第194話 覚醒ファイントは、魔王シルガを滅ぼした


「----ウグワーッ!」


 雑な声と共に、魔王シルガは絶命した。

 不老不死の身体を手に入れたはずなのに、殺されて、復活できないように、これ以上ないくらいに滅ぼされたのである。


 

「はぁ、憂鬱ね。本当に」


 そして、それを為した人物----真名解放によって覚醒したファイントは、退屈そうにそう息を吐く。


 身長はググっと伸びて3m近くなり、まるで女神を思わせる均整の取れたボディライン。

 背中から生えてる黒い翼は6枚に増えており、血を思わせる濃い真紅のドレス姿に変わっており。

 圧倒的な力と体格を手に入れたはずの彼女は、退屈そうに魔王シルガを見ていた。


「----【究極殺害】。"魔王シルガを殺害したという事実"を【殺害】する」


 彼女がそう言うと、魔王シルガが復活した。

 いや、復活と言うよりかは、シルガが死んだ状態がリセットされた、というべきか。


「かはっ……俺様、生きてるのか?」

「生きてるわけではありません。死んだという状況を、【殺害】しただけです」

「……意味が分からんが、ともかくお前を殺すのは俺様だ!」


 魔王シルガはそう言って、スキルを----【世界球体】の中に閉じ込めた日野シティーミティーの力を使おうとする。


「無駄ですよ、それは許可してませんので」


 覚醒したファイントはそう言い、魔王シルガはその通りであったため、驚いていた。


 日野シティーミティーの力、それだけでなくありとあらゆるスキルが、力の全てが使えなくなっていたのである。


「なっ……?! なんで、俺様の力が全て?!」

「スキルは使えませんよ。そういう風に【殺害】しましたので」


 ファイントはそう言い、魔王シルガの瞳をジッと見つめていた。


「あなたが世界を作り替えたせいで、私は冴島渉から……あのかせから解き放たれてしまいました」


 ----だからあなたを、【殺害】しました。


 ファイントはそう強い口調で、魔王シルガに言う。


「不老不死、でしたっけ? あなたのその身体の持ち主が目指す先は。

 ----私からしたら、お笑い草ですよ。不老不死だなんて、ただ死を殺害ころせば良いだけなのに」



 すーっと、ファイントはその手を、魔王シルガの身体に、ダブルエムの身体に差し伸べる。

 それと共に、魔王シルガの魂が、身体から切り離される。


【はっ?!】

「魂と身体との繋がりを、今、殺害ころしました。あなたはもうただの魂として、身体の力を得ることは出来なくなりました」


 そして、彼女は堂々と自身を紹介する。


「世界は、あなたの物ではありません。私が真名を解放した以上、私の影響で、世界は地獄へと変わる。

 ----改めまして、自己紹介しましょうか。冴島渉なる【召喚士】に呼び出された悪天使のファイント、真名を"【サタン】"と申します」



 ===== ===== =====

 【地獄の主サタン】 レベル;Ⅸ

 装備職業;なし

 攻撃力;C+29→SS

 魔法攻撃力;(SS)E+4→(SS)SS

 防御力;C+29→SS

 素早さ;C+29→SS

 賢さ;(SS)C+24→(SS)SS

 >>魔法攻撃力がSSを越えたため、特殊スキル【魔術改変】を取得しました

 >>賢さがSSを越えたため、特殊スキル【天災思考】を取得しました


 固有スキル;【反天使】;天使から悪の道へと進んだ者。全ての聖属性の攻撃が闇属性に変換され、相手が聖属性だった場合、集中攻撃される

      ;【悪の天使】;悪属性の力ならば、敵味方問わず扱えるようになるスキル。また敵のスキルならば、攻撃を受けなくなる

      ;【審偽眼】;嘘を見抜く力。相手が嘘を言っている場合、その隠している真実まで見抜く力であり、真実を見抜くスキルとも言える

      ;【燃える戦車】;火炎を生贄に、戦車を生み出すスキル。炎の温度と規模により戦車の強さが変わる

      ;【究極殺害】;あらゆる概念を殺害するスキル。あらゆるモノを、概念をも殺害することが出来る殺害のスキルで、このスキルで殺害したモノはどんなスキルであっても復活することは出来ない

      ;【地獄生成】;地獄を生成するスキル。地獄を生み出すスキルというよりかは、彼女がいる所が地獄となるのである。なにせ、地獄の主なのだから



 【地獄の主サタン】 レベル;Ⅸ

 悪天使ファイントの真名であり、地獄の主であるサタン。堕天使でもあり、天使の時の名前はサタナエル

 名前は「敵対者」「反対する事」を意味するヘブライ語の"satan"に由来すると言われており、悪を司る天使であるサタナエルは地獄へと叩き堕とされた。他の伝承ではルシファーやサマエル、ベルゼブブなどと同一視されているが、サタンが地獄の主である事は揺るぎようもない事実である

 地獄の支配者であり、全ての悪魔達を統べる王である。もはや彼女がいる場所こそが地獄であり、世界は彼女を中心として地獄となる

 ===== ===== =====



 そして、世界は地獄へと変わっていく。

 悪天使ファイント、いや地獄の主であるサタンが何もせずとも、彼女がいる事で。


 なにせ、彼女がいる場所が、地獄、なのだから。




(※)【究極殺害】

 悪天使ファイントの真名である【サタン】が持つ固有スキルの1つ。ありとあらゆるものを【殺害】することが出来る、究極の殺害スキル

 このスキルで殺されたモノはあらゆる蘇生や復活などのスキルの影響を受けず、永遠に殺されたモノとなる。また、例えば【ポーション】を殺害すればこの世界から【ポーション】は1つ残らず消え去り、【相手の身長の2m以下を消し去る】とすれば相手は2m以下の身長にはなれなくなるほど、応用も幅広い

 また、1つの例外として、【究極殺害】で殺害したモノを再び殺害することによって、"殺害したという事実"をなかったことにして、再び復活させることが出来る

 弱点は、最初から存在していない物や概念は【殺害】できないこと。冴島渉との縁は完全に消失してしまったため、【殺害】して復活できない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る