第22話 ことばのアクセサリー

「ことばはお金のかからないアクセサリー」


いつの日か読んだ、忘れられない文章のひとつ。


「ことば」って不思議で、同じことを話すにも選ぶ「ことば」ひとつでその人の人柄が感じられる。

ことばのセンス、ことばのボキャブラリーとでも言おうか。



私は、話し言葉では使われない書き言葉ならではの「ことば」が好き。


例えば「好きです」じゃなく「好いている」とか。

「愛でる」「紡ぐ」とか。



米津玄師さんの歌詞に出てくる

「袖丈が覚束ない夏の終わり」


優里さんの歌詞の

「軋んだ身体が叫ぶ声に耳も傾けずににべもなし」


最初に読んだときにずきゅんときた。

このことば選びが素敵だ。



私もことばのアクセサリーが素敵な人になりたいといつも思う。


ことばのアクセサリーを磨くには

たくさんの文章に出会うこと、たくさんのことばに出会うこと。



大学のころ、とても尊敬する教授にお酒を飲みに連れて行ってもらったことがある。

その教授はアメリカの大学でも教えていたという日本語教育の先端を行く人だ。


その教授がふと私に「日本語のすごいところは何だと思う?」と聞いた。

私はすぐに答えられなかった。


お酒がまわっている教授はとても楽しそうに語ってくれた。

「日本語の色って何色あると思う?」


「赤は赤でも、朱色、茜色、紅葉色、海老色、梅重、唐紅、真紅、緋、もうすんごい数があるんだよ。」

「日本語ってすごいと思わない?」



よく考えてみるとすごい!


ちょっとしたこの違いをことばで区別している。

日本語のすごいところ。確かにそうだ。


教授の話は何年経っても私の頭に残っている。



些細な感情の違いもことばで表そうとする。

「寂しい」「淋しい」使う時ちょっとしたニュアンスが違うと思う。



このちょっとしたニュアンスをことばで表そうとする人かどうか、そこにことば選びのセンスがでる。


ことばに対してアンテナをはって生きていきたい。



「ことばのセンスがあるね」

そう言われる日が来ることを願う。



終。




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