82日目

地面に叩きつけられたドラゴンを介抱しながら、生き物は、化け物にこの世の事の続きを聞いた。

天界の住人はこの世の者が想像するより、余程野蛮だと化け物は鼻を鳴らした。


「奴らは私達を化け物だというが、私からしたら奴らの方が化け物だ。奴らを見かけたら必ず逃げるんだぞ」


生き物の長い耳を撫でつけながら化け物はそう、言って「ドラゴン、すまなかった」と謝った。


魔物とは何だろうか。


地上の生き物が残していった、本に書いてある魔族は恐ろしい存在だったが、今目の前にいる化け物は、見た目こそ恐ろしいが、中身はそうでもない。

同胞だから、甘く見られているのだろうか?

同胞とは何か分からないが、生き物は「谷に戻ろうか」と考えていた。

谷の生活が懐かしい。

地上に上がってから地獄の連続だ。思った通りの夢のような世界は存在していなかった。

その悲しみに目元が潤む生き物の頬を猫がグルーミングした。

まるで慰められているようだと思った。


「夜が明けるまでここにいると良い、旅立つなら、私は見送るだけだ」


地を這うようなおどろおどろしい声でありながら、母の様な優しさで化け物は笑った。

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