第12話 スキル辞典リーノ、人生最大の?ピンチ
唐突に降ってわいた人生最大の?ピンチ。
呪いを解く代償に、僕の未来 (下方面)が失われてしまうという。
その重大さを良く分かっていないララが呪いを解こうとする。
必死に彼女を止めようとする僕……その時謎の光がふたりを包んだ。
ってこれは、”ホールドダウン”の発動?
……どうやらララの行動を止めようとして、無意識にスキルを発動させていたらしい。
って、マズい!
このままだとララの”魔術”や”動き”を封じてしまう。
「くっ……ララ、ごめん!」
慌てて僕は身体を引くが……。
「いえいえっ、大丈夫ですっ!」
ぱしゅん!
ララがふん、とその太眉に力を込めると、”ホールドダウン”の術式があっさりと霧散する。
「……はっ?」
「はふぅ……ララはナ・デナデ一番の耐性持ちですのでっ! ほとんどのデバフモフ法は効きませんっ!」
「でもこのモフ式は……相当に相当に高度ですっ!」
「これは
NEWAZA……なぜか言霊を感じる響き……僕しか使わないと思っていた”ホールドダウン”は、ユニークスキルだという事だろうか?
ユニークスキルとはごくごくまれに発現する、世界で一人しか使えないスキルで、初級スキルでも上位スキルに匹敵する効果を持つ。
……効果はそこそこだけど制限ありまくりの”ホールドダウン”がそうだとは思えないんだけどなぁ。
「はいっ! 残念ながらリーノさんのNEWAZAは十全の効果を発揮するには未完成なのですっ……ですが、ララのモフ法と合わさればっ」
ぱきぱき、ぱきんっ!
一度は霧散した”ホールドダウン”の術式が強化されていく……。
「一時的にですが、効果が増幅されますっ」
「これがさっき言いかけた呪いの”穴”ですねっ!」
「リーノさんのNEWAZAが、呪いに干渉……一時的に呪いを無効にするのですっ……それだけじゃなく」
脱げたサンダルを、おもむろに投げるララ。
綺麗な放物線を描いたその先には、一匹のゴキ○リが。
ぺちん!
ゴ○ブリが退治された瞬間、身体の中に生まれる手ごたえ。
「こんな感じに、ゲットできる経験値が数倍から数十倍になるのですっ!」
「ララとリーノさんはもう”契り”を交わしてますので、ララがゲットした経験値も一緒に入りますよっ!」
ララの言葉は本当で、1匹のゴキブ○を退治しただけで、僕のレベルは31へと上昇していた。
……なるほど、前回の召喚時にこの効果が発動、たかがスライムとはいえ、数十倍の経験値が入ったことで僕は一気にレベルアップしたという事かっ!
「せいかいですっ!」
「さっき言ったみたいにララは耐性持ちですのでっ!」
「ララにNEWAZAを掛けてから魔物退治をして頂ければ、リーノさんはレベルアップし放題ですっ!」
おお……可愛い獣人少女のララにギュっとしてからモンスターを倒せば、僕は無限に強くなれると……!
”不能”になるリスクを考えれば……”呪い”はひとまずこのままでもいいかもしれない。
僕は呪いを解く危険をララに説明 (不能の事はぼかしました)し、唐突に訪れた人生最大の危機を乗り切るのだった。
「……そしてそしてアッカ? 救世主様の前でゴキちゃんを見逃したのは、特大バッテンだよ!」
「30分後にお城裏に来てね? ララちゃんスペシャルコースをプレゼントするからっ!」
「のおおおおおおおおっ!?」
「ララ様、勘弁だにゃんっ!?」
きらりと光ったララの視線に、震えあがるアッカ。
「……さてっ! それでは歓迎の宴を催しましょう!」
ぱんっ!
ララが手を叩くと同時に、運ばれてくるたくさんの料理。
こうして、呪いの秘密を解き明かしさらにレベルアップした僕は、にぎやかな彼女たちと豪華な昼食を楽しんだのだった。
……30分後、ピカピカになって戻って来たアッカが
借りてきた猫のようにおとなしくなっていたが、一体何があったのだろうか?
「匂いが~アッカの匂いがフローラルになったにゃん……」
やけにいい香りを漂わせた彼女は、落ち着かないのか宙を見上げてうなされていた。
調子に乗ってララを怒らせないようにしよう。
僕はそう心に誓うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます