第290話 災害ブイオーの職業(1)
【三大堕落】の【甘言】担当であった、シーヴィー。
彼女は他の【三大堕落】の面々と同じように、リーダーである赤坂帆波の事が好きであった。
しかし、赤坂帆波はこの世から消された。
勝手に異世界に召喚され、勝手に異世界から帰還してきた空海大地----彼の勝手な帰還により、だ。
その事に、シーヴィーは憤慨した。
自分達は質素に、平和に暮らしていただけなのに。
そんな空海大地への怒りをその身に封じ込めつつ、シーヴィーは活動していた。
そんなシーヴィーの生涯はあっさりと、幕引きとなる。
その幕引きを行った相手----吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世。
召喚獣であるココアへの怒りは、【街】の実質的な頭目へと変わった絶望スカレットに蘇生されてブイオーになった際にも、消える事はなかった。
それどころか、刻一刻と強くなっていくばかりであった。
『私の
君は、生きる復讐の鬼となったのだよ。これから【街】の一員として、頑張って欲しいね』
そんな説明を、絶望スカレットから受けたはずだが、すぐさまブイオーは忘れてしまっていた。
ココアへの復讐心が、そんな説明を彼女の頭から消し去ってしまっていたのだ。
----だからこそ、忘れていた。
『そうそう。そんな君には、私からとっておきの
----私が知る限り、この世で最も邪悪な
彼女には、ココアを倒すための、ヤバイ能力が眠っているという事を。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ココアとブイオーの戦いの最中。
ブイオーは、新たな戦い方として、スキルを発動させる。
「----【救いの塔】」
ブイオーがスキル名を唱えると、ブイオーの手の中に小さな塔のような物体が現れる。
その小さな塔は全体が白の色で統一されており、神々しい光を放っていた。
そして、そんな白い塔をブイオーが自らの体内に取り込む。
自らの体内に取り込むことにより、ブイオーの身体が神々しく発光し、頭の上に真っ白い輪っかが浮かんでいた。
「(----天使じゃと?)」
その姿を見てココアが最初に抱いた感想は、天使であった。
「(確か赤坂帆波の話によると、ココアの身体は確か……【サンダーバード】とやらじゃったかのう)」
----ランクⅥの魔物【サンダーバード】。
雷を操る精霊のような魔物であり、天使とは全く関係ないはずの魔物である。
「(となると、あやつの
天使、聖なる属性とブイオーとの似合わなさにほんの少しばかり戸惑いつつ、ココアは魔法を作り出す。
「聖なる属性となったら、闇属性の魔法はどうじゃろう!」
ココアが生み出したるは、どす黒い闇を凝縮させた魔法。
光や聖なる気などを吸収して爆発する性質を持っており、今の天使化されたブイオーならば、大ダメージを与えるのは確実だろう。
「喰らうのじゃ!!」
ココアが放った闇の魔法は、ブイオーへと向かって行く。
ブイオーはそれを見て、ニヤリと笑う。
そして、闇の魔法は
「……は?」
ブイオーに放った闇の魔法が、爆発もせずに、ブイオーの身体へと吸い込まれる。
さらに言えば、その魔法が、ブイオーの体内に取り込まれることにより、ブイオーの能力自体も飛躍的に上昇している事までも分かった。
ココア自身、【雷狐・風狐】を【鮮血武装】で取り込んで強くなっているから、それが良く分かった。
「相手の魔法を取り込んで、自らの力にする……天使というよりも、悪魔や怪物の類じゃなぁ」
魔法をぶつけてみた感触からして、確実に命中している。
それでいて効いていないどころか、むしろ強くなっている。
「倒し甲斐がありそうじゃわい」
「倒されませんよ。倒されるのはココア、あんただ!」
闇魔法を吸収したブイオーは、別のスキルを用いて、雷を纏った大きな
そして地面に
「くっ……」
ココアは【鮮血武装】で取り込んでいた2匹の狐によって、その衝撃を弱める。
しかし、わざとらしく隙を見せつけるブイオーに追撃しようにも、次の魔法攻撃もまた吸収して強くなる可能性を考えれば踏み出せなかった。
「厄介じゃな。まずは、あのスキルをどうにかせんとのう」
ココアは早速、ブイオーへの対処にどうするかという難題にぶち当たるのであった。
(※)【救いの塔】
ブイオーが使う
その際、攻撃が与える衝撃は全て当人の能力上昇に使われるため、ダメージは一切受けない
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