78日目

化け物を目視した生き物は全速力で風の流れる方へと走り出した。

その背後から「待て」と声が聞こえる。

このように産み落とされて初めて理解できる言語が聞こえて、思わず生き物は足を止める。

その声は背後の化け物から発せられているらしい。


「貴様、どこから来た?」


困惑しているのは向こうも同じらしい。生き物は足を止めパクパクと口を動かす。

生き物は今まで誰かと喋ったことがない。発音の仕方が分からなかった。


「言葉知らずか。どうやら下等な生物らしいな」


ムッとする生き物を黒い、モルタルの様なねばねばした物体はそう、嘲笑った。

言葉を知らないのは事実だが、突然下等生物扱いされるのは生き物とて許せない。

両の手をぶんぶん振り回す生き物に、化け物は「ほう?」と感心したように笑う。


「私と戦うか?下等生物」


生き物は意を決して、その場に落ちていた棒切れを拾い、化け物に突撃した。

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