度寝しようとした。


「……」


 今日は大事なことがあるというのに……。この際乱暴でもいい。時間はない。失礼極まりないが、姫様の背中を数回叩く。少しだけ力を込めて。すると、


「……まだ寝てていいでしょお? 」


 と言う。何をおっしゃるというのか。まだ起きる気はないというのか。私は迷いに迷ったが、もう一段階力を入れて叩くことに。バシバシという効果音がぴったりである。


「いたっ、痛いって! 起きる! 起きるから! 」


 やっと目を開ける姫様。


「あれ、ここは? あぁ、……私王女になったんだっけ」


 今までの記憶の目覚めの風景と異なり、多少混乱したようだ。


「大丈夫ですか? 」

「うん。平気」


 よっ、と姫様はベットから離れ、うーんと背伸びをする。


「ところで……って、髪どうした!? それに、服も! 」

「どうかなさいましたか? 」

「いやだって、昨日と髪色違うよ? なんで茶色にしちゃったの? きれいな髪だったのに……」


 それのことか。私はふっと笑うと、


「だって、こうもしないと、私がシャルロッテ様と間違えられる可能性があるでは無いですか。それに、私は姫様のメイドです。昨日のようなドレスはもう一生着ませんよ」


 メイドなのだからメイド服を着るのは当たり前。私たちはとても似ているから、服で基本的に区別はつくだろうが、念の為、髪を染めた。

 姫様は私の金髪が茶色になったことを悔いているようで、寂しそうな表情を見せた。


「そんなに悲しそうな顔をなさらないでください。髪色など、命より遥かに軽いものです。あと、ご自分を責めないで下さいね? 私の想いは昨日伝えたでしょう? 私はこれから、あなたの専属メイドです。私の願いは、シャルロッテ様。姫様が、立派な王女となることですから」

「……そうだったね。うん。……改めてよろしくね。ルルー」

「こちらこそ、よろしくお願いします。シャルロッテ様」


 これが私のメイドの初日のこと。改めて、メイドのルルーが誕生した日のこと。

 精一杯、仕えよう。私の存在は貴方と共にありますから。

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