第221話 願望 5
「人の世に、未練はありません。」
「
深々と頭をさげる二人の強い決意に、白妙は苦く微笑み、幸せな光をひっそりと宿した温かい瞳で二人を見つめた。
「顔をあげてくれ。・・・一つだけ、私きいて欲しい願いがある。・・・・・・もしお前たちが我らと共に生きることを望んでくれるのならば・・・私のことは白妙と、そう呼んでくれるだろうか。」
驚いて目を丸くした二人に、白妙は今度こそ心からの笑みを見せる。
「・・・友として、共に生きて欲しいのだ。」
翡翠と久遠の心の内には、白妙と海神に対する信仰にも近い気持ちが湧き上がりつつあった。
その垣根を、白妙は一蹴したのだ。
このうえなく幸せな笑みを見せてほほ笑む
・・・・・・後日、正式に
・・・・・・瞬く間に4年の時が流れた。
睦まじく、互いを励まし合いながら辛い鍛錬を乗り超えていく二人が18の歳を間近にした時。
「お前たちに話がある。」
ぴりりと張り詰めた二人の空気に、
「
「うむ。
「
白妙の言葉に、海神は声を荒げ小さく頭を横に振っている。
久遠と白妙がいぶかしく思いながら白妙に視線を戻すと、白妙は目を細め海神を横目で軽くにらんだ後、にやりと意地悪く微笑んだ。
「わかった。では、二人で分け公平に話すことにする。大切な話というのは二つ。ひとつは・・・お前たちの
「
「ああ。・・・現段階では、
海神は小さくため息をつくと、あきらめて口を開いた。
「人であればお前たちは年ごろ。・・・そろそろ、祝言を挙げてはどうだ。
「・・・・・・祝言。」
「久遠は問題ない。だが子を望むのならば、翡翠は時を止めたままいてはまずい。・・・子を宿すためのコトに及ぶに、問題はないが・・・。」
このような繊細な話を、男である自分がするべきではなかったのだ。
「子を宿すための・・・コト?」
顔に熱をあげる翡翠の、うわ言のようなつぶやきを耳に入れながら、海神は口ごもり、心の中で白妙に恨み言を唱えていた。
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