第18話 更に加速するダンジョン攻略

 次の日。

 普段の生活からはあり得ないほど早起きした俺は、パパっと身支度を整え、即座にダンジョンに向かうことにした。


「経験値豊穣の指輪(特上)」を早速使ってみたいこともあって……昨晩は興奮しっぱなしになってしまったからな。

 早く起きてしまったのも、間違いなくそのためだろう。


 玄関で「時止めの神速靴」を履き、家を出ると、早速俺は結界を足場に走り出した。

 走り出すと、周囲の風景がみるみる変わっていき……二分もすると、俺はいつものダンジョンに到着した。



 ダンジョンに入ると……途端に力が漲るのを感じる。

 足場としての結界を展開することで消費したMPが、一気に回復したからだ。


「ダンジョン内魔素裁定取引」は、あくまでダンジョン内でしか発動しないからな。

 一歩一歩の幅を広げて結界展開回数を節約しても、家からダンジョンの距離だとMPを1000以上消費するので……「特殊攻略家」の称号を得てMP最大値が上がった今の俺でも、残りMPが100近くになってしまうのである。


 最大MPの1割を切るとはいえ、まあMPが100も残っているとヘトヘトになりはしないが……それでも、若干の倦怠感は残る感じだった。

 それが、ダンジョンに入ったことで、完全に解消されたのだ。


 実際にダンジョンに着いたことで気分が上がったのも相まって、今の気分は最高だ。


「階層完全探知」


 俺は階層のマップを開くと、全速力で11階層を目指した。



 ◇



 そして……11階層にて。


「あんまり手応えないなあ……」


 魔物を1体倒したところで、俺はそんな感想を抱き……更に奥の階層に進むことに決めた。


 11階層の魔物は、10階層以前の魔物に比べれば敏捷性が上がっているはずだが……「時止めの神速靴」の影響か、感覚としては6階層の天使モスエルの1割くらいの速度で動いているように見える。

 それゆえに、ガトリングナックルで放つ真・マナボールを全弾命中させるのは容易なことだった。

 そして真・マナボールが全弾命中する場合、ガトリングナックルで最低連射時間の1秒間攻撃し続けると……11階層の魔物が相手だと、完全にオーバーキルになってしまうのだ。


 一度連射開始したら最低でも40発撃ってしまう以上は、せめて倒すのに40発以上必要な魔物と戦わないと、なんか損した気分になる。

 そう思った俺は、適切な強さの魔物に出会うまで、階層を降りることにしたのである。


 12階層、13階層……俺は1階層降りるたびに、魔物を試しに1体倒し、強さを測ってみた。

 しかしこのくらいだとまだまだ、1秒の連射でオーバーキルできてしまう。


 14階層に降りると、そろそろ1秒ちょいかかるようになってきたが……それでもまだ1.25秒ほどで倒せてしまうので、もう1〜2階層は降りてみようと思った。

 しかし15階層の魔物は、無属性攻撃無効を持っていたため「カシャァァン」という音と共に速攻で溶けてしまった。


 そんなこんなで、俺は16階層を、今日のメインの狩場とすることにした。

 ここの魔物相手だと、2秒ちょい連射しないと倒せないので……まあ相手としては、十分だろう。


 魔物を1体見つけては、ガトリングナックルで連射して魔物を倒し、魔石を拾う。

 この1サイクルに要する時間は、だいたい10秒ってところだ。


 俺はそれをひたすら繰り返し……ときどきレベルアップの脳内音声が聞こえる中、魔物の殲滅に没頭した。


 そして……「一旦ステータスを確認してみるか」と思った頃には、16階層での戦闘開始から30分が経過していた。

 結局、終盤はこの階層の魔物も1秒以内で倒せるようになってしまったし……それなりにレベルは上がっていることだろう。


「ステータスオープン」


 ─────────────────────────────────

 古谷浩二

 Lv.304

 HP 24320/24320

 MP ∞/4000

 EXP 59110/60800


 ●スキル

<アクティブ>

 ・真・マナボール

 ・階層完全探知

 ・エクストラハイヒールV5

 ・シールドV4

<パッシブ>

 ・ダンジョン内魔素裁定取引

 ・生き残り


 ●装備

 ・革鎧

 ・ガトリングナックル

 ・時止めの神速靴

 ・経験値豊穣の指輪(特上)


 ●称号

 ・無属性を極めし者

 ・理不尽を打ち破りし者

 ・特殊攻略家

 ─────────────────────────────────


 すると……何もかもの桁が変わっていた。


 何だよ、レベル304って。

 やたらレベルアップの音声が聞こえるなーとは思ったけど……9倍近くになってるって、ちょっと上がり過ぎじゃないか?

 HPは10倍以上になってるし……MPだって、3倍以上に膨れ上がってるぞ。

 やっぱり、経験値豊穣の指輪を手に入れてから本格的に攻略することにしたの、正解だったな。


 しかしまあ……確かにこうなると、16階層の魔物が一秒以内に倒せてしまうのも当然か。


 なんかどえらいことになってしまった気がするけど……これでもまだ、来てから30分くらいしか経っていないんだよな。

 これだけで帰るってのもなんか物足りないし、もっと奥に行ってみるか。


 というわけで……俺は魔物の位置把握のために開きっぱなしにしていた階層完全探知でルートを確認すると、下の階に移動し始めた。



 ◇



 そして……次に俺が狩場に決めたのは、20階層だ。


 理由はもちろん、ガトリングナックルの連射で1秒以上敵が耐えるからというのもあるが……それ以外にもう一つ、ここの魔物には面白い特徴がある。

 20階層の魔物は……目からビームを連射してくる、蜂型の魔物なのだ。


 このビームは、実にちょうどいい貫通力を持っていて……シールドV4の20枚同時展開で、ギリギリ防ぎきれるくらいの威力を持っている。

 そして蜂によるビームの連射頻度は、1秒に約2回。

 つまり……この階層の魔物の攻撃を受け続けるのは、シールドをV5にするのにちょうど適しているというわけなのである。


 レベルアップも大事だが……スキルの進化も、それと同じくらい大事だからな。

 まあシールドは元が弱い魔法なので、進化させても大したことないかもしれないが……それでも今俺が持っている唯一の防御魔法であることに変わりはないので、育てておいて損はないだろう。


 などと考えつつ……俺は「階層完全探知」で二体以上の魔物を同時に相手にする状況にならないのを確認しながら、目の前の魔物相手にひたすら防御を続けることにした。


 そして、それを続けること約5分。

 ついに、お目当ての脳内音声が流れてきた。


<スキル:「シールドV4」は「シールドV5」に進化しました>


「よっしゃあ!」


 それを聞いた俺は……ステータスウィンドウを確認するために、とりあえず目の前の蜂の魔物を真・マナボールの連射で討伐した。


 そして魔石を拾うと、俺はステータスオープンを唱えようとする。



 だが……その時、俺は更に予想だにしていなかった脳内音声まで聞くこととなった。


<スキル:「シールドV5」は、スキル「パーフェクトアイギス」に消費MP固定進化しました>



 ……ん、どういうこと?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る