第24話 モフモフ召喚士ララ、降臨!

 

「あうあうあう……いくらふわふわ温泉とはいえ、ララ……大胆な事をしちゃいました」


 湯毛にあてられて少々興奮していたのか、裸のままリーノに身体を寄せるという行動に出たララ。

 案の定、目を回したリーノを慌てて介抱し……露天風呂に隣接した休憩施設に寝かせる。


「はうううううっ……ララも色々見ちゃいましたっ!」


 お互い裸だったので、手当てするときにどうしても”見えてしまった”のだ。


 ク○ビ○チのアッカちゃんがいつも言っている男の人の……イメージしていたよりは可愛かったかもしれない。


「いけませんいけませんっ!」


「の~ないピンクになってはいけませんっ! ララは耳年増でいつも発情気味のミドリィちゃんとは違うのですっ!」


『わうんっ!?』


 当人が効いたら抗議の鳴き声を上げそうなことを口走りつつ、頭と尻尾をぶんぶんと振るララ。


「でもっ……」


 ”アレ”以外に色々見えたリーノの身体を思い出し、表情を曇らせるララ。


 身体に残るたくさんのアザ、傷……いくら最近レベルアップしたとはいっても、厳しい戦いを繰り広げてきた事が想像された。


「ここは……ララがもう一肌脱ぐべきですねっ! むんっ!」


 故郷を救ってくれた英雄であるリーノ……耳と尻尾の撫で方がとっても優しくて、生まれて初めて身を委ねてもいいと感じた男性。

 彼の役に立とうと、改めて気合を入れなおすララなのだった。



 ***  ***


「ということでっ! いつもこっちに来ていただいてばかりなのでっ!」

「大変な状況にあるリーノさんをお助けできるように、ララもそちらに行けるようにしてみましたっ!!」


 ふわふわ温泉でララの肌のぬくもりを感じ、目を回した僕。

 いつの間にかララが休憩室に運んでくれていたようで、意外にパワフルな彼女に惚れ直していたところです。


「あとっ……リーノさんの、ちょっとカワイイですね」


「!?!?!?」


 な、なんの事だろう……頬を染めながら意味深発言をする彼女にドギマギしつつお城まで戻って来たのだ。


 いつもの巫女さん?衣装に着替えたララは、広間に入ってくるなりそう宣言する。


 ララが……僕たちの世界に来れる?


 そうなったら願ったりかなったりというか、嗅覚だけは鋭い3人娘に邪魔されずにもっとララと進展することも!?


 相変わらず沸騰している僕の脳内を知ってか知らずか、ドヤ顔ポーズで説明を続けるララ。


「リーノさんのスキルにそれっぽいのがあったので、ララのてくにっくでちょいちょいっと改造しときましたっ!」


 え? スキル一覧を確認した僕は、”魔獣召喚LV3”というスキルがいつの間にか”ララちゃんカムカムLV1”に変わっていることに気づく。

 ……習得スキルを書き換えてしまうなんて、ナ・デナデの魔法は相変わらずとんでもないな。


 ただ、ララたちは物理戦闘はからっきしだ。

 それに、ナ・デナデの魔術は間接効果に特化しており、攻撃魔術の威力も低い……ララには申し訳ないけど、危ないと思うんだよな。


 僕の懸念に、ふんすと鼻息も荒くララが宣言する。


「だいじょ~ぶですっ! 身体能力は”とらんすふぉーむ”である程度カバーできますし、ララのモフ法耐性は歴代ブッチですのでっ」

「そちらの世界のモフ法くらいならかきんかきんっ、ですっ」


 ……つまり、耐性が高く魔術はほぼ効かないという事か。

 すべての魔術が効かないSランクモンスター、メタルガーゴイルみたいだな……。


 やけにアピールしてくる彼女に押し切られる形で、僕はララの”召喚”を試してみることになった。


「おおおっ!? いよいよ処○をこじらせて余裕の無くなったララ様が押しかけにゃんにゃんするつもりだにゃん!」


 がいんっ!


 性懲りもなく余計な事を口走り、タライの下敷きになるアッカを横目に見ながら、僕は向こうに戻るのだった。



 ***  ***


「……ということで、ララちゃんを召喚してみることになったと」


「そ、そうなんだよ……ね、ねえラン!」

「初めてへのイントロダクションはどっちから行くべきかな……はっ!? そうか、バラを……黄色いバラを買ってこないと!」


 戻ってくるなりやせ我慢していた余裕が消え、ランに泣きつく。


「落ち着け相棒!」


「……ま、二人ともまんざらでもないんだろ?

 似た者同士で相性もよさそうだし……自然に上手く行くさ」


 くっ……これが大人の (同い年だけど)の余裕か……。


 ランの言葉に少し冷静になれた僕は深呼吸を一つ……ララを召喚するスキルを発動させる。


「ララちゃんカムカムLV1っ!」


「……そのネーミング、もう少しどうにかならなかったのか?」


 ランのツッコミに答える余裕もなく……複雑な術式に込められた魔力が反応し。


 ポンッ!


 軽快な音とともに現れたのは、キラキラと光を放つプラチナブロンドの毛並み、くりくりとしたサファイアのような瞳。

 モフモフの犬耳と尻尾を持つ……とってもかわいい


『はううううっ! あのあの、このモフ法はまだ発展途上なのでっ』

『今日の所はこのお姿で失礼しますっ!』


 もふもふワンちゃんはぷにぷにの前足をわたわたと振る。

 声はララそのままなので……と、とってもかわいいっ!


 ぎゅっ!


『ふわわわっ?』


 感極まった僕はララを抱き上げ、抱きしめる。

 人型もいいけど、このララもかわいすぎるっ!


「……さすがリーノだぜ」


 こうして、僕たちの逃亡生活にまた一人 (一匹?)頼もしい仲間が加わったのだった。

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