第234話 覚醒幽鬼VS新生ファイント(1)

「さぁ、ご主人のために! ファイントちゃん、頑張っちゃいますぅ!」


 豪華な王族のような服装をしたファイントは、二丁拳銃を構えて放つ。

 銃からは黒と白、二色の光の筋が放たれるのだが、覚醒幽鬼は動じた様子はなかった。


【そんな攻撃など、効かないでクルック~!】


 覚醒幽鬼は地面に手を触れて、地面の形を【分解再構築オーバーホール】のスキルを用いて変形させる。

 地面が大きく盛り上がるようにして変形し、鳩時計の像となって防いでいた。


 盛り上がった数体の鳩時計の像は、ファイントの攻撃を物ともしていなかった。

 地面は像に使った分だけ盛り下がっており、鳩時計を模した像はほんの少し欠けている程度だった。


「ありゃりゃ~、まぁ一発ならそうだよね♪」


 ファイントは想定内だったらしく、すぐさま次を放っていた。

 銃から再び放たれる二色の光が、十を越える複数本放たれる。


【何十本放たれようとも、防ぐのは一体の鳩時計像で十分でクルック~!】


 覚醒幽鬼はそう言って、銃弾を受けてかけている鳩時計の像に手を軽く触れる。

 すると、周囲の地面、そして他の鳩時計の像を取り込んで、大きな鳩時計の像へと変わり、覚醒幽鬼を守るためにどっしり構えていた。


 ファイントの放った複数本の光の筋は全て、大きな鳩時計の像に吸い込まれるように、防がれていた。

 先程は多少ばかり傷ついた鳩時計の像も、大きくなると共に防御力も上がったらしく、像はちっとも欠けてはいなかった。


「ひゅ~☆ やっ、るねぇ!」

【鳩時計は無敵! 鳩時計こそ、最高の物なのでクルック~!】


 覚醒幽鬼は得意げに、そう告げながら、自身に触れる。

 自身に触れると共に、作り出したその大きな鳩時計の像にも触れていた。


【【分解再構築】、発動でクルック~!】


 鳩時計の像に触れると共に、像が分解される。

 分解された像は覚醒幽鬼の周囲をぐるりと回り、そして覚醒幽鬼の身体に纏わりつく。


 そして生み出されたのは、鎧。

 彼女の身を守るように生み出された、特製の鎧である。


 胸元には時計盤、そして頭の兜の上には大きな鳩が鎮座していた。

 

【鳩時計の鎧! 鳩時計を全身に纏う事により、我は今、最大の戦力を得たり! クルック~!】


 覚醒幽鬼は背中から、長針の形をした真剣を抜く。


【真剣ハトドケイ、そして聖鎧ハトドケイ! 大きな鳩時計像に傷一つつけられなかった攻撃しか出来ないなら、この勝負----勝ちはもらったでクルック~!】


 

「じゃあ、こっちも本気で勝ちを目指さないとね♪ スキル【二大巨頭】」



 ファイントもスキルを出して、反撃に転じる。

 彼女がスキルを発動すると共に、ローブの中から現れたのは、5メートルを優に超える大きな塔。


 白く、光り輝く塔。

 黒く、光さえ飲み込まんばかりの塔。


 二色の塔、その塔にはいくつもの砲台が配備されていた。


「光の塔と、闇の塔。----やれ」


 一瞬、冷たい目をしたファイントの指令と共に、塔の砲台から強力な光が、一斉に覚醒幽鬼に向けて放たれる。


【こんなの、聖鎧ハトドケイの前には意味な----ウグワーッ?!】


 そして、塔から放たれた光は、覚醒幽鬼を吹っ飛ばしていた。



「融合した後の姿をなんでも選べるような状況で、選んだ職業が弱い、訳ないでしょう?

 高火力と高い防御力を両立させた【マナ】系統の職業たる【機動要塞】。そんな【機動要塞】を凌駕する性能を誇る、【オーバーロード】系統の職業、【王城】。

 【機動要塞】を越える、【王城】の力。今こそ、その力を見せつけてやるです♪」




(※)【王城】

 【オーバーロード】系統職業の1つ。【マナ】系統職業【機動要塞】の上位互換系統

 高貴な力を纏うことにより、火力がさらに高くなった遠距離攻撃が特徴。また、2つの塔に自らの力の一部を溜める事で、【機動要塞】にはなかった複数の同時砲撃が可能

 高貴な者達を守るために生み出された王城の守りは、機動要塞よりも鉄壁である

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