第95話 ココア姉妹VS甘言のシーヴィー(1)

 シーヴィーを追う、ココアとリョクチャの召喚獣姉妹。


 身体能力を上げるスキル《ジンバーロック》を使ってるリョクチャは、物凄い勢いで駆け抜けていく。

 シーヴィーが逃げた先は赤い床の通路で、通路を抜けた奥の部屋に二丁拳銃を構えるシーヴィーの姿が見えた。


「(けん、じゅう……?)」


 なんで拳銃を構えてるのかとリョクチャが思っていたら、シーヴィーが銃の引き金を引いているのが見えた。

 引き金が引かれ、銃口から禍々しい紫色のビームエネルギーが放たれていた。


「【ししいか】!!」

「なんじゃ、その単語?!」


 向かって来る禍々しい紫のエネルギーに対し、リョクチャは咄嗟に書きやすい文字を宙に描く。

 意味はこの際どうでも良い、大切なのはそれをエネルギーとして具現化し、ビームエネルギーを防ぐ事だから。


 ----ドゴォォォォォンッッ!!


 大きな爆破音と共に、ココアとリョクチャは風で押し戻される。


「リョクチャ?! なにが起きたんじゃ?!」

「妾お姉ちゃん、"てんてき"です!!」

「分かったのじゃ! "見敵けんてき"じゃな!」


 と、米俵のようにかつがれていたココアが肩から降り、魔法を2つ構える。

 リョクチャもココアの真似をして、同じように、先が龍の尻尾のようになっている杖を構えていた。


「ぬぬっ?! この杖、ひらひらしてて、扱い辛いぬっ?!」

「リョクチャ、それはお主が召喚した際に出てきた杖じゃろう?!」



「アホみたいな漫才コントをしに来たのなら、倒しちゃいますよ? 喰らえ、"召喚銃サモンショット"!!」



 そう言い、シーヴィーは身構えている拳銃の引き金を引く。

 そうすると共に、拳銃から禍々しい紫のエネルギーが放たれる。


「また来たっ?!」

「なるほど、これじゃな!!」


 と、ココアは構えていた2つの魔法を1つに合わせると、鏡のような魔法を生み出す。

 生み出された鏡はキランっと光ると共に、構えていた禍々しい紫のエネルギーを吸収していく。


「2つを1つにして強力な力を生み出すのは、そっちの専売特許だけじゃないわい! これぞ、合成魔法の《ミラーシールド》じゃ!!」

「へぇ、凄いねラブホちゃん。でも、いつまで持つかなぁ?」


 2つの異なる魔法を、【妖狐】の力によって調整して合成した、普通の魔法よりも強力な合成魔法。

 そんな合成魔法という強力な魔法でも、シーヴィーの銃から放たれる禍々しい紫のエネルギーを、受け止めきれない。

 どんどん、魔法で生み出した鏡の盾が割れ始め、止められなかったエネルギーの一部が漏れ出している。


「むむっ……!! 強いエネルギーなのじゃ!!」

「妾お姉ちゃん、私も----って、うぐぐっ?!!」


 ココアが魔法を2つ重ねてガードして、それが破られそうなのを見て、リョクチャも文字を書いて手伝おうとする。

 しかし、その前にリョクチャの身体は、腰が砕けたかのようにその場に座り込んでしまっていた。


「リョクチャ!!」

「だいじょーぶ、妾お姉ちゃん!! すぐだいじょーぶになるぬ!」

「(スキル《ジンバーロック》の効果が切れたんじゃな……)」


 と、ココアはそう判断した。


 彼女が持つ固有スキル《ジンバーロック》は攻撃力や防御力など複数のステータスを2段階上げる事が出来るという強力な力ではあるが、その分、反動も大きいスキルだと、ココアは考えていた。

 だから、リョクチャが座り込んだのも、その影響なのだと。


「妹の前ならばっ!! お姉ちゃんならばっ!!」


 どっせーいっ!!


 自分でも思っても見ないような、火事場の馬鹿力で、鏡の盾を放り投げるココア。

 放り投げられた鏡の盾はその直後に爆破し、こちらに向かっていた残りの紫のエネルギーを吹き飛ばしていた。


「へぇ~、やるねぇ」


 ぽいっと、用済みになったかのように二丁拳銃を捨てるシーヴィー。

 けれども、また別の二丁拳銃を、虚空から召喚して手に持っていた。


「説明すると、この二丁拳銃の名前は【召喚銃サモンショット】。この甘言のシーヴィーの切札と言っても良い武器さ。

 この二丁拳銃は弾丸が1発しか入らない、その理由はこの銃が【融合召喚】をしてるから」


 クルクルッと、二丁拳銃を回転させるシーヴィー。

 その回転中、ココアは拳銃の中の音を集中して聞いていた。


「(液体……2種類の液体が入っておる? それに【融合召喚】ってことは、まさか?!)」

「おっ、その顔は気付いてくれたようだね! 流石はラブホちゃん!」

「まさか、その拳銃には、妾達の同胞----つまりは2種類の召喚獣が入っておるのか!?」


 「正解♪」と、嬉しそうに笑うシーヴィー。


「【融合召喚】はほとんどが失敗作さ。同じ召喚獣を組み合わせたり、あるいはまったく種類が違う召喚獣を組み合わせたりと、成功する組み合わせのパターンが、このうちですら分からない。

 そして、失敗すると、強力なエネルギーとなって爆発して霧散するんだけど----」

「その爆破するエネルギーを、銃として放っている訳じゃな……」


 言うなれば、あの銃は爆弾。


 液体----《スピリット》の力によってスライムのような液体状になってる召喚獣を、2体分、2種類の液体を拳銃の中に入れておく。

 そして引き金を引くと共に、2種類の液体に変えられた召喚獣は、混ざり合い、【融合召喚】失敗という名のもとに爆破エネルギーとして、相手に放っているのだ。


「召喚獣を、爆弾のように使うとは……!!」

「良いでしょ、この戦い方! 召喚獣任せではない、【召喚士】だからこそ出来る新たな戦い方だよ。出来れば、君の主殿さんに見せておきたかったよ。ラブホちゃん」


 カチッと、手にする拳銃の銃口を2つとも、ココアへと向けるシーヴィー。

 

「----でも、そろそろお遊びも終わりとしましょうかね」


 シーヴィーは2つの銃の引き金に手をかける。


「(マズいのじゃ?! 1発分でもギリギリ防げたくらいなのに、2発分ともなると!!)」


 どうするか、ココアが迷っていると----



「避ける気もするし、"こうしましょ"」



 シーヴィーは銃口をココアではなく、"リョクチャ"へと向ける。

 まだ《ジンバーロック》の影響で、ぜぇぜぇ息を吐いて、動けずにいる、ココアの妹へと。


「~~~っ!! シーヴィーっ!!」

「はい、ばいなら♪」


 銃は放たれ、そして----



「妾お姉ちゃああああああああああああああああんんんんんんんっ!!!!」



 リョクチャは、禍々しい紫のエネルギーに飲み込まれ、そのまま消されるのであった。

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