シャルロッテという名の姫だったメイド
野坏三夜
偽物のシャルロッテ
「…ですから、本物のシャルロッテ姫を迎えなければなりません! 」
え? 私は耳を疑った。私が本物じゃあないの? 私が本物のシャルロッテじゃないの? 思わず持っていた本を落としそうになったが、力を入れ直し、会話に耳を傾ける。
「だが、本物のシャルロッテ姫は今や平民として暮らしているらしい。どうやって見つけると言うんだ」
「髪の色と瞳の色は同じらしいからすぐに見つけられるはずだ! 偽物の血を混ぜる訳には行かないだろう? 」
そうだが、と言葉に詰まる相手。どうやら話しているのはこの国の宰相と将軍だった。どちらも国王陛下に多大な信頼を寄せられている人達だった。
この話を聞いて私は不味いと思った。すぐに図書館を静かに抜け出し、部屋へと戻る。もう日は暮れていて、この時間なら誰にも聞かれないとでも思ったのだろうか、二人は。
窓に光る三日月の光を見ながらベットに寝転がる。さっきの会話が嘘ならいいのに。そしたら、私はシャルロッテ姫として悠々自適に生きられるのに。でもそれはありえないと分かってしまった。このまま本物のシャルロッテ姫が見つかれば私は始末されるだろう。どうにか生き残る道を模索しなければいけない。自然とあふれでた涙を拭き、ぼそりと言った。
「生き残ってみせる」
と。
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