11日目

昨日作った鳥のスープが二日目、美味しそうに炊き上がっていた。

香辛料と鳥の出汁が出たスープは黄金色に輝いている。

お玉で掬って生き物はじゅっとスープを吸い上げた。香ばしい黄色の味がする。


今日はこのスープと菜っ葉を使ってお昼ご飯にしよう。


小屋を出て谷の壁沿いを歩き、自生する菜っ葉を摘む。

これは食べられる草、これは食べられない草。生き物はゆっくりと歩きながら葉を摘み取っていく。

その手はどこまでも優しい。自分が生きていく分だけ取る。

自給自足よりもっとゆったりとした生き方だ。


手のひら程度の菜っ葉を抱えて、生き物は小屋へと戻る。


命を頂くこと、それにより活力を得ることを生き物は知っている。

全ての物に平等に命がある。それは、生き物も同じだ。

いつかこの身が朽ちた時、その体は次の糧になる。

生き物はそれまで自分の生をゆっくりと噛みしめて生きていく。


菜っ葉を湯がき、ドレッシングをかける。

両の手を合わせて命に感謝を示すと、一口スープをすすった。

菜っ葉をフォークに刺して小さな口へと運ぶ。

菜っ葉は綺麗なエメラルド色の味がした。

黄色とエメラルド色の味はとても良く調和していた。


今日も幸せだ。生き物は頬袋を膨らませて満足げに鼻を鳴らした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る