残念勇者R 〜残念な勇者が若返り再び異世界を救う!?〜
明日は五月雨
プロローグ 骸骨騎士は舐めたらアカン!
俺の名前はカミバライ=ジン。
出身国日本。
そして今は一国の国王だ。
どうして俺が国王になったのか、こうなった訳は16年前に俺が日本から『異世界エレベーター』に乗って来たことが原因だ。
16年前のある日、飲み会で飲みまくり酔っ払っていた俺は、遊び感覚で住んでいるマンションのエレベーターボタンを適当に押しまくっていた。
それが異世界エレベーターの条件だと知らずに。
何度目かの上下をした後、5階で止まった時にこのマンションでは見たことのない美少女がエレベーターに乗り込んできた。
その少女を乗せたまま、なぜかエレベーターは何もボタンを押してもいないのに上に上にと上がっていった。
チーン。
エレベーターが止まり、ドアが開くとそこには一面草原が広がっていた。
「あれ? 俺エレベーターに乗っていたはずだよな? はぁぁああ!」
めちゃくちゃ驚き、酔いが覚めてしまった俺は帰ろうとエレベーターのボタン探すも、すでにエレベーター自体が消えており、先程の少女が驚いた表情のまま立っていた。
「あなたは誰? なぜいきなりここに現れたの?」
「は? 何を言ってるんだ? 現れたって君も途中まで一緒にいただろ」
「私は魔王軍から逃げてる途中ここで休んでいたのです。そしたらあなたがいきなり現れて」
「はぁ? 魔王軍だと? お前現代日本でそれはないぞ。それよりここはどこなんだ? マンションのエレベーターに乗っていただけなのに、なんでこんなところにいるんだ」
「あなたこそ何を言ってるの? ここはリスタール王国の北の草原よ。最近隣国が敗れてとうとう魔王軍がこの国に攻めてきたというのに知らないなんて」
彼女の言ってる意味がよくわからなかった。
魔王軍が攻めてくるとかあり得ないだろ。そんなゲームみたいな事ってあるか? ないよな。だとしたらこれは夢だな。
頬をつねると結構痛かった。夢にしてはリアルな痛みだ。もしや寝ぼけて寝たまま自分の頬をつねっているわけじゃないよな? 俺に限ってそれはないよな。ははは――。
こうして勝手に1人でこれは夢だと納得していると。
「キャーー!!」
草原にいる少女が悲鳴をあげた。
何事かとあたりを見渡すと、草原の奥地にある森の中から骸骨の馬に乗った骸骨の騎士が飛び出してきた。
うん完全に夢だな。あんな生物ファンタジーの世界にしかいないはずだし。
「何をぼーっとしているの、逃げるわよ!」
少女が俺の手を握り騎士から逃げるように走り出す。
「逃げなくても大丈夫だよ。これ夢だし」
「あなた何を馬鹿なことを言ってるの!? 追いつかれると殺されるわよ」
夢とはいえ、美人な女性に手を握られるだけでなく、今にも泣きそうな表情で必死に走っているのを見ると、これ以上は何も言えず一緒に走って逃げた。
しかし、骸骨とはいえ相手は馬に乗っていたので――。
「フフフ、ヤットオイツイタゾニンゲン」
あっという間に追い抜かれ、骨でできた槍先をこちらに突き立てる。
「ううぅ。私ここで死ぬの? やだやだ! まだやり残したことたくさんあるのに!」
死の恐怖からか、少女はとうとう泣き出し立ちすくんでしまった。
夢だから死ぬわけないのに。
けど夢とはいえ、やっぱり女性に泣かれるのは嫌だな。
よし、俺も男だ! ここはどうせ夢の中だし、せめてあの娘の前ではカッコつけよう!
俺は骸骨の騎士を睨みつけ指差しながら。
「おいお前! いい加減にしろ! さもないと俺様がぶっ飛ばすぞ!」
骸骨の騎士を前に堂々と言い放つ俺。
くぅ〜人生で一度はこんなことしてみたかったんだよな〜。
「ナラバシヌガイイ」
骸骨は俺に向けて槍を突き出してきた。
平気平気どうせ夢だし。
ザクッ。
あれ? 胸が熱くて痛い。
何だこの痛みは。痛い、痛いっーーーーー!!!!!
「きゃぁああああああああああっ!!」
隣で少女がサイレンのように悲鳴をあげていた。
ポタポタと俺の血で草が赤く染まっていき、俺は草原に倒れた。
ドクドクとコップから水がこぼれたように、俺の体内から外へと血が流れる。
「これ……夢じゃ……なかった……の……か……」
俺の意識はそこで完全に途絶えた。
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