第287話 ココア、落ちる
空海大地と天地海里、それに相対する回帰ダブルエム。
両者の戦いは、既に決着が見えていた。
空海大地と天地海里が合体して生まれたマイマイン、それが持つ専用スキル【絆の世界】。
全ての者に絆を与え、好感度を徐々に高めていく一種の洗脳スキルが発動する中、ダブルエムは2人を愛する前に
もはや決着は、時間の問題と言えよう。
----さて、話は両者が戦う少し前に遡る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「----ん?」
ココア・ガールハント・ヒアリング3世は、キョトンと首を傾げる。
「(落ち着くのじゃ。落ち着いて、状況を整理するのじゃ、妾)」
一旦、深呼吸をして、ココアは冷静に状況を思い返していく。
自分達は、ココアの妹----武装姫ヘミングウェイを奪った【街】を倒すため、行動を開始。
【街】が潜伏しているレムリア大陸に向かうため、【アバトゥワの塔】というダンジョンを攻略。
そして、ダンジョンを無事に抜けて----
----ココアは、空の上に居た。
しかも、十数メートルなんてちゃちな高さではなく、数百メートルという、物凄い高所に。
「なっ、なんで妾! 空に居るんじゃよぉぉぉぉぉぉ!!」
ひゅーっと、まるで今ようやく思い出したかのように、ココアの身体は重力に沿って、落ちて行く。
その横には同じように落ちるマルガリータと冴島渉の姿も見えるが、2人とも気を失っているみたいで、ピクリとも動かない。
「妾以外が気絶しておる……いや、妾だけが気絶を受けなかったというべきかのう?」
そこで、ココアは自分のスキルを思い出した。
===== ===== =====
後天スキル;【原罪の妖狐・色欲】
;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。相手の状態異常攻撃を全て無効化する
===== ===== =====
「状態異常の全無効化! 恐らくこのスキルが、妾を気絶から守ったのじゃろう!」
ともあれ、状況を把握できてるってだけで、事態は何も解決していないのだが。
「落ちる前に対処せねば! これは敵からの攻撃じゃからのう!」
そう、これは空に転移させられたという、敵からの攻撃である。
そもそも【アバトゥワの塔】は、レムリア大陸に繋がる4つの道のうちの1つ。
敵が罠を仕掛けていないと、油断したこちらが愚かだったのである。
「まさか、空に繋げておるとは----!!」
落ちて行く中、下にはちゃんとレムリア大陸らしき場所があるのを確認する。
しかし同時に、その大陸との激突が今か今かと迫っているという
ココアは、大丈夫だ。
レベルⅤの召喚獣であるココア、そして同じく高いレベルを持つマルガリータも、怪我こそ負うが、命に別状はないはず。
しかし、問題は【召喚士】冴島渉。
ココアと同じレベルⅤではあるが、正直、この高さから落ちて無事に済むような未来は見えない。
いや、最悪死ぬ可能性の方が高いとも言える。
こんな時に助けてくれそうな雪ん子とファイントの姿は、どこにも見えない。
恐らく、自分達とは違う場所に転移してしまったのだろう。
ともかく、今なんとか出来るのはココアだけという事実に気付くも、事態は刻一刻と悪い方向に進んでいる。
「とっ、とにかくなんとかするのじゃ! 妾の持つスキルで!」
ココアはそう決めると、使えそうなスキルがないかを探り、2つのスキルを採用した。
===== ===== =====
後天スキル;【原罪の妖狐・強欲】
;【原罪の妖狐】のスキルのうちの1つ。自分の味方に対するアイテムやスキル効果の効果時間を倍にする
後天スキル;【雷狐・風狐】
;雷と風の2種類の狐神を使役するスキル
===== ===== =====
ココアが選んだのは、この2つのスキル。
「まずは、【雷狐・風狐】!」
ココアがスキルを発動すると、2匹の狐が目の前に現れる。
1匹は全身から雷を迸らせる黄色い雷狐、そしてもう1匹は全身に風を纏わせる緑色の風狐。
ココアは風狐の方に指示を出し、風狐はすぐさま冴島渉の元に行き、そのモフモフとした毛の中に包ませる。
風狐に次の指示として、風を物凄い勢いで吐き出させ、落下の衝撃を少しでも軽くさせる。
当然、そんな勢いで風を使わせれば、スキルとして呼び出した風狐はエネルギー切れで消えてしまう。
その前に、【原罪の妖狐・強欲】のスキルで、風狐の効果時間を倍にして、少しでも消えるまでの時間を延ばす。
「ふぅ、これで良しっと……あっ」
そして、初めから風魔法を使えば済んだんじゃないかと、地面に激突した瞬間に気付くココアなのであった。
(※)【雷狐・風狐】
ココア・ガールハント・ヒアリング3世が持つ、スキルのうちの1つ。2匹の属性が異なる狐を呼び出し使役する
雷狐はその名の通り雷を操り、風狐は同じく風を操る。現在の効果時間は1時間であるが、今回のように風を思いっきり出させるなどの無茶な使い方をすると効果時間、召喚されている時間は短くなる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます