以心伝心
先に動いたのは2人だった。
ミオが前衛でテオが後衛の陣形。
だが、二人とも俺に肉薄する。
その判断は正しい。
俺に前衛と後衛を分けてる意味はそれほどない。
俺は接近戦・中距離・遠距離のどこでも戦闘ができる。
特に中距離・遠距離は俺の得意とするところ。
テオが押し負ける結果が濃厚になる。
それが分かっているからこその近距離での戦闘を選んだ。
近距離ならば人数の有利と連携が取れる二人に分がある。
俺は剣を構え、前衛のミオの攻撃を受け流し、受け止めながらテオの警戒を怠らない。
テオは俺の死角に移動し魔法を打つ動作に入った。
「
通常の攻撃魔法ではなく、属性魔法。
しかもその中でも速度の速い雷系の魔法だ。
「
俺は対魔法の魔法を使ってテオの攻撃を無力化した。
全ての魔法を無力化することはできないが、魔力差がある相手には有効な魔法である。
「以心!」
「伝心!」
テオの攻撃が無力化されるのは予想の範疇だったのか、2人は慌てずに次の手に移った。
スキル『以心伝心』★★★
・このスキルを持つ者は意思疎通が離れてもできる。
このスキルは星が3つの代物で俺としての解釈は離れていても意思の疎通ができることがこのスキルの評価ポイントだった。
だが2人の解釈は違った。
スキルを所持している2人だからこそ、このスキルの仕様が理解できたのだろう。
このスキルの真意、それは意思の統合だった。
2人で意思を互いに交換するのではなく、2人の意思が1つとなり共有する。
これは扱いが難しいスキルだと思った。
「だがこれは……っく」
連携と言えない怒涛の連続攻撃が俺を襲う。
2人の距離が異様に近く、攻撃するのに互いが邪魔になると思ったがそんなことはなかった。
まるで手足が4本ある人物と戦ってると思えるほどの一体感だ。
《体感覚延長》
あまりにも怒涛の攻撃だったので致し方なくこのスキルを使った。
そして……。
「
俺は爆発魔法を使って俺と2人の距離を無理やり開けた。
俺は防御魔法を展開して無傷だが、どうやら2人も無事のようだ。
「今ならできるかな」
「できると思うよ」
「ならやろう」
「うん」
2人が何かするようだ。
最大限警戒して構える。
「
「
スキルか?
だとしたらどのような効果のスキルか。
2人は再び肉薄した。
直線的に近づくのではなくに互いの位置を入れ替えたりタイミングをずらしてながら攻撃のタイミングを読ませない。
「
「
テオがミオを壁として魔法を放つ態勢に入る。
だが、そんなことはさせないとテオの魔法を無力化する。
だが。
「ぐがぁ!?」
電撃は壁役のミオから放たれた。
「武器を……!?」
さっき近づく時に武器を交換したのか。
「行けー!」
「がんばれー!」
「そこだー!」
「チャンスだよー!」
アーシュの声は分かるが、キルケーラなどの他のメンバーの声が聞こえる。
あれ?
俺を応援する声がない。
いや、そんなことを考えてる時間はない。
電撃を受けたことによるマヒした身体を身体強化で無理やり動かす。
「「やぁああああ!!」」
2人は必至な目をして俺に必死の一撃を入れる。
「……見事だ。二人とも」
俺は地面に倒れた。
「「主様!? し、死んじゃったです!!」」
いや、死んでないから。
「上手く倒れ過ぎたか」
「「あ、生き返ったです。よかったです」」
いや~負けてしまった。
「強かったよ、2人とも」
「「うう”わ~~」」
頑張ったのだろう。
考えたのだろう。
悩んだのあろう。
その努力が報われた瞬間なのだろうな。
2人の頭を撫でる。
「お怪我はありませんか? エルデール様」
「問題ないよ、キルケーラ」
「エルデール様の問題ないは信用できないので回復しますね」
「……よろしく」
まぁ実際、いまだに痺れが抜けないからな。
「あそこからならまだ反撃の機会はあったのでは?」
エルファスがそんなことを言ってきた。
「電撃を受けた時点で俺の負けだよ。俺は防御に専念していたんだ。その防御を破って一撃入れた。二人の勝利だな」
「「うう”わ~~」」
まだ泣いてなのか。
ほら顔がグチャグチャじゃないか。
「そうですか」
「あぁ」
まぁ実際あそこから覆すことは可能なのだが、それは大人げないだろう。
俺、5才だけどね。
「あっはっはっは! 俺の勝ちだな、ジーニアス」
「そうだな。賭けはお前の勝ちだ。一杯奢ろう」
「よっしゃ~」
「賭けとは?」
「「あ……」」
エルファスが2人を詰問している。
面白いのでそのままにしておこう。
「手伝いは終わったのか?」
「まだ終わってはいませんが、お昼なのでエルデール様を呼びに来ました。セバスさんも捕まってしまって手伝いをしています」
ガインがそう答えた。
セバスが顔を見せないから変だな~と思っていたが、手伝いに駆り出されていたか。
「それじゃお昼ご飯を食べに行こうか」
「午後はどうしますか?」
「明日は謁見もあるし忙しいから稽古は休みにしようか。まぁ自主練は構わないよ」
「分かりました」
ガイン、ダビデール、キルケ―ラの3人は毎日稽古を欠かさない。
エルファスがいなくても自分たちで日々鍛錬をしている。
そんな3人を見ていると俺も頑張らないとと思えてくる。
着替えて食事をする部屋に向かうとすでに母さんと親父がいた。
楽しそうに会話してるようで仲は相変わらずのようだ。
「すいません。遅くなりました」
「いや、問題ない。食事にしよう」
「えぇ。そうね」
それからは家族で食事をし、楽しく談笑していた。
妹たちの話もでたり俺の仲間たちの話などをした。
「エルデール。少ししたら俺の部屋に来い。明日の件で話を詰めよう」
「分かりました」
一足先に部屋を後にした親父はそんな一言を残して去っていった。
明日の件ってことは帝国と共和国の謁見か。
まぁ俺は飾りだから頷いたり、笑ったりしてれば問題はないだろう。
「エルデール。明日は大丈夫? 緊張してないかしら?」
「大丈夫ですよ、お母さま」
「大丈夫そうね」
そう言って頭を撫でてくれる母さん。
その後妹たちを抱っこしに行き、親父の待つ部屋に向かった。
一緒にいるのはエルファスだけで他は手伝いに向かった。
「エルデールです」
「入れ」
部屋をノックしてすぐに入るように言われた。
まぁ来るのが分かっていたからな。
部屋に入ると奥の作業机ではなく中央にあるテーブルをイスが挟む形でセットされている方に親父は座っていた。
「まぁ座れ」
「はい」
机の上には資料が広げられていた。
「これが明日来る者たちの資料だ」
「……多いですね」
帝国と共和国で合わせて30人近い人たちが来るようだ。
多分王宮に入るから護衛の冒険者とか金で雇われた人たちはこの数に入らないのだろう。
「双方気を利かせて数を減らしているが、まぁこんなもんだろうな」
「部屋はあるのですか?」
「メイドや執事に割り当てた部屋を開けている」
あぁこれがこの忙しさの原因か。
「だが、寝床が足りん。どうするべきだろうか」
「え? 2段ベットとかにすれば良いのでは?」
あ、ミスった。
「2段……」
この世界に2段ベットはない。
そもそもベットは高級品であり重ねることはあり得ない。
現代では材料はあるが、空間がないので重ねることで効率的に暮らすためのアイディアだ。
仕方ないか……。
「ベットをか?」
「お父さまが想像している豪華で大きなベットではありませんよ。簡易なベットを重ねて一つのベットスペースで2人が眠るようにできる代物です」
俺は紙にベットの絵を描く。
紙は貴重品だが気にしたら負けだ。
「狭いな。棺桶よりも一回り大きい程度か」
棺桶で例えないで。
たしかに広さで言うとそうだけども。
「エルファス。コレをセバスの元に持って行け」
「ぇ……ゴホン。分かりました」
めんどくさいと思ったな。
エルファスは紙を持って部屋を後にした。
「すぐに作れる物なのですか?」
「作れても2、3個が限界だろう」
なんでそんなことのためにエルファスを使いに出したのだろう?
「これを」
渡されたのは手紙だった。
「……ん? ……え? ……はぁ!?」
疑問の三段活用。
無意識にやってしまっていた。
「シャシャターナ姉さんが法国で暗殺されかけ命からがら逃げて、偶然こちらに向かっていた帝国の一団に保護された、と……」
「そのようだな」
親父はこれを俺に見せるってことはこれからどうするかを決めろってことかな?
「お父さまはどう考えていますか?」
「お前が考えろ」
やっぱりー!!
そう言われると思ったんだよ!
まぁ一先ずはシャシャターナ姉さんの命があって良かった。
「法国には王国からも圧力をかけたがこうなった。6女が生きてると障害になる連中がいるのだろうな」
俺が提案した結果がこれだと親父は言ってるのだろう。
まぁ提案しただけで他の面倒ごとを親父に丸投げしたから何も言えないけど、親父は俺の考えを汲んで行動してくれたのだ。
親父に責任を擦り付けるのはお門違いだな。
「お前はこれをどうする?」
シャシャターナの現状は亡命してきたと同じ状態だ。
こちらに助けを求めてきたのは友好関係があり保護される算段をしたからだろう。
まぁ彼女は天才だし大人顔負けな考え方をする。
そんな彼女が友好関係があるから保護してもらえるとかハッピーな妄想を膨らませて来たとは考えづらい。
おそらく帝国との合流は想定の範囲内というか予定調和だったと考えるべきだろうな。
そして帝国側から法国の者を保護した手紙を受ければ王国はそれを無碍に出来ない。
王国としてのメンツもあるし、何より共和国ではなく帝国に保護されたのが彼女の最大のクリティカルだ。
王国が友好国である法国の6女を無碍にすれば帝国はその隙を逃さずに彼女を取り入るだろう。
そうなれば王国と法国の友好にヒビが入る。
そして帝国と法国で繋がりができて王国に批判する結果になる。
そして帝国・法国対王国の衝突となるのが最悪の結果だ。
彼女としては命が助かるならどちらでも構わないと思っているのだろう。
それだけ必死になっているということ。
いや、俺に対するメッセージだと受け取ろう。
彼女はそれだけ危険な状態だと思って良いのだろう。
となれば彼女を助けるのは俺の責任であるはずだ。
「見捨てるのか?」
「いえ、助けます」
彼女は俺を弟と言ってくれた。
笑顔を向けてくれた。
それが彼女の演技で計算だとしても構わない。
女性が助けを求めたのなら手を差し出すのが男だ。
「考えがあります」
「ほう。言ってみろ」
なるほど。
このためにエルファスを部屋から出したのね。
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