異世界転生スライム研究

@yurayura1923

第1話 転生先にはエルフメイドが待っていた!

気が付くと俺は神聖な空気が満ちた森の中にいた。


どうやら異世界転生したようだ。

俺の名は湯川陽一郎。転生前は東京の大学で歴史の研究をしていた。


夜にワインを飲みながら論文を執筆していたら急に胸に痛みが走り床に倒れて意識がもうろうとした。


白い光に包まれたかと思うと脳内には「対象者を捕捉。魔法スキル全属性付与。称号:大賢者付与。転生先は魔の森:賢者の館。これより転生を開始します。」という無機質な音声が流れた。


もうろうとする意識の中で白い光がまぶしいほどに強まり身体が熱くなって気が付くと転生していた。


「ふむ、俺はどうやら異世界転生したようだぞ。なんてことだ。でも、こっちの世界は魔法があるようじゃないか。俺も異世界転生小説の主人公みたいにチートキャラなのかな。エルフやドワーフ、スライムなんかの魔物もいるのかな?ちょっとワクワクしてきたぞ。」


突然の出来事で多少戸惑ったが、独り言をつぶやいて深呼吸をする。

新鮮な森の空気が肺を満たしてくれて、ぼんやりとしていた頭がしゃきっとする。

周囲を見渡してみるとセコイアに似た巨木の森の中に一軒の洋館がぽつんとたたずんでいる。俺はその建物の前にいた。


「これがさっき脳内アナウンスで流れていた賢者の館かな?そうだよな。」


俺は、洋館の玄関のほうに歩いて行った。すると、中から黒髪に尖った耳、雪のように白い肌、少し茶色っぽい目の色の18歳くらいに見えるエルフの少女が現れた。


「初めまして、この館にメイドとしてお仕えしております、エルフ族のミユと申します。あなた様が新しい旦那様ですね。どうぞよろしくお願いいたします。先代の賢者様から事情を説明するようにと言付かっておりますので、どうぞ中へお入りください。」

 

俺は、突然のことで少々面食らったが何とか答えた。

「ああ、あなたが事情を説明してくれるのか。突然こっちに来たのでまだよくわかってないがよろしくお願いする。」


「はい、かしこまりました。」


俺は、メイドに案内されて屋敷の中に入った。

屋敷の中は静まり返っていたが、落ち着いた木の香りがしており、廊下の花瓶には可憐な花が生けられていた。


奥からはなんだかおいしそうなにおいもする。

特にお菓子の甘い香りが漂ってくる。


この賢者の館はなかなか住み心地がよさそうだ。

これから俺はここに本当に住んでいいのだろうか。

まあ、おそらくメイドも新しい旦那様と言っていたしこの屋敷の主人として暮らすことになるのだろう。


玄関を入って廊下を進むとこの屋敷の主人の書斎と思しき部屋に通された。

部屋には暖かな陽光が差し込んでおり、壁は本棚になっていた。

それに世界地図も貼ってある。

いくつか風景画と思しき絵画もかけてある。

どっしりとした木製の書斎机と椅子が用意されており、メイドがその椅子に座るよう促すので、さっそく座った。


「旦那様、改めましてようこそ賢者の館へ。これからこの館とこの館の主でいらっしゃった先代の賢者様についてご説明いたします。この館には人族の大賢者マーリン様が住んでいらっしゃいました。マーリン様はこの魔の森の奥地でひっそりと魔法研究を行っていらっしゃいました。この館には旦那様とわたくしだけが暮らしておりました。建物は地上階は1階だけですが、地下は第88階層までございます。各階層には魔法研究の資料や、宝石や金貨、マジックアイテムなどの財産のほか、先代様の研究対象として飼育されていた複数の魔物と魔獣が暮らしております。また、魔法の実験場やポーション調合のための専用の研究室もございます。これらのすべてが今日からあなた様のものとなります。マーリン様は自らの寿命が尽きるに際し、その膨大な知識と財産を継承できる者をお探しになり、あなたのことを召喚されました。あなた様はマーリン様に選ばれた後継者です。わたくしはマーリン様からあなた様にお仕えすることを勧められております。そして私自身もお仕えしたいと思っております。どうぞこれからよろしくお願いいたします。」


メイドはすらすらと状況を説明してくれた。

なるほど。すごい幸運が俺にはめぐってきたらしい。なんとなくではあるが状況はつかめてきた。

じゃあ、自己紹介をするとしよう。


「ありがとう、なんとなくだが状況はわかったよ。まだ自己紹介をしていなかったね。俺の名前はユカワ・ヨウイチロウ。年齢は27歳、よろしく。」


「よろしくお願いいたしますヨウイチロウ様」

「こちらこそ、ミユ。ミユと呼んで構わないかな」

「はい、かまいません。それではお疲れだと思いますので、食堂にいらっしゃいませんか?お菓子とお茶をご用意いたします。そのあとで屋敷の案内をしようかと思うのですが、いかがでしょうか」


「それはいいね。なんだかいい匂いもしているし。お菓子はミユの手作りかな?」

「はい、お菓子作りはわたくしの趣味でもございますから楽しみになさってください。」

「それは楽しみだ。早速行こうか」

「ではこちらへどうぞ。」

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