第1話 枯れ木のシエラ
■作者のねらい:主人公、シエラの視点を中心に物語が進みます。〇孤児院の裏山 は、聞き手の興味を引けるようにスピード感ある感じで。
マルベリーマッシュルームはカロリーの低いチョコレートケーキ。
■登場人物
盗賊A
母ユリミエラ(36歳)
ユーリ(14歳)
シエラ(13歳)
シエラ(N)←ナレーション
村の男(40代)
子どもA(10歳)
子どもB(5歳)
■シエラの特徴
おてんばで基本は明るい。しかし、自分に自信がなく、自己肯定感が低いと言う一面も。母とユーリの愛情に応えたくて、努めて明るく振る舞おうと無理をする。
■ユーリの特徴
最年長の兄として、リーダーシップと責任感がある。
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〇孤児院の裏山(夕方)
盗賊A「へへへ、俺たちから逃げようったってそうはいかないからな!」
ユリミエラ「ユーリ、急いで行きなさい。シエラと一緒に!」
ユーリ「行くぞシエラ!」
シエラ「お母さん!」
ユーリ「振り返るなシエラ!」
シエラ(N)『これが、わたしと母の別れだった。もしわたしに力があればこんなことにはならなかったのに。神様、どうか無力な私に、みんなを守れる力をください!』
〇あれば主題歌など
〇孤児院の裏山(昼過ぎ)
シエラ(N)『時は半日さかのぼり、わたしは孤児院の裏山にいた。背の低い木の後ろに隠れ、目だけをピョコンと出して慎重に様子を伺う』
シエラ「よし、誰もいなくなった。ふふっ、待っててね、わたしのマルベリーマッシュルーム!」
シエラ(N)『ひとつ年上の兄、ユーリの見立てが間違いでなければ、秋の味覚マルベリーマッシュルームがそろそろ食べごろを迎えるはずだ。持って帰ればきっと、孤児院のみんなも喜んでくれるだろう。胸を弾ませたわたしは、収穫のカゴを抱え、足取り軽く
シエラ「……きゃっ!」
村の男「お前だな、孤児院にいる枯れ木のシエラは。間違いようもねえ。黒っぽい髪色の人間しかいないこの村に、枯れ木のような青白い色の人間は一人しかいないからな」
シエラ「おじさん誰? 嫌だ、離してよ!」
村の男「お前、うちの子どもに何したんだ⁉ この村のゴミが!」
シエラ「んぎゃっ! ……こ、子ども?」
シエラ(N)『わたしは痛みと恐怖で涙をにじませながら、あることを思い出した。それはつい先ほど、山に入る前の出来事だ』
〇孤児院の裏山の手前(正午)
子どもA「やい! 枯れ木のシエラ!」
子どもB「あっちいけー! 枯れ木のシエラ!」
シエラ(N)『背後から『枯れ木』という言葉が聞こえてきた。その理由は簡単。わたしの髪の毛は
子どもB「変な見た目で気味悪いやつー!」
シエラ「んん〜っ! く……」
SE 足音
シエラ(N)『ここで喧嘩したら、きっとお母さんが悲しむ。そう思ったわたしは歯を食いしばり、事を荒立てないよう背を向けた。それなのに、面白がる子どもたちがわたしを追ってくる』
子どもA「えーい、これでもくらえー!」
シエラ(N)『子どもたちが石を投げた。背中に石が当たる感触がし、せっかく押さえた怒りが再び込み上げてくる』
シエラ「あんたたち……んもおぉぉ、怒ったんだからっ!」
シエラ(N)『わたしは持っているカゴに手を入れた。そして、さっき収穫したばかりの真っ赤なコチニールの実を一つ取り、子どもに向かって投げつけた。投げた実がまんまと頭にヒットし、パンッと弾けて顔面が真っ赤に染まる』
子どもB「わっ…! う…うえぇぇぇぇん」
子どもA「あぁっ! 何するんだ、お父さんに言いつけてやるぞ!」
シエラ「うるさいっ、二度と来るなぁぁっ!」
シエラ(N)『もう一つコチニールの実をつかんで振りかぶると、顔を真っ赤に染めた子どもたちは一目散に逃げて行った。それがつい30分ほど前のことだ。……そうか、このおじさんはあの子どもたちの父親か。状況を把握したわたしは、髪の毛をつかんでいる男を睨み返して言った』
シエラ「わたしのことを枯れ木って言ったあいつらが悪いんだ!」
村の男「それのどこが悪い! 枯れ木のように青白くて気味が悪いのは事実だろうが。ユリミエラも良くこんなガキなんか拾ってきたもんだな!」
シエラ「うわぁあっ! や、やめてぇっ!」
シエラ(N)『わたしは髪の毛を引っ張る男の手を掴み、無我夢中で力を込めた。すると、手の力が少しだけゆるみ、男がひるんだのを感じる』
村の男「ん? な、なんだこれは⁉︎ この野郎! 小娘が調子に乗りやがって!」
シエラ「キャァッ!」
シエラ(N)『男がわたしを投げ捨てた。勢いよく草の上にひっくり返ると、今度は襟を掴まれて大きく揺さぶられる』
村の男「次にまた生意気なことをしてみろ。こんなもんじゃ済まないぞ。分かったかぁ!」
シエラ「んぅぅっ!」
シエラ(N)『悔しい。いつもこうだ。平穏に生きることも許されない。……なんで生まれてきてしまったんだろう。圧倒的な暴力と無力な自分に、絶望した時だった』
ユーリ「あ! やっぱりここに来てたのか」
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