第7話 元勇者系MyTuberによる、召喚獣紹介動画(1)
「皆さん、おはこんばんにちは! 冒険者支援系MyTuber、元勇者のマイマインですっ!」
動画を再生すると、まず一番最初に映し出されたのは、猫の仮面を被った男の姿である。
シンプルなデザインの部屋に、大きな黒机。
そして画面の真ん中に映る猫の仮面を被った男という、なんとも普通な感じがする。
----これが、冒険者系動画のトップクラスのMyTuber、マイマインの動画か。
「さて、今回の動画では大好評! 大外れ系
皆様のご応募が大きかった、【召喚士】についてご説明させていただきますわよー」
パチパチパチっ、と動画の真ん中のマイマインが手を叩くと共に、効果音でさらに大きなパチパチという拍手の音が響く。
俺も、これからが動画の本編だと思って、じっくり耳を傾ける。
「わたしは数年前まで異世界で勇者として召喚され、そこで数多くの仲間と出会ったのですが、【召喚士】はなかなか戦いづらいようでしたね。
その理由として、【召喚士】の武器とも言える、召喚獣の弱さにあります。
一般的な職業----例えば【剣士】は剣術スキルなどを磨いたり、性能の高い剣を使ったり、あるいは仲間との協力などによって、レベルが上の相手でも勝負になる事が出来ます。
勿論、あまりにも格上の相手では勝負にならないのですが、それでも作戦と努力次第では、自分より上の相手と勝負しても良いでしょう。
しかしながら、【召喚士】の召喚獣はたくさんの魔物を倒してもレベルアップせず、スキルも新たに覚える事はありません。また【召喚士】自体のレベルが上がったとしても、召喚獣を強くする
異世界でも、【召喚士】の方はほとんどがレベルⅠで、あまり強いという印象はございませんでした。
しかしながら、【召喚士】が召喚できる召喚獣の中には、勿論格上の相手には勝てないですけれども、それなりに有用な召喚獣が何体か見つかっておりました。
今回は、そんな有用な召喚獣の中から、マイマインが「使えるな」と思ったレベルⅠの召喚獣ベスト5を紹介していきますね」
どうやって紹介するのかと思っていたら、いきなり机の上に小さな召喚陣が出現する。
----もしかして、小さくした召喚陣で召喚獣を召喚するつもり? そもそも、召喚陣の大きさを変えるってどうするんだ?
やはり異世界で勇者をやっていた云々はともかく、俺達の知らない知識を知っているのは確かなようである。
「まず、第5位! 最強に等しいとされるドラゴンの系譜に連なる召喚獣! 【ドラゴンエッグ】です!」
小さな召喚陣が光り輝いたかと思うと、そこから召喚陣サイズの、小さな召喚獣が現れた。
現れた召喚獣は、まんま卵のような召喚獣で、卵の真ん中から2つの目がこちらを覗いており、卵の下からは小さなドラゴンの足も生えてるように見える。
===== ===== =====
【ドラゴンエッグ】 レベル;Ⅰ
全てのドラゴン系モンスターの始まりとされる、ドラゴンの卵型の召喚獣。卵の中身はまだなんのドラゴンになるか定まっておらず、その身体は硬いドラゴンの卵の殻に覆われている
まだよちよち歩きも上手く出来ないため、遠くを移動する時は転がって移動している
===== ===== =====
テーブルの上で、小さな卵----ドラゴンエッグがくるくると転がっていた。
「ドラゴンエッグは機動力が低く、体当たりか、転がるくらいしか出来ない召喚獣です。その代わりに防御力がレベルⅠの召喚獣の中ではトップクラスのため、いざとなったら相手に直接投げても攻撃になります。
また、もし硬いドラゴンエッグの殻が壊れて落ちた場合、生産職の方に渡すと良い素材だと褒めてもらえますよ?」
説明を終えたとばかりに、ドラゴンエッグを【送還】したマイマイン。
すると今度は、2つの小さな召喚陣が現れる。
「続いて第4位の発表と行きたいところですが、実は第3位と第4位は私の中では同率の順位なのです。
なので、続いては2匹同時に【召喚】して、紹介させていただきます」
マイマインが説明を終えると、2つの小さな召喚陣が光り輝き、そこから2体の召喚獣が現れる。
向かって左の召喚陣から現れたのは、宙に浮かぶ青白い炎の召喚獣。
向かって右の召喚陣から現れたのは、背中に白い翼を生やした、可愛らしい女の子であった。
「同率第3位となりました2体の召喚獣----透過して武器に乗り移る【レイス】と唯一の回復スキル持ち【エンジェル】を紹介させていただきますね」
===== ===== =====
【レイス】 レベル;Ⅰ
身体を持たない、霊体のみで存在する召喚獣。陽の光を浴びると体力が奪われて、勝手に消滅してしまう欠点を持っている
消滅の回避のためか、この召喚獣は物に憑りつくという力を持っており、憑りついている間は物を移動させることが出来る
【エンジェル】 レベル;Ⅰ
天界を守護する天使の中でも、最下級の地位に属する召喚獣。主に仕えることを至上の目的としており、その力のほとんどを治癒と浄化の力に振り分けている
敵と戦う事はほとんどあらず、逆に敵を回復したりもすることもある
===== ===== =====
テーブルの上に2体の召喚獣は、それぞれに思い思いの行動を取っていく。
レイスはふわふわ浮かびながら、なにか身体として活用が出来る物がないかと探って移動する。
エンジェルはその場に座り込んで、祝詞のような物をぶつぶつと言っているようだった。
「この2体はそれぞれ長所も大きいのですが、その分、短所も大きいです。
レイスは透過し偵察の役目も果たし、武器に憑りつくことで強化武器として使うことも出来ます。しかしながら、陽の光に弱く、屋内型のダンジョンでないと使いづらい召喚獣です。
続いてエンジェルの方は自動的に治癒をしてくれたり、毒や麻痺などの状態異常を浄化する力を持っているため、
----なるほど、レイスは使っていることがあるので良く知っているが、エンジェルか。
回復をしてくれるのは嬉しいが、敵にまで回復をするのは使いづらいなぁ……。
だが、ここまでの情報でも、結構有用な召喚獣の情報を得る事が出来た。
ドラゴンエッグ、レイス、そしてエンジェルか。
でも、まだ【召喚 レベルアップ可能】を使うにしては微妙なので、あと2体分の情報も見て決めようじゃないか。
(※1)
スキルの効果によって、対象者の攻撃力や防御力などのステータスを一時的に上昇させること。武器の切れ味を上げる効果のスキルなども、バフ系のスキルの一種として挙げられる
それとは逆に、敵の攻撃力や防御力などのステータスを一時的に下降させるスキルを、
(※2)
また、アイテムを持たせて、皆の体力を管理する者も、職業の適正に関係なく、ヒーラーと呼ばれている
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