MeTuberしていただけなのに⑧
そこから現れたのは一人の男性だった。 突然の登場にこの場にいる全員は呆気に取られる。
―――誰だ・・・?
年齢は竜希と同じくらいで若い。 彼らの様子を見ているとどうも知り合いのような感じではなかった。
―――コイツらは驚いた顔をしている。
―――予定にない登場だったのか?
―――・・・もしかして、俺のリスナーが聞き付けて助けにきてくれた?
竜希は喋れないため男が代わりに尋ねてくれた。
「お前は誰だ?」
「彼を助けに来た」
―――ッ・・・!
その声には聞き覚えがあり、誰であるのかいち早く気付いたのは竜希だった。
―――その声!
―――もしかしてリュカ・・・ッ!?
続けて女も同じように声を上げる。
「その声・・・。 もしかしてリュカくん!?」
「だったらどうする?」
特に反論もしない返しに女はみるみるうちに笑顔になっていく。
「わぁッ! めっちゃ嬉しい! 今日で二人の推しに会えちゃうだなんてもう最高!!」
女はスマートフォンを取り出しリュカに向けた。 カシャリと音を立て写真を撮る。
―――せめて顔を隠すくらいしろよ・・・。
リュカは隠すようなこともせず、ただただ無表情でカメラを向けられていた。 続けてリュカもスマートフォンを取り出し、この倉庫内の様子を撮影し始める。
「ちょっと! 何撮ってんのよ!!」
「それはこっちの台詞だよ。 俺の許可もなしにどうして撮ってんの?」
「スマホを向けても何も言わなかったじゃない!」
「俺が有名人であろうがなかろうが、無断で人を撮っては駄目だよ。 学校で習わなかった?」
「そんなもの習ってない!!」
「なら今から学べばいい。 撮った写真を消してくれたら俺もこの動画を消す」
「ッ・・・」
「勝手に撮られて嫌なのは同じ気持ちだろ?」
男が会話に割って入る。
「お前、コイツを助けに来たとか言っていたな。 どうしてここが分かった?」
「今一番情報を早く得られる方法って知っているか?」
「・・・」
「ツウィッターだよ。 身バレしたドラキのツウィートも凄かったけど、それ以上にドラキが集団に拉致されたっていうツウィートも多かったんだ」
そう言いながらツウィッターの画面を彼らに見せた。 遠目ではあるが確かに自分のことが書かれていた。
「おまけに写真付き。 すぐに場所が分かったよ。 場所は分かったけど、ここへ来るまでには少し時間がかかったけどな」
男は相手一人だからまだ楽勝だと思っているのか余裕の笑みを浮かべていた。
「ふぅん・・・。 それで? こんな大人数相手に一人で助けられるわけがないだろ? 俺たちはコイツに詳しくはないけど、お前も身を隠しているミーチューバーみたいじゃないか」
リュカと女が話している間にスマートフォンでリュカのことを調べていたようだ。
「だから何?」
「お前のことも十分に晒してやるよ」
そう言って男もリュカにスマートフォンを向けた。 それを見てリュカは溜め息をつく。
「これ以上罪を重ねない方がいいと思うぞ?」
「何?」
「もうじきここへ警察が来るから」
「はッ!?」
「流石の警察でも、人が拉致されている写真を見せればすぐに駆け付けてくれるってさ」
ここにいる彼らの顔色がみるみるうちに青ざめていく。
「何? 警察とか何も準備しないで俺が一人ここへ助けにくると思った?」
「くッ・・・」
「流石にそこまでミーチューバーは馬鹿じゃないよ」
リュカがそう言った瞬間、パトカーの音が聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます