哀しい記憶を夢に現せて

ももいろ珊瑚

埃の積もる納戸の奥で


妙にリアルで不思議な、だけれど辻褄があう夢を私はたびたび見るのです


どんな?ってデジャヴをひしひしと感じる夢を



◇◇◇◇


 納戸の掃除を言い渡されたので、裸電灯に手を伸ばし点けてみた。

 あっちもこっちも綿状のほこりが積もってる。

 雑巾も持たずのばつ掃除。 何のどの罰だかも判らないこんなこと、はなからやる気など無い。


 取り敢えず、入口に提げられていた手箒てぼうきで手近な所からっていこうか、と奥の方の行ける所まで入って行く。

 窓なんて無い。 ほうきを掛けたら、きっと舞い散るちりを吸い込んでしまうわ。



 一番奥の壁の胸元の高さに、10㌢くらいの幅で木製の枠が渡してある。

 こんなの何に使うのだろ?

 上には手の平サイズの人形みたくな物と、それより小さいミニチュアの機材のようなのが点々と置かれている。 その上にも、やはり綿のようなほこりがかかっていた。

 どこから始めるか考えるのも面倒臭さく思うし、此処から片せていこう。

 あまりほこりが立たないよう、そろそろとそれをっていく。

 くのに邪魔で、除けようと人形に触れたら驚いたように人形が起き上がった様に見えたが、気にせずその下をどんどんいてちりほこりを下に落としていく。



 「やっと来たのか」


 「この人が来るとは思わなかった」


 「あのは可哀相だ」


 「しかし照らさぬわけにもいくまいよ」



 聞こえるのは誰の声? これらの人形? まさか……。



「待っていたのだ、訊かなくともお前には分かるだろう、とにかく私と一緒に」


 一際ひときは若く凛々しい面持ちをした男の人形が、私を鼓舞するように伝えて来て……胸の奥の郷愁を感じる部分に……それは響いた。


――そう、私が行かなければ! 何処に?


 私は人形たちの棚を瞬時に見渡す。

 人形が丁度たずさえ易そうなライフルが、揃えて立て掛けられている。

 男の人形に言われる……否、伝わってくるままに、それとその人形を片手で鷲掴わしづかみして後ろを向けば――



 人形の世界が拡がっていた。



 そこへ男の人形を置いた途端に、私はその世界へと入っていった。

 人形の世界に同化している私も人形になったのか?

 否、何度も足を運んでいる世界だ、忘れているだけ。

 そうだ、私はこの世界に降り懸かる問題を解決する為に喚ばれるのだ


 人形の世界では無い。

 現実とは別の、しかし並行に流れているリアルな世界=人とは違う住人の暮らす世界。

 そこには私を待ち望む人達と、待っていてくれる愛おしいあの方が生きている。


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