ヤキモチ

※今回は140字以内の縛りを解き放ってみました


トップモデルとして多くの老若男女を魅了しているジュンは、いつ何時も快活さを絶やさないと多くの芸能関係者から評価されている。

そんなジュンが雑誌撮影の休憩中、珍しく思い詰めた表情でルイボスティーを飲んでいた。同じ現場に居合わせた同業者にして友人でもあるハルは、初めて見るジュンの姿に非常事態かと胸をざわつかせながら「どうした」と声をかけてみた。


「恐ろしく元気無いじゃん」


「んー…同居人がね」


素っ気無く返して、ジュンはルイボスティーを啜る。

ジュンの同居人といえば前科持ちの元ヤンで、路上生活をしていたところをジュンが住まわせているという怪しい人物。

とうとう何かトラブルが起きたか─ハルは身構えながら「何かあった?」と話の続きを促した。


「TVでヨドル見てデレついてんの〜」


「はい?」


"ヨドル"というと、ジュンの母国で女性を示す言語"ヨジャ"と歌って踊るあの職業"アイドル"を組み合わせた言葉。つまりジュンの母国を拠点とした女性アイドルを示す。

ハルの記憶にある同居人は色黒の筋肉質で見るからにセクシーな女が好きそうな風体をしており、セクシー路線のグループが多いヨドルに鼻の下を伸ばしても何ら違和感が無い。むしろ男同士、一緒に応援すれば良いのでは。ハルは「呆れた」と頭を抱えた。


「あ〜ん呆れないで〜」


「何かと思ったらただのヤキモチかよ。可愛い女の子にデレるのは男として至極当然のことじゃん」


「俺は当たり前じゃないもん〜お前は大丈夫そうだから話すけど俺は」


ジュンが何か言いかけた瞬間、どこからともなくジュンのマネージャーが飛んできて、ジュンの腕を引いて撮影スタジオを出てしまった。

取り残されたハルは過去にジュンが取った言動を思い返し彼が何を言いたかったのかを察したが、気づかないフリをすることに決めた。

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